第13話 新たなるキュレーショナー! エキセントリックとディスコード登場 Aパート
「いってきます、お母さん」
「いってらっしゃい、あおいちゃん」
朝、わたしはお父さんと一緒に車に乗っていた。
と言ってもお父さんの車じゃない。
乗っているのは本庄警察のパトカー。
向かっていたのは児玉工業団地。
もちろんわたし達が逮捕されて、護送されているのではない。
マジョリティのアジトとおぼしき場所が工業団地にある事が判明。
意識を取り戻したセゾン姉妹から、アジトである廃倉庫の場所が分かったのだ。
私達が行くのは、アジトにエモバグやキュレーショナーがいた場合に備えてだった。
いわば捜査を行う警察の護衛だった。
平日なんだけど、学校を休んで急行する事になった。
ももといろちゃんも同様だった。
廃倉庫の前は警官、というか機動隊に囲まれていた。
マジョリティは分類上テロリストになる訳で、当然と言えば当然の対応だった。
警察の護送車両に案内されるとすでにももといろちゃんがいた。
「やれやれ、とんだ事態になったわね」
「敵のアジトだって!ドキドキするね」
二人とも緊張の面持ちだ。
「それじゃあ変身したら倉庫前に集まって欲しい」
キュレーターへの指示。
お父さんとしてではなく、子バートンとしての指示だ。
この時、やっぱりお父さんが子バートンなんだなと実感した。
「キュレーティン!」
両腕をクロスさせて、スマートフォンは前に向ける。画面は見ずに変身アプリを起動する。
近くのEPM用のプロジェクターから光が照射され、わたし達の制服が変化していく。
わたし達三人はプリジェクションキュレーターに変身した。
廃倉庫前に向かうわたし達。
わたし達が現れると機動隊の人達からもどよめきが。
一応、わたし達の正体は秘密だ。
護送車の人や警察の上層部は知っているみたいだけど。
シャッターが開く。
機動隊の人達がまず中に入る。
爆発物などが仕掛けられていた場合に備えるためだった。
実際は中は静まり返っていて、人の気配はなった。
「もう逃げた後みたいだね」
この場所が突き止められる事くらいは想定内だったのだろう。
倉庫の中にマジョリティの正体に迫れるようなめぼしいものは見つからなかった。
ただ、倉庫内に設置されたエモーショナルプロジェクションマッピングのプロジェクターは、本来設置されていたものではなかった。
ハンドメイドの、犯人が残したものだ。
セゾン姉妹の話によると仲間内でも変身後の姿でしか会った事がないらしい。
マジョリティの指導者にいたっては、プロジェクションマッピングのキャラクターとしてしか知らないと言う。
「ゴッドG」と名乗るその老人は
学校の帰り道、セゾン姉妹に「わしが見えるお主達には素質がある」と話しかけて来たと言う。
ミムベェ達、ゆるキャラと似た性質があるみたい。
もう二人のキュレーショナーの存在も確認されたが、この人物がスカウトしたのかも知れない。
「エキセントリック」と「ディスコード」、セゾン姉妹から語られたこの二人ともいずれ出会う事になるのだろうか。
結局このマジョリティのアジトから新しい発見はなかったが、急いで引き払ったのは確かなのだろう。
見つかったプロジェクターを回収して撤収する事になった。
美里の自宅にパトカーで帰るわたし達。
ちなみにお父さんの話ではセゾン姉妹は衰弱していたが、順調に回復しているらしい。
お父さんの気持ちとしては、騙されて利用されていた事実はあるので、何とか罪に問われないようにしたいって言ってた。
ちなみに本名は世拵月ちゃんと世拵燕ちゃん。
世拵なんて変わった苗字だよね。
さて、旧児玉市から美里へ向かう途中にはスーパーマーケットヤオコニがある。
ヤオコニは関東地方を中心に展開していて、都内にも店舗がある。
しまむうと並んで急成長を続ける埼玉の企業だ。
正確には本庄にあるお店だが、美里よりなので美里の利用者も多い。
わたしの家からはヤバンセの方が近いけど、店舗の大きさもあってヤオコニの方が品揃えは豊富。
寄りたいなとちょっと思ったけど、パトカーで買い物って訳にはいかないか。
『バブル時代はジャパンアズナンバーワンのいい時代ー!』
と思っていたが、抑揚のない声の大音量が。
ヤオコニの店舗の壁のEPMから青いエモバグが現れる。
「なんて事だ。こんなところで」
「任せて、お父さん」
わたし達はパトカーでヤオコニに寄る事になるのだった。
<つづく>
【あおいちゃんのイノベーティブ現代用語講座】
・エキセントリック
性格や行動が個性的な人を形容する言葉。
あおいちゃんは普通の女の子なので、エキセントリックな人にはショックを受けちゃいます。




