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第30話 AI少女、勉強中! あかね、教会に行く! Bパート

「何でそういう事を言うの!」


 あかねにしがみつくわたし。


「離れて下さい。重いです」


 信じる信じないは自由だけど、ジョークなんて言い方はいくら何でもひどい。

 丸っきり煽ってるような、喧嘩を売ってるような。


 しかも、この子の場合は本気でジョークを言ってると思っているのだ。


「これはほら、説の話」


 わたしはなんとかあかねのフォローを試みた。


「そういう説もあるよ、って話です。

 そう、説!説なんです。

 あかねはいろんな説を知ってるから」


 バッチリフォローしてクリスさんとあかねの関係を取り持った、……とは言い難かった。


 怪訝な表情のクリスさん。


 AIと宗教のファーストコンタクトは失敗だったのかも。

 ちょっと責任感じちゃう。


 そう思っていたら何やら辺りが騒がしくなって来た。


「大変です、シスター!」


 神父様だった。町内の会合に出席してたらしい。


「この近くの商店街に怪物が!」


 埼北市で怪物と言ったら多分、エモバグだろう。


「神父様、色は分かりますか?」


 尋ねるわたし。


「青かったですね」


「わたし、行きます!」


 青バグ退治はわたしの役目。

 スマホを握りしめ、立ち上がるわたし。


「シスター!あかねをお願いします」


「やっぱりあおいちゃんがあの……?」


 シスターと神父様もわたしがプリジェクションキュレーターなのを知ってるようだ。


「はい、絶対みんなを守ります!」


 教会を後にするわたし。

 一本裏道を抜ければそこは本庄市商店街。


 ここでももからメール。

 どうやら家にいるみたい。

 ライブハウスがあるのもこの商店街だから、アイドル活動してたらすぐに合流できたんだけどね。


「キュレーティン!」


 スマホアプリを起動するわたし。


 商店街のEPMの光に照らされたわたしのブレザーが変化していく。

 紺色のブレザーが鮮やかなシアンに変わる。

 Yシャツも同じ色になり、ブレザーと区別が付かなくなる。

 胸元のリボンの中央には大きな宝石型のブローチが。

 服の袖とスカートの裾には白いフリルが付く。

 髪はなんとなくフワッとしたくらいだが、羽飾りのようなカチューシャが装着されている。


「はじけるキュレーター! プリジェクションソーダ!」


 サクッとエモバグをやっつけちゃうよー!


『人口知能は神の作ったものではないから、神への冒涜だー!』


 青いエモバグが、立ち並ぶお店にパンチやキックをしながら暴れている。


 狭い道路なので車が立ち往生している。

 エモバグはそれも踏み潰す。

 中にいた人は脱出しているみたいだけど。


 そして、よく見るとエモバグと並行して、商店街の屋根の上を歩く人影が。


 目元を覆う仮面と、貴族風のキラキラした紺色の礼服の少女。

 この前、本庄西中学校に現れたシンクロにシティ姉妹と同じだ。


 でも一人だけだし、背も小さい。

 左右に三つ編みの黒髪を垂らしているのが分かる。


「あなたがこのエモバグを創ったの?」


「……………………」


 話しかけても反応がない。

 よく見てみるとスマホをいじっているようだ。


「ちょっとあなた、聞いてるの!?」


 わたしが大声を出すと、やっとこっちを向いた。


「ん? あ、いたの?」


 それだけ言うとまたスマホをいじり始める。


「あなたもガールズルールのレボリューショナーなの?」


 服装的にはどう考えてもそうなんだけど。


「うん」


 今度はスマホから目を離そうとすらしない。

 テンション低いなあ。


「ちゃんとこっちを見て話しなさい!」


「うーん、ちょい待って」


 まだ熱心にスマホをいじっている。


「エモバグが暴れてるんだから待てる訳ないでしょ!」


「じゃあそっちで勝手にやっつけといてよ」


「え……?」


 今まで見た事のないタイプだ。


「データの観測さえできれば、あたしは構わないって言うか」


 やっぱりスマホをいじってる。


「スタミナ残ってるからクエスト回すじゃん。忙しいんだよね」


 忙しい?スタミナ?クエスト?


「デスティニー・アーカーシャ・オーダー、知ってる?」


 知らない。何語?


「流行りのスマホゲーじゃん。知らねーの?」


 わたしはゲームはあまりやらない。

 いろちゃんはゲーム好きだけど、スマホゲームの類はやらないって言ってたかな。


 とにかくわたしはタイトルを言われても分からない。


「あたしは手が離せねーからエモバグは好きにやっつけてよ」


 そう言われたならそうするけどね!

 なんか調子狂っちゃう。


『AIは神の作ったものではないから、聖書を冒涜しているー!』


 電柱や街頭を巻き込んで暴れ回るエモバグ。


「AIだって宗教書や哲学書を読んでその価値を理解できるわ!」


 こちらに注意を引かせるため、フェイントと回し蹴りのコンビネーションの二段蹴り!


 今まさにあかねが頑張ってるのに!

 あかねだって、聖書の哲学的な意義を理解して教会に来た。


「冒涜になんてならないよ!」


 よろめいたエモバグは、わたしが道路の中央に立つと、釣られて歩道から車道へ。

 これは狙い通り。

 街灯や電柱から引き離す事ができた。


『生命のあり方は神の領域!

 踏み込むことは倫理的に許されないー!』


 エモバグが拳を振り下ろして来るが、


「人間の手が入らないと守れない自然もある。

 正しい知識と理解が必要なんだよ!

 あり方の問題より、命の守り方が大事なんだからー!」


 わたしは素早く間合いを詰めて、エモバグのお腹にコークスクリューパンチ!


 吹っ飛んだエモバグが立ち上がると、わたしは背を向けていた。


『AIによってこの全人類の半分が不要になると言う事は、全人類の半分が死ぬ、という聖書の黙示録の内容と一致するー!』


 チャンスとばかりに突進してくるが。

 しかし、これはわたしの次の攻撃への予備動作。


「黙示録にはイエス様が再臨するって書いてあるんでしょ? 

 悪い事が起こるなんて書いてない。

 そんなのトンデモ解釈だよ!」


 背中を向けた状態から飛び上がって回転、バックスピンキック!


「あなた達の方が聖書を冒涜してるんだからー!」


 エモバグは吹っ飛んでいく。


「エモーショナルパワーが貯まったベェ!」


 ミムベェが叫ぶ。


 わたしの胸のブローチが輝く。

 わたしは両手を前に突き出した。


「ソーダスプラッシュ!」


 エモーショナルな炭酸を浴びたエモバグは消えていく。


「おー、かっこいいじゃん」


 拍手の音に見上げてみると、レボリューショナーの少女はスマホをしまっていた。


「あんたのエモーション、クオリティ高いじゃん」


 どうやら途中からわたしのバトルをちゃんと見てたようだ。


「スタミナは使い果たしたしさ」


 そう言うと消灯したスマホをこっちに見せる。

 スマホゲームは終わりにしたみたい。


「あたしはあんたのソーダスプラッシュが一番好きだなあ」


 目をキラキラさせてる。

 こっちを見ようともしなかったのが嘘みたい。


「でもそれはSR(えすあーる)っしょ。

 SSR(えすえすあーる)も見たいなあ。

 ブーストソーダスプラッシュだっけ」


 何言ってるのか分からないけど、わたしの技には興味があるのだろうか?


「エモバグはやっつけた?」

「大丈夫?ソーダちゃん」


 ここでサクラとペアーも到着。


「おっと、こりゃあ多勢に無勢。

 そろそろ帰るか、観測もクエストもやったし」


 少女はスマホを上着のポケットにしまうと、両手もポケットに入れて立ち去ろうとした。


「あ、忘れてた。あたしの名前はジコチュー。よろしくー」


 少女はジャンプを繰り返しながらながら去って行った。


「新しいレボリューショナーが出たの?」


「そうみたい」


 シンクロニシティ姉妹に続いて現れた新たなガールズルール。


 何ともつかみ所のない、その名の通り、ジコチューにも程がある少女だった。


 戦いが終わり、本庄キャサリック教会に戻るわたし。

 置いてきたあかねは大丈夫かなあ?


 クリスさんと論争になってなければいいけど。


 でもわたしの心配をよそに、あかねは近所の子供達と遊んでいた。


「今日はあかねがごめんなさい。

 あんな事言うと思ってなかったんです」


 わたしはクリスさんに謝ったが、


「あかねちゃんの知識量はすごいのね。学者みたいじゃない」


 と何やら関心された。


「でも失礼だったと思います」


「哲学者や他の宗教の人と会話する事あるし、あんなの全然気にしてないよ」


 結構楽しそうなクリスさん。


「AIから言われたのはちょっと面食らったけど。

 あかねちゃんはすごく勉強したんだと思う」


 クリスさんが心の広い人でよかった。

 この件でAI嫌いにでもなられたらどうしようかと思った。


「あおい、帰って来ましたか」


 あかねが近づいてきた。


「この子達からすごい事を勉強しました。

 ちょうどあなたの話をしてました」


 わたし……?何の事だろう?


「あなたの名前はだじゃれだったんですね!」


 !……………


(あおい)とあおいがかかっててユーモラスですね。

 子供達にも評判がよかったです」


「あーかーねー!」


 わたしはあかねに飛びかかった。


「は、は、は、は、は」

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