武器全般
「いや、本当にこんなもの受け取ってもいいんですか……?」
「もちろんですとも。その弓はあなたが使うべきなのですから」
目の前にある龍樹の弓が入ってる木箱を見ながらあの時に連絡先をもらった誠三さんと再び話しをしている。
「それに、その弓は私の木工職人としての人生で最高傑作。ですが弓を使う人もおらず、誰かに売ることもできず、ずっと倉庫にしまってあったものでした。
それを私の代わりに使ってくれるというのですからこちらとしてはむしろありがたいことです」
「そ、そういうことなら……」
てか誠三さんは木工職人だったのか。
それならあの家の近くにあった大きな建物と積んであった木材も全部納得がいく。
それにしても、仮にも樹でも龍と名のついてる素材を加工できるんだから誠三さんはかなりの加工技術とスキルを持っているはずだ。
そんな人の最高傑作……貰えるなら正直めちゃくちゃありがたい。
「……それでは、ありがたく使わせていただきます」
「はい。存分にお使いください」
「ありがとうございます。突然の連絡、申し訳ありませんでした」
「いえいえ、気にしないでください。それではまた」
そう言って電話を切る。
はぁー緊張した。
それにしても、間違いじゃなかった……
「ヤバい、めちゃくちゃ嬉しい」
まさかあんな龍樹の弓なんて物を貰えるとは思ってもいなかった。
俺は木箱を開けて龍樹の弓を取り出す。
取り出した龍樹の弓は不思議と手に馴染んで、その重さもいい感じに動かしやすくてその重さが邪魔になることはない。
「いい弓だ。持っただけで凄さがわかる」
だけど、恐らく今の俺のステータスだと、元の性能より少し落ちると思う。
それでも十分過ぎるほどの性能を持ってるんだけど。
「これで弓を買う必要はなくなった。後は短剣を買えば良いな」
弓は最上級の、しかも俺と一緒に成長してくれるこれからステータスに合わないなんて事がない物を手に入れることができた。
これにあとは短剣を買えばダンジョンに潜れるな。
魔石を取り出すための短剣というかナイフは、探索者の資格を持ってる人だけがログインできるサイトで買えばよかった。
だけど、サブとはいえこれからは自分の命を預けるんだから自分で実際に手にとって選びたい。
「まあ、買いに行くか。元々弓を買いに行くつもりだったしそれが短剣に変わっただけだ」
俺はすぐに家を出て駅に向かう。
***
「うん、やっぱり結構種類があるな」
駅から歩いて10分ぐらいの場所にある探索者協会支部の中にある武器の販売エリア。
探索者協会支部自体がかなりの大きさなのもあって、販売エリアも相当広い。
その中でも一応初心者向けとそれ以外の人向けのコーナーに分かれていて、それぞれの武器の種類ごとに置いてある。
そして、俺が今いるのはそれ以外の人向けの短剣エリア。
そこには様々な形、大きさの短剣がショーケースの中に並んでいる。
「う~ん……どれにするかな」
正直なところ、どれもそこまで性能は変わらない。
【鑑定】は使っているけどどれも同じような効果で、もちろん良いものはあるけど俺が使うのには早いのと純粋に高いのもあって俺の考えてる今の俺が使うのより少し高い品質の短剣が中々見つからない。
俺の直感的にこれだ!というものがなければ性能で選んでしまおう。
「うん?これは……」
何個目かのショーケースの中に置いてあった一本の短剣に目を惹かれた。
その短剣は刃渡り30センチほどの長さで、厚さは3センチあるかどうかぐらいだ。
でも、その薄さに反してその刀身は不思議な光を放っている。
「……これ、良さそうだな」
見た目に惹かれたんじゃない。
確かに綺麗ではあるが、その光が気になった。
「【鑑定】」
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疾走の短剣
・ワーウルフの突然変異モンスターを倒した者に与えられる短剣。
・攻撃力+300
・俊 敏ステータス+15%
・自身の遠距離の攻撃が相手に当たりにくくなる。
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「値段は……十三万?やっす!?」
これは買いだわ。
攻撃力とか高いし俊敏のステータスに補正がかかってるのに値段が十三万は安い。
これは最後の遠距離攻撃が当たりにくくなるの効果がデメリットだからこの値段なんだろうな。
まあ、俺には【捕捉】スキルがあるから関係ないしとりあえず握ってみよう。
近くの探索者資格のカードを読み取るスキャナーに探索者資格を差し込んで、ショーケースのロックを解除してショーケースから疾走の短剣を取り出す。
ちなみにこれは探索者資格を持ってない人が触る事が出来ないようにするのと同時に、探索者による万引きの対策もできる優れものらしい。
そして、疾走の短剣を手にとってみるとさらに欲しくなった。
持ち手の太さから長さ、重心の位置まで全てが俺にぴったりだ。
「よし、これにしよう」
俺はその短剣を手に持ってレジに向かった。
「すみません。これをください」
「この疾走の短剣をでしょうか?」
「そうですけど……なにか問題がありますか?」
レジで会計をしようとすると店員さんが俺に確認を取ってくる。
「いえ、疾走の短剣は相手に遠距離の攻撃が当たりにくくなるというデメリットのせいで魔法や銃を使う方のサブ武器にもできず、近接戦闘をする方もデメリットがあるものは避けたいと言われていて購入する方は今まで一人もいなかったので一応の確認です」
「ああ、なるほど。そういうことですか」
まあ、確かに俺みたいな【捕捉】スキルで必中効果を持っていない遠距離を主体に戦う人からしたらこれは致命的な欠点になるかもしれない。
それに、近接戦闘をする人も離脱する時はなにかアクションを起こしてから離脱したい人も多いだろうし、そうなると投擲なんかもしたくなる。
そういった人たちは別の短剣を買うだろうな。
「大丈夫ですよ。わかって選んでるので」
「そうですか、失礼しました。それでは鞘を取ってくるので少々お待ちください」
そしてそのまま会計を済ませて疾走の短剣を【アイテムボックス】にしまって武器エリアから出る。
「よーし。とりあえず買うのはこれだけだしあとは売るだけ売って帰るか」
そして、魔石やらをそのまま探索者協会で売って、家に帰るのだった。




