第31話 AI少女、さらに勉強中! あかね、禅を組む! Bパート
「キュレーティン!」
わたしといろちゃんは変身した。
EPMの光に照らされたわたしのベストと、いろちゃんのセーラー服が変化していく。
わたしの服はシアンに、いろちゃんは黄色に変わる。
胸元のリボンの中央には大きな宝石型のブローチが。
服の袖とスカートの裾には白いフリルが付く。
髪はなんとなくフワッとしたくらいだが、羽飾りのようなカチューシャが装着されている。
「はじけるキュレーター、プリジェクションソーダ!」
「実りのキュレーター、プリジェクションペアー!」
河原の土手の上にエモバグはいた。
そして、エモバグの肩には一人の少女が。
目を覆う仮面に、貴族のような礼服。
ガールズルールのレボリューショナーだ。
しかし、髪は灰色のロングの巻き毛。
礼服の色は黄色。
背丈は、かなり小柄だ。
ノート型PCを抱えている。
「また新しいレボリューショナーなの?」
これで四人目だ。
「わたしはバレッタ」
少女はエモバグから降りた。
「さあ、行くのよ、エモバグ」
こちらに向かって来るエモバグ。
バレッタと名乗った少女は土手に残る。
この前のジコチューと同じで本人はバトルしないタイプなのかな。
「黄バグなら任せて!」
前に出るペアー。
エモバグとは色を合わせてバトルするのが鉄則だ。
『WEB小説は時代考証がめちゃくちゃだー!蒸気機関は中世じゃなくて近代だー!』
突進してくるエモバグのパンチをかわし、ふところに飛び込むペアー。そして、
「ゲームの世界なら蒸気機関どころかロボットやビームだって出て来るけど文句を言わないじゃない!」
エモバグの首にラリアット。
のけぞるエモバグ。
「キレッキレっち!」
叫ぶこむぎっちゃん。
キレキレの反論でキレキレ攻撃は成立する。
『WEB小説の世界はなんちゃってヨーロッパのナーㇿッパだー!』
張り合ってきたのか、エモバグの太い腕のラリアット。
しかし、逃げずに向かっていくペアー。
小さな体格を生かし、後ろに回り込む。
そこからエモバグの腕にしがみつき逆上がりの要領で回転。
「ゲーム的な世界だってだけで、別にヨーロッパに見せるつもりはないでしょ!」
デスティーノでエモバグを転倒させる!
さらに電信柱を駆け上がり…、
『そもそも輪廻転生ってのがアジア的なんだからー!』
空中で回転しながら落下するラウンディングボディプレスがエモバグに炸裂!
そう言えば生まれ変わるって別にヨーロッパっぽくないよね。
「エモーショナルパワーが貯まったっち!」
キレキレ攻撃によってエモーショナルパワーは貯まるのだ。
ペアーの胸のブローチが光輝く。
「オッケー!」
こむぎっちゃんの声を受けてしゃがむペアー。
「あなたを倒せるのはただ一人……」
ペアーの謎の決め台詞。
多分、趣味の特撮のなんかなんだろう。
ブローチの輝きがペアーの左足に移動する。
そのまま、近づいて来るエモバグに向かってジャンプ。
「わたしよっ!」
光る左足でジャンプキック!
「ペアークラッシャー!」
キックを受けたエモバグは消滅していく。
ペアーは背後に着地。
エモバグの後には黄色く輝く光の球、サイスフィアが。
「サイスフィア、ゲットっち!」
こむぎっちゃんがサイスフィアを手に取る。
「ペアー、持ってるっち」
「オッケー!」
ペアーはサイスフィアを胸のブローチに格納した。
「プリジェクションペアー、あなたの力、見せてもらったわ」
バレッタと名乗ったレボリューショナーが話しかけてきた。
「さすがにこの程度は余裕みたいね」
灰色の巻き毛が風になびく。
ここでゴトゴト音がすると思ったら、あかねだった。
セーラー服姿のあかねが近づいてくる。
「エモーショナルバグの反応が消えたので来ました。
でもまだお取込み中でした?」
「どうかな。でもまだ下がってて」
わたしはあかねの前に立った。
レボリューショナーが襲いかかって来そうな感じではないけど、念のためね。
「あとこの本も読み終わりました」
あかねの手にはいろちゃんの持って来たライトノベルが。
あの名前の長い奴。
「もう読み終わったの?! すごい!」
ペアーのビックリする声。
実際、あかねの読書スピードは速い。
一瞬で画像を認識し、文字を解析する。
解析に時間を要する場面があっても、読書はその時間にも進む。
「かまフラ……」
その澄んだ声はレボリューショナー、バレッタからだ。
「遅くなってゴメン。二人とも」
と、ここでさらにプリジェクションサクラが現れる。
「もうやっつけちゃった!」
親指を立ててウィンクするペアー。
「引いた方がよさそうね」
バレッタはジャンプを繰り返し、去っていく。
「また新しい敵?」
「そうなんだよー、もももも」
「ももももって言うな!」
変身を解いて、均鋼寺に戻るわたし達。
「今日はとても勉強になりました」
お寺の前で待っていた和尚さんにあかねは言った。
「いや、君の理解力には驚いたよ」
と和尚さん。
「人間よりも先に悟りの境地に達するのかも知れない」
そう言えば今日のあかねは意思の疎通に関するトラブルを起こしていない。
わたしも飛びかかっていない。
あかねの成長が結果となって表れてくれて嬉しいな。
「そう言えばあかねちゃん、『かまフラ』……、この小説どうだった?面白かった?」
いろちゃんがライトノベルを片手にあかねに問いかける。
「そうですね」
あかねの頭のハードディスクが「シュイーン」と鳴った。
これは思い出している音だ。
「時代考証がめちゃくちゃでよく分かりませんでした。蒸気機関は中世じゃなくて近代です」
固まるいろちゃん。
エモバグだったらラリアットを繰り出すところだ。
「あーかーねー!」
わたしが代わりに飛びかかった。




