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第37話 親バートンの隠し事 イノベーションの行方 Aパート

 児玉の廃工場で、ガールズルールのリーダー、プリジェクションインフルエンサーに敗北したわたし達。

 それも衝撃だったんだけど、そこで出会った、もうひとりの親バートン、ダーク親バートンのもたらした情報の衝撃は格別だった。


「あんたの目的は人間を支配する事なの?」


 親バートンに詰め寄るもも。


 でも、直後に子バートンが現れる。

 わたしのお父さんなんだけどね。

 職場にスタンバってる時は電話で話すより早いみたい。


「みんな、大丈夫かい?」


「お父さん、ごめん。負けちゃった」


「分かってる。いいんだ。

 それよりケガを負っていないか心配だ。

 病院の予約を入れたから診察を受けるんだ」


 わたし達は本庄総合病院へ。


 プリジェクションインフルエンサーの攻撃にぶっ飛ばされて、壁や天井に叩き付けられたわたし達。

 でも、変身中はダメージも抑えられるみたい。

 特に治療してもらうほどの事はなかった。


 その日は家に帰ったよ。


 次の日、本庄コミュニティセンターの一室に集まったわたしとももといろちゃん。


 そして、子バートン(お父さん)、ミムベェ、はにぷー、こむぎっちゃん、そして親バートンのゆるキャラ達。


 みんなで親バートンの話を聞く事になった。


「では確認させて欲しい」


 子バートンから聞こえるお父さんの声。


「親バートン。

 君の目的はEPMとAIを使って人間を支配する事なのか?」


「わたしの作られた目的はそうだ」


 親バートンは悪びれるでもなく、淡々と言った。

 わたし達からため息が漏れる。


「でも僕は陽一からそんな計画は聞いていない」


「彼はAIに反対する勢力から命を狙われていた。

 のみならず知識を深める事もなしに漠然とイノベーションを認めない人々に絶望していた」


 そんなに二択博士は追い込まれていたんだ。


「十数年に一度は大地震の来る国にAIの発展は急務と考えていた」


 震災から九年目。

 焦っていたって事なのかな。


「災害は地震だけとは限らない、という言い方をしてもいい。

 十数年後とは限らない」


「それで人間を支配させてでもイノベーションを進めようって?」


 これはもも。


「あんたはずっと人間を支配する機会を狙っていたの?」


「いや、本来は君達に初めて接触した時。

『サイスフィア・リベレーション・ストリーム』を使用した時に操る予定だった」


 セゾン姉妹を救出した時だ。

 わたし達を一番に操る予定だったのはちょっとびっくり。


「よくぬけぬけと言えるわね」


 ももは怒り心頭だ。


「わたしは君達があの技を成功させると思っていなかった。

 あれはエモーションを同期させなければならない困難な技だ」


 あの技を初めて使った時は確かにドキドキだった。

 タイミングが合わなかったら、姉妹の精神と身体にダメージがあるって言われて必死だった。


「しかし、君達は成功した。

 わたしは操るチャンスを逸した。

 同時に人間を操らなければならないかについて、疑問を抱いた。

 わたしは君達のエモーションに手を加えるべきではないのではないかと考えるようになった」


「陽一からはその事に感してリアクションはなかったかい?」


「わたしは二択陽一に連絡を取る事はできない。

 しかし、彼がわたしのログを閲覧した痕跡はある。

 そして、予定通りに事が進んでいない事に疑問を持っていたようだ」


 親バートンは本当に人間を支配するために作られていた。

 でも、そうしなかった訳でもあるみたい。


「だがあおい君がAIに魂を与えた事は彼にとっても衝撃だった。

 彼自身も君達のエモーションを歪めるべきではないと判断したようだ」


「じゃあ今はどう思ってるんだい?」


「二択陽一は判断を保留しているようだ」


「あんたの話でしょ。

 あんたはどう思ってんの?」


 ももが話に入ってきた。


「わたしは人とテクノロジーは共存できるのではないか、と考えている」


 ももの方を向いた親バートン。


「テクノロジーに全て委ねる事も、全て否定する事も、間違っていると思っている」


「わたしもそう思うな」


 わたしは言った。


「人間が操られるなんて嫌だけど。

 でもあかねにたくさんの事覚えさせたいよ」


 わたしはあかねを抱きしめた。


「実験都市計画を中止してあかねとお別れなんて絶対に嫌!」


「あおい……」


 あかねの頭のハードディスクがキューンと鳴った。


「わたしだってあかねと別れたい訳じゃない。

 それにEPMはわたしのアイドル活動と切り離せないし」


 EPMを使ったライブがももの所属するSAH40の売りだ。

 それにももには未知の職業、EPMファッションデザイナーの素質があるという。


「ただ、人間を支配する事に利用されるのは嫌なだけ」


「今のわたしにその意図はない。

 だが、目的を隠していた事は事実だ。

 信頼してもらえないならわたしはここを去る」


「正直隠し事には怒ってる。

 でもあんたはあの日、あおいを気にかけて欲しいと言った」


 わたしは知らなかったけど、アンビバレントゴッドGを倒した日の事みたい。


「そしてその判断は的中した」


 恥ずかしながら、てきめんに的中したと思います。


「そういう気遣いには感謝してるし、頼りにしてる」


「そうか……」


「『モード:スタイリッシュ』もあんたとあかねのおかげだし。

 あんたが人間との共存を目指すなら、わたしは協力する」


 支配するとか、操るとかじゃなく、人間とテクノロジーが共存する世界を作る。

 それが本当のイノベーションだよね。


 手痛い敗北を喫してテンションだだ下がりだけど、気を取り直してみんなで頑張ろう!

 ここからわたし達の快進撃が……!


「エモバグが出たベェ!」

「エモバグが出たぷー!」

「エモバグが出たっち!」


 ゆるキャラ達が一斉に叫ぶ。


 いいところだったのにー!


<つづく>

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