第33話 梅桃さくら大ピンチ! あなたはアイドルを辞めるべきです Bパート
『多くの人々が不快に思ってる表現は中止すべきだー』
『表現の自由は公共の福祉に反しない限り、制限してはならないー!』
本庄の、はにぷープラザに現れた赤と青の社会問題のエモバグ。
一見正反対の主張のようだけど、
「あかね、行ける?」
「行けます」
どっちもわたしとあかねがキレキレの反論でやっつけちゃうよ!
「キュレーティン!」
わたし達は叫んだ。
EPMの光に照らされるわたしとあかね。
ベストの制服がフリルの付いたドレスに。
わたしは青で、あかねは赤。
胸元のリボンの中央には大きな宝石型のブローチ。
わたしの髪には羽飾り。
あかねはツインテールが大きくなり、赤紫に変わる。
さながらしだれ桜。
「はじけるキュレーター、プリジェクションソーダ!」
「…………はじけるって何ですか?」
そんなに冷静に言われると恥ずかしい。
「決めぜりふだよ」
「決めぜりふ……。何の意味があるんですか?」
うう…、わたしに言われても。
今度、いろちゃんにあかねの決めぜりふも考えてもらおう。
「ぶっちゃけた話、ホントに赤いのいるじゃん」
「ここだけの話、名前なんだっけ?プリジェクション蹴り……何?」
現れる白い礼服のシンクロニシティ姉妹。
この二人が今回のエモバグ達を創ったのだろう。
と思っていたら、
「満開のキュレーター、プリジェクションケラサス! だよ!」
颯爽と現れたペアーとサクラ。
ペアーの堂々たる名乗り。
ももを迎えに行くと言ったいろちゃんだったが、すでに決めぜりふを考えてくれていたらしい。
さすが特撮大好きのいろちゃん。
「あ、わたし達はサクラとペアーだからね」
と、サクラ。
うーん、なんだか元気ないみたいに見えちゃう。
あんな話聞いちゃった後だしね。
「サクラ、ペアー、あの二人をお願い」
「分かったわ」
「オッケー!」
わたしとあかねはエモバグの相手だ。
『多くの人々が不快に思ってる表現は中止すべきだー』
はにぷープラザに接近しようとする青バグ。
「『私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る』、じゃなかったの!?」
青バグの背中に膝蹴り。
「『あいつはけなした! ぼくはおこった! それでこの一件はおしまい!』じゃなかったの!?」
そして、重心の下がった相手に後ろ足払い。
エモバグは後ろに倒れる。
『表現の自由は公共の福祉に反しない限り、制限してはならないー!』
はにぷープラザにパンチを繰り出す赤バグ。
あかねは赤バグの真横に回り込み、
「意図がなくても与える表現の影響には敏感でなくてはなりません」
脇に腕を差し入れ弾き飛ばす十字手で赤バグを吹っ飛ばす。
わたし達は建物が攻撃されるのを何とか阻止した。
が、エモバグ達はよろけるがすぐに体勢を立て直す。
そして、今度はわたし達に殴りかかってくる。
『芸術の形をなしてないヘイトは表現じゃないー!』
青バグのパンチをわたしは受け止めて弾き返した。
そして、よろめいたエモバグに、
「意見や批判はいくらでも言っていいけど!
中止に追い込むのは間違いなんだからー!」
わたしの繰り出した上方への回し蹴り、ホースキックが青バグのこめかみに命中。
わたしのブローチが光輝き、エモーショナルパワーが貯まる。
『人を傷つける表現があったからと言って侮辱する意図があったとは限らないー!』
赤バグもケラサスめがけてパンチ。
しかし、ケラサスは赤バグの腕をつかんで、反対の手で叩き落とす雲手で捌く。
「その露悪主義と無神経さは、あなた達が本来打倒しようとしているものではないのですか?」
そして、飛び上がって赤バグのあごに掌底を叩き込む竜形拳。
「あなた達の主張は本末転倒です!」
「エモーショナルパワーが貯まったトン」
「貯まったベェ!」
いつの間にかいた親バートンとミムベェ。
「ソーダスプラッシュ!」
わたしは両腕をエモバグに向かって突き出し、両手を広げた。
わたしの掛け声と共に、光は炭酸のような泡の水流に変わる。
エモーショナルな炭酸が青バグに向かって行く!
「ケラサスプロジェクト!」
ケラサスのツインテールが四本に分かれ、赤バグをとらえる。
テールはエモバグの両腕、両足を捕まえるとケラサスの方へ戻って行く。
ケラサスは左手でエモバグの頭をキャッチした。
そして、白く輝く右手で掌底を放つ!
エモバグ達は雲散霧消して、後には赤と青のサイスフィアが。
「これはわたしが預かろう」
親バートンは二つのサイスフィアを抱えた。
「他にも何個か持ってるよー」
「それもわたしが引き取る」
私たちはブローチにしまっていたサイスフィアを親バートンに渡す。
これでやっとスッキリしたね。
「ぶっちゃけた話、帰るじゃん」
「ここだけの話、帰るじゃん」
逃げていくシンクロニシティ姉妹。
サクラとペアーも上手く、食い止めていていてくれたみたい。
変身を解いたわたし達。
ももは荷物があるし、一旦ライブハウスかな。
はにぷープラザとライブハウス、レッドサインは近いので、歩いて帰ろうとしていたわたし達。
「皆さん。ライブの映像の分析は完了しました」
あかねに呼び止められる。
「完了って、もしかして何が起こってるか分かったの?」
ライブが以前より盛り上がっていない事の解析。
ももの前なのでわたしは言葉を選んだ。
わたしはね。なのに、
「はい。
もも。あなたはアイドルをやめるべきです」
え……?
耳を疑うその声は間違いなく、あかねだ。
「!……」
それを聞いたももは、走り出してどこかへ行ってしまう。
「待って、ももちゃん!」
追いかけるいろちゃん。
「あかね」
これは飛びかかるとか、そういう状況ではない。
わたしはあかねの肩に両手を置いた。
「どうしてあんな事を言うの?」
声を荒げる気力もなかったが、わたしの声は震えていた。
「あなたは人間を理解したいんじゃなかったの?」
あかねの瞳をじっと見つめる。それで気持ちが伝わるのか分からないけど。
「今日はすごく……がっかりしたよ」




