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【書籍化1~2巻発売中!】必中のダンジョン探索~必中なので安全圏からペチペチ矢を射ってレベルアップ~  作者: スクイッド


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新緑のダンジョン

 俺は電車に乗って目的である新緑のダンジョンまでやってきた。


 新緑のダンジョンの入り口は街中にあり、周りはしっかりコンクリートで固められている。それだけでなく、前まで見かけなかった入り口の前に警備員らしき人が二人立っていた。


 まあ、最近ダンジョン関係の事件が多かったし、こういうのも必要になったんだろうな。


 一応、ダンジョンに入るための手続きみたいなものがあるのかもしれないと思って、少し離れたところから様子を窺ってみた。


 だけど、どうやらそんなものはないらしく新緑のダンジョンに探索者は次々と入っていく。


「…………」


 ただ、無言で立ち尽くして、入っていく探索者達に目を光らせていた。

 見た目が厳ついのもあってかなり威圧感がある。まあ、いいや。入れないってわけでもないなら。


 さてと、俺も中に入りますか。


「お疲れ様でーす」


 なんか言わないといけない気がして言ってみた。


「…………」


 返答はなかったけど、二人はその通り厳つい体を軽く曲げて会釈をしてくれた。

 俺も同じように頭を下げてから、ダンジョンの中に入った。


 ダンジョン内は魔樹の森のように木々が生い茂っていて、光は入りにくくはなっているけど、そこまで暗くはない。

 茂みも結構あってThe・森ってかんじだ。


 それにしても、本当にダンジョンってよくわからないな。これまでのダンジョンもなにかしらの方法で明かりが確保されてたし。

 今も、まるで太陽みたいな光が木々の隙間から差し込んでいる。


 本当にダンジョンってよくわからないな(二回目)


「まあ、それは良いとして」


 とりあえず依頼をこなすためにヒール草を探さないと。

 ヒール草は確か根っこごと引き抜かないとダメなんだったかな。


 とりあえず、調べた通りのヒール草を探し始める。


 ヒール草は、葉っぱの形がハート型のような形をしている。だから、それさえ注意して探していけば見つけること自体は難しくないはず……





 だったんだけど。


「見つからねぇ!!!」


 あれから三十分くらい森の中を探してみたけど見つからない! 全然無いじゃん!


 茂みの中から顔を出すようにして辺りを見渡したけど、どこを見てもヒール草なんて生えていなかった。


 いや、まさかここまでないとは思わないじゃん。

 どうなってんだ?


 もしかしてこの辺りにはもうヒール草は無いのか? それともただ単に運が悪いだけなのか?

 いやまあ、俺の目が節穴って可能性もあるんだけどさ。


 しかし、新緑のダンジョンへの移動中にヒール草の生えてるような場所まで調べられなかったのが痛いな。

 今度からはちゃんと調べて覚えとこう。そうでもしないとこれはきつすぎる。


「はぁ、仕方ないか。もう少し奥に行ってみるしかないな」


 とりあえずもっと深いところへ行ってみて、そこで見つからなかったら今日は諦めて他の依頼を片付けよう。

 一応依頼の期限まで時間もあるし。そこまでにどんなとこに生えてるのか調べてからまた来て見つければいいしな。


 そう思いながら、さらに新緑のダンジョン一階層の深くへと進んでいく。








 結局、依頼にあったヒール草を見つけることはできなかったけど、その代わりに色んなものを見つけた。


 例えば、薬草類。

 ヒール草を探していた時に見つけたのが、ヒール草以外の回復効果のある薬草たち。


 中には、毒草もあったけどこれは別にいいや。


 なにか使うこともあるだろうし、毒草以外の薬草を【アイテムボックス】の中に放り込んでおく。


 だけど、やっぱりこれだけ探してもヒール草は見つからないんだな。

 俺と同じような依頼を受けた人がいてヒール草を集めていたとしても、ヒール草ぐらいならすぐに生えてくるはずだから、やっぱりここにはヒール草がないと考えた方がいいか。


「仕方ない……先に他の依頼を終わらせておくか」


 ちょっとどころか、めちゃくちゃ予定より時間がかかってしまったから、こっちの依頼はさっさと終わらせたいな。


 そう考えて、目的のモンスターを探すために使っていた【索敵】スキルに意識を集中させる。

 すると、【索敵】スキルに反応があった。


「おっ、いた」


 そのまま反応のあった方に真っ直ぐに進んでいくと、そこには、枝から糸を垂らしている蜘蛛型のモンスターがいた。


 あのモンスターはキラースパイダー。


 八本の足は、それぞれ先端に鋭い爪が付いており、口からは小さな牙のようなものが見える。

 そんな蜘蛛が大きさ約30センチ。


 そんなもの恐怖でしかないし、はっきり言って、気持ち悪い。


「……」


 だけど、ここで逃げても意味はない。

 というか目的があいつなんだから逃げるわけにもいかない。


 ぶっちゃけそんなこと考えずに逃げたかったです。


 だけど、今回の依頼はキラースパイダーの糸の採取。


 コボルトの爪を出してきた時に、受付で依頼を受けたことを証明して伸ばし棒みたいな木製の棒を三本受け取ってきた。

 この棒一本に、キラースパイダーの糸を一体分巻き付けて、それを三体分集めて提出すれば依頼完了だ。


 ちなみに、報酬の方は三十万円で依頼主は有名なファッション関係の会社だった。

 これなら、報酬がいいのも納得だな。


「それじゃあ行きますか」


 俺は意を決して、木から垂れているキラースパイダーに向かって走り出すのだった。

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