第27話 それでもわたしは立ち上がる イノベーションは終わらない! A、Bパート
わたしの名前は梅桃もも。
目の前で、エモバグに敢然と立ち向かうプリジェクションソーダ。
「大丈夫そうね」
あの取り乱した映像を見て、戦う事なんてできる訳ないと思っていたけど、あおいは確かにここにいる。
わたしはお母さんと茜が心配で車に戻る事にした。
「あれがプリジェクションキュレーターですか?」
「そうよ」
「じゃあ、あれがあのキモい人なんですか?」
茜がつぶやく。
「わたくしは不思議に思います。
あのわがままで自分勝手なキモい人が街を守るために戦っているなんて」
「茜」
わたしは大きな瞳をしっかり見つめた。
これだけは言わないと。
「確かにあなたを亡くなった母親の代わりにしようなんて間違った考えだわ」
仮に可能であっても、こんな事をしてはいけないとわたしは思う。
「でも、あいつはそれだけじゃない。
あいつは他人のために、誰かのために一生懸命になれる奴よ」
「誰かのために……」
「あなたもあの日、あおいの声を聞いたんでしょ」
「わたし達はみんな、地球の仲間……」
「あいつはね……」
なんだか涙が出て来る。
あおいはなんてたくさんのものを抱えて戦っていたんだろう。
「キモいけど、スゴい奴なんだから……!」
☆☆☆
わたしは葵上あおいこと、プリジェクションソーダ。
さて、2階建てのビバークモールの吹き抜け通路を練り歩くエモバグ。
ぶつかったり、踏んづけたりして店内を破壊していた。
しかし、わたしが名乗りを上げると殴りかかって来た。
『埼北市は化物が出現する欠陥都市ー!』
わたしはその太い腕のパンチを両手でキャッチ。そして、
「たしかに問題点はいろいろあるわ」
弾き飛ばす。そして、
「でも、問題を見つけて洗い出して、前に進む」
ひらりと宙に舞うと、エモバグの肩にかかと落とし。
「それが実験都市なんだよ!」
「キレッキレだベェ!」
ミムベェが叫んだ。
エモバグが肩を落とす。
キレキレ攻撃が成立したのだ。
そのまま、一階部分に降りたわたし。
『特区計画は汚ないカネの流れの温床ー!』
踏みつけてくるエモバグだが、今度もわたしは回避しない。
「そんな事ない!」
その足にパンチをくらわせ、弾き返す。
「埼北市はやっと自律型AI実験都市に移行しつつあるんだよ!」
『イノベーションなんかより、国民に金を配れー!』
さらに態勢を立て直し、つかみかかってくるエモバグ。
わたしは両腕の間をかいくぐり、
「実験都市は必ず大きな成果を上げてくれる!いずれ世界中にフィードバックされる!」
すかさずジャンプ。
「わたしは信じてる!」
エモバグの顔面に膝蹴りを叩き込む。
『埼玉なんかダサいたまだよな!』
片腕を振りかぶり、パンチするエモバグ。
しかし、そんなものよけるまでもない。
わたしは姿勢を低く構えると、バック転の要領で蹴り上げを繰り出す。
「埼玉はっ!」
サマーソルトキック!
「彩の国だって!」
サマーソルトキック!
「わたし言わなかったっけーっ!」
サマーソルトキィーック!!
連続キック攻撃に、仕掛けたはずのエモバグが大きく吹っ飛ばされる。
『エモーショナルパワーが貯まったベェ!』
ミムベェが叫ぶ。
ここで胸のブローチが光輝いた。
キレキレ攻撃によって、エモーショナルパワーが貯まったのだ。
エモーションの高まりを感じる。
絶望したからってわたしのエモーションは止まらない。
この街のイノベーションを守るわたしのエモーションは、誰にも止められない。
「イノベーションは終わったりしないんだからーっ!」
ブローチの輝きはエモーショナルなソーダになって、伸ばした手から噴き出していく!
「ソーダスプラッシュ!」
エモーショナルなソーダは激流となってエモバグの巨体に命中。
エモバグはかき消えていく。
後にはやはり青いサイスフィアが。
「でももうサイストレージはないベェ」
サイスフィアをデータ化するのがサイストレージだが、この前マジョリティの首領、日上博士に奪われてしまった。
「とりあえずブローチに入れておくね」
わたしの胸のブローチに格納する。
この前、サイスフィアを50個格納したし、入るはず。
さて、この後なんだけど、さっき屋上からももの姿を確認した。
エモバグを倒すために来ていたんだろう。
それは予想してたんだ。
でも、隣にロボットのあの子の姿まで見つけてしまった。
きまずいけど、行かなきゃだよね。
逃げられるかも知れないけど。
<つづく>




