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【書籍化1~2巻発売中!】必中のダンジョン探索~必中なので安全圏からペチペチ矢を射ってレベルアップ~  作者: スクイッド


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地図

「……長い!」


 あれから何体かのコウモリモンスター──デビルバットを倒しながら進んできたが、とにかく未発見だったダンジョンなだけあって、道がわからない。

 しかも、分かれ道が多く、もうどれくらい進んだのかもわからない。


 最初の方はうっすらと細い血の跡を辿っていたのだが、途中からそれが途切れてしまってからは、ひたすらデビルバットを倒して進んでいる。


「これは……ヤバいな」


 まだ【隠密】スキルはレベル差からか、バレずに不意打ちで仕留められてる。


 でも時間が全然足りない。


 このダンジョンが何階層あるのかわからないけど、莉奈が居るのは最下層だろう。

 そうなるとこうやってのんびりしている時間はない。


「……なにか……なにかないのか?」


 唯一の手掛かりだった血の跡は途中で消えてしまった。

 それに、これまでのダンジョンとは違って地図もないし、目印になるようなものもない。


「……くそ! こうなったら……モンスターは無視して全速力で……ん?」


「──だ────か?」


「……?」


 今聞こえてきた音は……人の声?

 少なくとも、デビルバットの声ではないはずだ。


 そうなると……


「隠密」


 俺は急いで【隠密】スキルを使い、気配を消す。

 そして、そのままゆっくりと進むと……


「……やっぱりか」


 そこには、通路を雑談しながら歩いている数人の男達の姿があった。


 まだ俺が通った覚えのない方から来たから援軍の探索者というわけでもないだろう。


 そうとなると竜の瞳か迷教……


 だけど、どっちにしろ俺としてはありがたい。

 俺は道がわからなくて困ってたところだけど、あいつらは違うはず。


 絶対にダンジョンで迷わないように地図かなにかの道がわかるものを持っているはずだ。


「お?」


 どうにか道がわかるような地図かなにかを拝借できないかと考えていると、その中の一人がなにかに気づいたような声を出した。


 一瞬、【隠密】スキルを破られたかと思ったが、俺の隠れている場所とは別の方を向いている。どうやら俺が気づかれたとか、そういうわけではないらしい。


 それに、俺も【索敵】スキルが高速で近づいてくる反応を捉えている。


「ちっ。お前ら構えろ。コウモリだ」


 俺と同じくデビルバットが近づいてきているのに気づいていた男がそう言うのと同時に、デビルバットの反応がある方向に向けて全員一斉に銃を構えた。


「「「キィッ!!」」」


「撃てぇ!!!」


 デビルバットの姿を捉えたのと同時に言い放たれた男の合図と共に、魔力で無数の銃弾が撃ち出され、弾丸の雨がデビルバットを襲う。


 音もなく、静かに命を刈り取られるデビルバット。

 銃から音が出てなかったのと銃の形が普通のアサルトライフルなのを考えると、あのアサルトライフルは魔法の力で弾を打ち出す魔道具の魔法銃だろう。


 それに、発射の瞬間には魔力も感じたしな。


「ふぅ……これで終わりだな。ったく、なんでこんなところにまで……」


「おい、無駄話はいいからさっさと行くぞ。道はわかるんだろうな? 迷ったりしたらぶっ殺すぞ」


「へーい」


 そんな会話をしながら、男達は再び歩き出した。



 男達の中の一人が俺の望んでいる物を見ながら。




 俺の望んでるもの。それは地図。

【鷹の目】によって視力が上がった俺の視界には、しっかりと迷路らしきものが書かれた紙──地図を広げながら歩いていく男達の姿が見えていた。


「よし。とりあえず、このダンジョンの地図だけでも入手しないとな」


 さっきの戦闘の動きを見る限りだと、リーダーは指示を飛ばしていたあの男で、他の奴らもそこそこ強いと思う。


 それでも、一人一人のレベルはそこまで高くなさそうに見えるし、今の俺なら余裕で勝てる。


 だけど、警戒するのはあの魔法銃。


 あれだけは俺に致命傷を与えられる可能性があるし、そもそも数が多い。それに、レベル差があるから油断していると負ける可能性もある。


「ふぅ~……うっし。いくか」


 だけど、それでも行く。莉奈を助けるために。

 本格的な対人戦闘はあの学校での戦闘以来だけど、失敗は絶対にしない。


 絶対に過信することはないけど、冷静に相手を分析して、慎重に戦うこと。


「……」


 俺は【隠密】を発動させながら、男たちの後をつけていく。

 できるだけ見つからないようにと、気配を殺しながら。


 ──残り3メートル。


 狙いは地図。まずは戦闘に入る前にあれだけでも奪い取る。


 ──残り2メートル。


 地図に意識を集中させろ。

 あの時と同じだ。凛と杏樹のスマホから俺の眠っている写真を消すためにスマホを奪い取った時のような……


 ──残り1メートル。


「……そこかぁ!」


「──ッ!?」


 完全に油断して歩いている男の手の中にある地図に手を伸ばす。


 あと一歩で地図に手が届くところまで来たところで、突然指示を出していた男が振り向き、そして俺に向かって懐から取り出した拳銃を構えて引き金を引く。


 俺の心臓を撃ち抜くはずだったその銃弾は、咄嵯に身体を捻って回避したお陰で、俺の頬を掠めていっただけで終わった。


 だけど──


「ちっ気づくのが遅れたか。まさか俺達に不意打ちするチャンスよりもそんな地図を欲しがるとはな……」


 ──地図は奪えた。


 俺は近くにいた地図を奪った男の鳩尾を拳で打ち抜いて気絶させてから男達から十分に距離を取り、【隠密】を解いて男達と向かい合う。


「お前の顔は見覚えはないなぁ……それに地図を狙ったってことは……はぁ。

 まさかもう探索者が入り込んでるなんてな……くそ! 面倒くせぇ!警備の奴らはしっかりしろよ……」


「……」


「だんまりか……まあいいや。とにかく、探索者なんだろ?

 だったら俺達の敵だ!お前ら構えろ!探索者狩りだ!!」


「「「おう!!!」」」


 こうして、このダンジョン内での初めての対人戦が始まった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんでわざわざ隠密解いたの?
[気になる点] >まさかもう探索者が迷い込んでるなんてな…… 迷い込む? 施設内のダンジョンしかも入口を身内が警備してる前提があって、見覚えのない相手を「偶々入り込んだ冒険者」だと判断するのはおかしい…
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