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第19話 いろちゃんの秘密?! あおいとももの追跡大作戦! Bパート

『BLってクッソ気持ち悪いんだけどー!』


 エモバグが店舗にパンチ。その衝撃でお客もお店の人も外へ出て来る。

 その中にはいろちゃんもいた。

「あれ二人とも早いね」

 わたし達に気付くいろちゃん。

 そして、

「あれは誰?」

 ついにいろちゃんとディスコードの初対面。


「な、なんでここに?!」

 意外にもそれはディスコードのセリフだった。

「今日は週刊詩の漫画を買ってまっすぐ家に帰るはず」

 どうやらいろちゃんを尾行するわたし達、を尾行するディスコードは、いろちゃんには気付いてなかったらしい。


「いろちゃんはアイオンで漫画雑誌を買った後、このブックネフでBLを見てたんだから!」

 わたしは堂々と言った。


「び、BL、って何?」

 どうやらディスコードはBLを知らないらしい。


「ボーイズラブの略だよ。知らないの?」


「ボーイズラブって何?」

「知らないの?男同士の恋愛の物語の事なんだから!」

 わたしもさっき知ったんだけど。


「どういう事!?多様性の時代ではあるけど……。それを何で女の子が買うの……?」

 あ、わたしとおんなじ事、言ってる。


「あおいちゃん!」

 いろちゃんだった。

「あんまりBLBL言わないでよ!」

 怒ってた。て言うか泣いてた。


「ちょっとデリカシーが足りないんじゃない!」


 顔を真っ赤にして怒るいろちゃんを見るのは初めてだった。

「ごめんなさい。つい決め手がBL……ごめんなさい……!」


「いろ、後をつけた事は謝るわ。でも、」

 ももが割って入る。

 黒い仮面と装束の少女を指さして言った。

「でも、そいつがディスコードよ」


 いろちゃんの視線を受けたディスコードは何故かたじろぐ。

 いろちゃんのいない時に現れたディスコード。

 そのディスコードを凝視するいろちゃん。

 凄く真剣な目付きだった。BLの件で怒っているのだろうか、と思ったが違った。


「あなた、きいでしょ?」


 いろちゃんはそう言った。いろちゃんはディスコードの正体を知っている?


「なんであなたがマジョリティのキュレーショナーなんてやってるの?」

「うるさい、うるさい!」

 ディスコードは怒鳴った。


「お姉ちゃんこそ!なんで平気な顔でプリジェクションキュレーターなんかやってるんだ!」

 お姉ちゃん、確かにディスコードはそう言った。


「キュレーションサイト!」

 ディスコードは黄土色のバイザーを仮面に装着する。


「意思を貫け、マジョリティー……!」


 地面からもう一体の黄色いエモバグが現れ、一体目のエモバグと合体。


『ボーイズラブ好きは同性愛を捻じ曲げて、同性愛者への誤解と偏見を生み出す同性愛差別主義者ー!』


 エモバグが巨大化する。

 とにかく変身しなきゃ!


 いろんな事があったけど、わたし達は物陰に集まって「キュレーティン!」した。


「咲き誇るキュレーター、プリジェクションサクラ!」

「実りのキュレーター、プリジェクションペアー!」

「はじけるキュレーター、プリジェクションソーダ!」


 ついにディスコードと対峙する私達。


「ペアーとバトルしたくなかったのね」

 わたしの前に現れたり、いろちゃんが不在の時に現れたり。


「お前達……!お前達なんか!」

 激高するディスコードとバトルするわたしとサクラ。

 そして、黄バグの相手はペアーだ。


『BLってクッソ気持ち悪いんだけどー!』


「BLは、禁断の恋愛を、障害を乗り越える姿を、応援する物語なんだよ!」


 エモバグの大振りのパンチを交わして、その腕をつかんで背負い投げするペアー。

 いつにも増してパワフルな投げで、巨大エモバグをなんなく投げつけてしまう。


『だって気持ち悪いじゃん!受け入れてもらおうとすんな!』

 立ち上がろうとするエモバグ!


「自分達はシンプルに嫌悪感を示すのに、女性の感じるそれは弾圧するのはダブルスタンダードじゃない!」

 間髪入れずにシャイニングウィザード!今回のペアーは容赦がない。


『ボーイズラブ好きは同性愛を捻じ曲げて、同性愛者への誤解と偏見を生み出す同性愛差別主義者ー!』

 さらに暴れようとするエモバグだが。


「BLは『受け』や『攻め』といった男女の役割のメタファーを維持しながら、男性二人がその役割を演じることにより、その役割を換骨奪胎できるのが魅力なんだからっ!」

 ペアーはエモバグのか片足をとってアンクル・ホールド。


 関節技のキレキレ攻撃は締め上げる度にエモーショナルパワーが貯まる。

 数回の締め上げでペアーのブローチは光輝いた。


 さらに両足を抱え込んでの逆エビ固め。

「男女の恋愛は現実の男女の役割イメージや価値観に話が左右されるけど、BLはそれらに縛られにくいので、恋愛感情がシンプルに描かれているんだからっ!」


「BLには異性であるキャラクターを360度見る自由があり、まるで監督になったように視点を切り替え、心の中でキャラクターを好きに扱うという、日常にはない権力や自由が手に入るため、女性の精神の解放のツールになっているんだからっ!」


 さらに締め上げを継続するペアー。

 ……………。

 これは何というか、やり過ぎじゃなかろうか。


「ス、スルースキルなんでしょっ!ペアー」


 わたしの呼びかけにはっとするペアー。

「とにかく!BLは普段体験できない非日常感が溢れていることが最大の魅力なんだからーっ!」


 光輝くキックでエモバグを蹴り上げるペアー。

「お前の罪を数えろ!」


 空中で巨大エモバグの首に足を引っ掛け、後ろに回ると相手の両腕を掴み、複雑な関節技を完成させる。


「ペアークラッシャーハーヴェスト!」


 そのまま落下すると轟音とともに巨大エモバグは消え失せた。

 ペアーの完封の大勝利だった。


「サイスフィア、ゲットっち!」

 こむぎっちゃんが黄色いサイスフィアを回収して、サイストレージに収める。


「負けたのか…!」

 ディスコードもわたし達から離れる。


「きい!」

 ペアーは叫んだ。


「こんな悪い事はすぐに止めなさい!どうかしてる!」


「黙れ!お姉ちゃんこそどうしちゃったの?!」

 ディスコードは怒っていた。


「お兄ちゃんのためにも、この街の歪んだイノベーションは破壊しなきゃいけないんだ!」

 そう言うとディスコードはジャンプを繰り返しながら去って行く。


「きい……!」


 うなだれてたたずむペアー。


「説明してもらえるわね」

 サクラとわたしはペアーに駆け寄る。


「ディスコードの正体を知っているのね?」


 うなだれたままうなずくいろちゃん。



「あの子の本名は松木きい。私の双子の妹なんだ」


 いろちゃんはディスコードではなかったが、それでも話してもらわなきゃならない事ができた。

 そして、その話によって私たちは、実験都市計画の過去に遡り、その根源を紐解いていく事になるのだった。

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