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第23話 大大大決戦! 出現、アンビバレントゴッドG! Aパート

 神川の山中の洞窟にある、マジョリティのアジトに突入したわたし達。


 まずはディスコードに勝利。

 いろちゃんの双子の妹、きいちゃんを取り戻した。


 お父さんに連絡して先に進む。

 ゆるキャラ達が出現できたので、きいちゃんを見ていてもらう事にしたよ。


 しばらく通路を進むと、また開けた空間が。

 果たしてそこには、黒のレザーとメタルのアクセを身にまとった女性が。


 芽崎みどり。キュレーショナー、エキセントリックだ。


「ディスコードはやられちまったのかよ?」


 腕組みをして立ちはだかる芽崎みどり。


「コーデから開放したよ」

「妹は返してもらったんだから!」

 わたしといろちゃんが口々に言う。


「そうか、あいつがおちびちゃんの妹か……」


「次はあんたの番よ」

 ももが一歩前にでる。


「一応言っておくけど、あんたがマジョリティを抜けるなら、わたし達が戦う必要はない。

 エキセントリックのコーデは消滅させるけどね」


 戦わないで済めばそれに越した事はないよね。


「てめえ、SAH40のメンバーだってなあ?」


 しかし、芽崎みどりはサクラをにらむ。

 穏便に済みそうな感じではない。


 どこからか情報を得ていたようだ。

 いろちゃんはきいちゃんにプリジェクションキュレーターの事を話していた。

 ならば、ディスコードからと考えるのが妥当かも。


「いけすかねえアイドルの言う事なんか聞けねえよ」


 芽崎みどりはスマホを前に向けて、アプリをタッチして起動した。 


「キュレーション!」


 アプリは黒い円形に黄緑色のpsyの文字が。

 彼女は棘々しい黒いドレスに包まれていく。


 キュレーショナー、エキセントリックの登場だ。そして、


「NOと言いおうぜ、マジョリティー!」


 やはり、間髪入れずのエモバグ召還。

 EPMに照らされた床からピンクのエモバグが現れる。


 そして、エキセントリックがエモバグの中に入ると、エモバグの表面に変化が。

 キュレーショナーの刺々しい衣装のような棘が肩や頭に現れ、目つきも鋭くなる。


 トゲバグの完成。ディスコードの時と同じだ。


 そして、

「オラァ!」


 例のエモーショナルなエレキギターもエモバグサイズで出現。


 ギターを鳴らすエキセントリック。

 どういう仕組みて鳴っているのか分からないが、すごいエモーションだ。


「ここはぜってえ通さねえ!」


「うう…。このギター、苦手」

「やるき満々だよー。どうする?サクラちゃん」


「戦って倒すしかないわ」


 サクラは言う。


「でも相手は人間だよ」


 わたしは人間とケンカはしたくない。

 ペアーもディスコードとバトルはしたが、基本的には動きを止める事を目的にしていた。


「こいつは話して解る相手じゃない」


 サクラは本気だ。


「攻撃はわたしがやる」


 前に出るサクラ。


「てめえが相手か」


 トゲバグからエキセントリックの声がする。


「チャラチャラしたアイドルなんかやりやがって」


「わたしもロックは好きだけど、あんたにソウルなんか感じないわね」


「あんだと?!」


「かかって来なさい」


 にらみ合う二人。

 ピリピリした空気が伝わってくる。


「ウルァ!」

 ギターで殴りかかって来るトゲバグ。


「はっ!」

 回し蹴りでギターを弾き返すサクラ。


 勝負は互角。

 って言うか、大きなエモバグサイズのギターの攻撃と互角って。


「すごい!サクラ」


「ちいっ!今までと違うじゃねえか」


 エキセントリックも驚いているようだ。


「こっちからもいくわよ」

 蹴り足が着地するや力強く踏み込むサクラ。


「やぁっ!」


 サクラの飛び膝蹴りからの正拳突き。


「ちぃっ!」

 片膝をつくトゲバグ。


 あの強敵、エキセントリックがエモバグに入ってパワーアップしたと言うのにものともしない。

 押していると言ってもいいくらい。


「わたし達のエモーションは日々成長しているわ」


「なんだと?!」


 殴りかかって来るエキセントリック。しかし、


「ロックができなくなったくらいで腐ってるあんたとは違う」


 サクラはそれをかわして後ろ蹴り。


「てめえに何が分かる!」


 しかし、すぐにエキセントリックは体勢を立て直す。


「バンドが解散して、ライブハウスがアイドルなんかのものになっちまったから、あたいの居場所はなくなっちまったんだ!」


 大音量の激しいシャウト。


「リョウの奴が実験都市計画に、ロックのソウルを売っちまったからだ!」


 すごい声量に圧倒される。

 やっぱりSAHのオーナー、リョウさんが一目置くだけはある。


「あたいの夢を壊したのは実験都市だ!」


「甘ったれんじゃないわ!」


 サクラのシャウト。

 エキセントリックに勝るとも劣らない気迫だ。


「ロックをやりたい気持ちが本物ならば、メンバーがいなくたって、一人でだってやればいい。

 場所がないなら路上でだってやればいい」


 サクラののジャンプからの手刀打ち。


「てめえ……」


「ロックバンドの夢が叶わなくても、音楽に関わろうとするリョウさんは立派だわ。

 あんたがなじる筋合いなんかない!」


 そして、トゲバグの頭を狙った裏拳。

 トゲバグはよろける。


「立派だあ?あいつは楽に小銭を稼げるプロデューサーを始めただけだ!」


 つかみかかってくるトゲバグ。

 攻撃の隙だったゆえに捕まってしまう。


「握り潰してやる!」


「サクラ!」

 これはさすがにやばいと思って助けに入ろうとする。


 しかし、

「大丈夫よ」


 当のサクラは動じていない。


「わたしは大丈夫。こんな甘ったれに負けたりしない」


「なんだと……?!」


 トゲバグは力を込めるが、


「はあっ!」


 サクラの気合いの叫びと共にトゲバグの両腕は振りほどかれる。


 そして、前方に転がったかと思うと、


「リョウさんは手堅く、他の仕事を探す事だってできた!」


 胴回し回転蹴りをトゲバグのみぞおちに叩き込んだ!


 さらに、


「まだ若いあんたの才能を見込んでアイドルプロデューサーになったのよ!」


 上段への正拳突きが顔面に炸裂する。


「ア、アイドルなんかやらねえよ……。リョウにもそう言った……」


 またも片膝をつくトゲバグ。

 効いている。打撃の威力としてだけでなく、そう、キレキレ攻撃みたいに。


「ジェイドグリーン」


 サクラはポケットからスマホを取り出すと、トゲバグの方に向け、何かの曲をかけた。


「あんたが作詞した曲なんでしょ」


 わたしの位置からはっきり聞こえる訳じゃないけど、激しい感じで、おそらくロックミュージックだろう。


「リョウさんの次の新曲よ。もちろんあんたの許可を取ってからだけど」


「アイドルの曲になんか合わねえよ……」


「あんたがSAHをよく知らないだけよ。リョウさんの曲の歌詞は時に現代の社会風刺や批判を扱っていてる。

 70年代ロックのようだって言われているんだから」


 これは全曲の特徴と言う訳ではないだろう。

 でも、SAHのアルバムを聞いてて、メッセージ性の強い曲が何曲かあった記憶は確かにある。


「これは曲もかなりロックに寄せた意欲作なのよ」


「リョウがジェイドグリーンを……!」


「戻ってきなさい!あんたがまだ音楽を愛しているなら」


「…………………………」


 トゲバグは立ち上がらない。

 ただ、うなだれているようだった。


「ペアー、ソーダ。いくわよ。はにぷー、準備して」


「分かったぷー」


 はにぷーがサイストレージを持って現れる。


 三色のサイスフィアをそれぞれ受け取り、胸のブローチに収めるわたし達。


 そして、エキセントリックの前に横並びに立つ。


 トゲバグがこちらを向いた。

 動きは見せないが、話しかけてきた。


「でもよ……あたいにフリフリのドレスなんざ似合わねえ」


「それは着てもらうわ。似合うように着こなす事ね」


「へっ、厳しいなあ……」

 エキセントリックは狼狽のため息をもらした。

 でも、それは穏やかな声だったと思う。


「さあ、いくわよ」

「うん!」


 本日二度目、もう息を合わせるのもバッチリ。


「さいたま・リベレーション・ストリーム!」


 トゲバグとエキセントリックのコーデは消え去り、レザーとチェーン姿の黄緑色の髪の芽崎みどりの姿が現れる。


 うーん、確かにフリフリな姿は想像できない。


 とは言え、ついにエキセントリックに勝った。

 残るはゴッドG、ただ一人だ。

 と、思っていたが……


「な、何をするぷー」


 はにぷーの声に振り向いたわたし達。


 そこにいたのは倒れているはにぷーと、仙人のような姿。長い白いひげの老人。

 ゴッドGだった。


 はにぷーを杖で抑えつけ、そして反対の腕にはサイストレージを抱えている。


「やれやれ、何個か使われたか」


 ゴッドGはサイストレージを開け、中を確認していた。


「じゃが、フフフ……、54個ならちょうどよいわ」


 サイストレージはプロジェクションマッピングの映像データだ。


 プロジェクションマッピングから出現させ、サイスフィアを格納し、さらにそれをプロジェクションマッピングの中に格納できる。


 とても便利だが、プロジェクションマッピングのキャラクターのゆるキャラ達しか扱えない……。


 ……まさか、それがゴッドGの姿をしている理由?

 ゴッドGの姿ならサイストレージに干渉できるから?


「このアジトなら忌々しい親バートンも手出しできん」


 そして、この場所で戦ったのも計算づく。

 全てはわたし達の集めたサイスフィアを奪うためだった。


「はにぷーに何をするベェ!」

「それを返すっち!」


 ミムベェとこむぎっちゃんが向かっていくが、


「邪魔じゃ」


「うわー!」

「きゃー!」


 ゴッドGは杖から雷を出して二人を蹴散らす。


「全ては計画通り。ではさらばじゃ」


 ゴッドGは地面に吸い込まれていった。サイストレージを持って。


 ここではっとして、わたしは奥の扉を開けた。


「やっぱり!」


 そこはもぬけの空だった。

 パソコンや機材は動作していたが、人は誰もいない。


 せっかくキュレーショナーと決着を付けたのに、ゴッドGには逃げられてしまった。


 いや、始めからこのアジトにはいなかった。

 すっかり敵の手の内で踊らされていた。


 しかし、戦いはこれで終わりではなかった。

 長い一日はまだ始まったばかりだったのだ。


<つづく>

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