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エピローグ

 アメリカ合衆国カリフォルニア州。

 スタンフォード大学。


 サンフランシスコから約60km南東、シリコンバレーの中心に位置している。

 国立の研究所が三つも置かれたまさに世界のイノベーションの中心地だ。

 一方で石造りの校舎に木々がふんだんに植えられた古風な雰囲気もある。


 しかし、そのキャンバスに青い巨人が出現。


「EB appeared!」

(EBが現れたぞ!)


 EBとはEmotional Bugの略。

 日本に最初に現れたエモーショナルバグ、通称エモバグの事だ。


 このスタンフォードにも今はEPMのプロジェクターが設置されている。

 生徒たちのメンタルケアの役に立っている一方で、このような弊害もある。


 逃げ惑う学生達。

 学生の中にはアンドロイドやガイノイドもいる。


 AIも人間と一緒に教育した方がエモーションが発達するという研究結果を受けてだった。

 人権や自由といったロボットの権利の問題もある。


 しかし、逃げる流れに逆行する女学生の一団が。


「Let's go. prijction chairs!」

(プリジェクションチアーズ、いくわよ!)


 その名の通り、チアガール姿の女性達。総勢20人。

 一斉にスマートフォンを取り出した。


「Curating!」

(キュレーティン!)


 彼女達がアプリを起動すると、手近なEPMのプロジェクターから光が照射され、チアのユニフォームが変化する。


 ある者はプリンセスの様に。

 ある者は華麗なフラメンコダンサーの様に。

 ある者はネイティブアメリカンの様に。

 ある者はコミックヒーローの様に。


「Prijction chairs are heres!」

(プリジェクションチアーズ参上!)


 生徒達から歓声が上がる。


 第一世代型のプリジェクションキュレーターと言えばフリルとリボンのドレスが定番だった。

 しかし、今ではヒーローも多様化が進んでいる。


 これもEPMデザイナー達の研鑽の賜物だ。


 とは言え、彼女達はエモバグとは戦わない。

 役目は避難誘導やエモバグの注意を引き付ける事。

 直接のバトルはアタッカーの役目だ。


 スタンツやタンブリングのパフォーマンスでエモバグを引き付ける。

 これはアタッカーをエモバグまで案内する意味もあった。


 アタッカーはまだ到着していない。


『Protecting your family with a gun is America's pride!』

(銃を持って家族を守る事はアメリカの誇りなんだ!)


 エモバグの抑揚のない大音量の叫び。

 生徒達からブーイングが巻き起こる。


「You're telling me to evacuate.」

(避難しろって言ってるでしょ)


 グラウンドの生徒達をかき分け、エモバグに向かう姿があった。

 東洋人の女性だった。

 長い黒髪にサングラス。

 白衣を着ている。


 生徒達は道を開け、歓声を上げる。


「A crazy professor appeared!」

(いかれた先生の登場だ!)


「誰がクレイジーだっての」


 女性は日本人のようだ。

 ここで、女性のスマートフォンが鳴った。


 足を止め、通話する女性。


「I'm here.」


「ハロー! クレイジープロフェッサー!

 シリコンバレーでエモバグ注意報だぞ」


「クレイジーじゃないっての。

 もういらっしゃってるわ」


「ああ、それで騒がしいんだ」


「いつも()てないで避難しろって言ってんだけどね」


「あら!

 じゃああなたが()せてあげなきゃ!」


「はいはい。

 そういう訳だからまた後でね」


 女性はスマートフォンをしまう。


「やれやれ。

 わたしがアメリカに行ったからって、すぐアメリカンジョークを言いたがるんだから」


「Hey! Hey!」


「Hey! Hey!」


 女性を確認したプリジェクションチアーズは彼女のために道を開け、そこでパフォーマンスを行う。


 その間を白衣のポケットに手をしまい、悠然と歩く女性。

 エモバグの前に立つ。


『I'm absolutely justice!』

(おれは絶対的な正義なんだ!)


 大きな口を開けて威嚇する青いエモバグ。


「OK.」


 両腕を広げて、もうたくさんとばかり首を振る。


「オケオケオケケオケオッケーイ!」


 何度も首を振る女性。


「You are absolutely justice, and……」

(あなたが絶対的な正義なら……)


 女性はサングラスを白衣のポケットにしまい、代わりにスマートフォンを取り出した。

 そして、スマートフォンを前に突き出し両腕をクロスさせると、画面を見ずにアプリを起動する。


「Curating!」

(キュレーティン!)


「Yeah!」


「Yes!」


 生徒たちから歓声が上がる。

 プリジェクションチアーズもピラミッドからバスケットトスで飛び上がったりして盛り上げる。


 EPMのプロジェクターの光が白衣の女性を包む。


 女性の白衣が鮮やかなシアンに変わる。

 胸元に大きな宝石型のブローチが。

 服の袖とスカートの裾には白いフリルが付く。

 さらに髪の毛、眉毛、まつ毛、唇も青くなった。

 そして、髪には羽飾りの付いたカチューシャが。

 白衣ベースの上着は長めのジャケットが付いている。


「I am prijction soda!」

(わたしはプリジェクションソーダよ!)


 わたしだった。


<おしまい>

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

ご意見、ご感想、レビューなどお待ちしております。

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