レインボーバタフライ戦
始まりは、レインボーバタフライからの攻撃だった。
俺達が行動に移す前にレインボーバタフライは鱗粉の向こうから正確に俺達に向けて風の刃を複数飛ばしてくる。
風の刃は速さこそそれほどでもない。だが、パウダーバタフライやアサシンバタフライよりも遥かに大きく、数が圧倒的に多かった。
けどまあ、その情報は持ってたし、全然避けれるレベルだから問題はないな。
「シルフィもディーネも多分大丈夫だとは思うけど、万が一もあるからしっかり警戒はしといてくれよ!」
「りょーかい!」
「わかりました」
俺は二人に注意喚起をしながら風の刃を躱していく。
一応シルフィとディーネも大丈夫かな。
二人の方にチラッと視線を向ける。
俺が視線を向けた先には悠々と向かってくる風の刃を躱すシルフィと、シルフィと同じように風の刃を躱しているディーネの姿。
ふむ……二人とも大丈夫そうだな。
なら、俺もサクッとやることをやってしてしまうか。
「【透過捕捉】、【鑑定】」
風の刃を避けながら、俺は【透過捕捉】を使って大量の鱗粉に紛れているレインボーバタフライを視界に捉える。
もちろんちゃんと【鑑定】も使って、レインボーバタフライのHPの総量を把握しながらだ
「……よし。やることはやったし……」
本当だったら今回はこのままボス部屋から出て一方的に倒すんだけど……
「シルフィ、ディーネ! すぐに倒すから、今回はいつもの方法じゃなくて正面から戦っても良いかな!」
正直、いつも通りボス部屋の外からペチペチ射って倒すのも簡単で良いんだけどたまには正面からやりあいたい。
というか、ミスリルゴーレムとかの時みたいに正々堂々戦わなきゃ行けない時に鈍ってたら困るし。
そういう意味では、ミスリルゴーレムより確実に弱いし、近接では戦ってこないレインボーバタフライは正々堂々戦う練習にはうってつけの相手だ。
前々からこういうことはやってたし、今回もまたそれを復活させるだけだしな。
「ん~? あたしは別に良いけど……シルフィは?」
「わたしも構いませんよ」
「よし、じゃあこのまま正面から戦うから二人ともちゃんと警戒はしといてくれよ」
「了解っ!」
「了解です」
さてと、それじゃあ正々堂々とやることにはなったが、やることは変わらない。
最初の予定通り、やることは速攻!
さっさとレインボーバタフライを倒す!
「【魔法矢・全弾発射】!」
今も飛んできている風の刃を避けながらMPを150使って【魔法矢】十回分の【魔法矢・全弾発射】で作った矢を弓につがえる。
さて、これでどれぐらいHPを削れるかな。
「シッ!」
小さく息を吐きながら透明な矢を放って、いつもと同じようにレインボーバタフライに向けて矢を放つ。
放った透明な矢は十本に分裂し、それぞれ違う軌道を描きながらレインボーバタフライに飛んでいく。
「キィィィィイイ!!!」
レインボーバタフライはそんな鳴き声を上げるのと同時に、一層強く羽を羽ばたかせる。
すると、羽から風の刃を連続で生み出し、その風の刃で俺が放った矢を相殺していく。
……マジか……
あーそっか。そういえばレインボーバタフライは触角が発達していて、振りまいている鱗粉の動きから、探索者の位置を見つけるんだっけ……?
恐らくだが、透明で見えないはずの俺の【魔法矢・全弾発射】を迎撃出来たのは、この触角のおかげだろうと思われる。
「キィィイイ!!」
そんな風に考えていると、風の刃をさらに俺に向かって飛ばしてくる。
「待て待て待て待て!?」
飛んできた風の刃を【魔法矢】を作り出して迎撃し、迎撃しきれない分は【予測】、【回避】といったスキルを使って躱していく。
あ、あぶない……だけど、なんとかなりそうではあるな。
「キィィイイ!!」
「おわっと!?」
しばらく迎撃したり避けたりしていると、さらに風の刃を複数飛ばしてくる。
しかも、さっきよりも速いし数が多い。
だけど、風の刃が当たった木の傷がさっきまでよりも浅いみたいだし威力より速さと数を優先した感じか!?
「だけどそれならそれでやりようはある! 【魔法矢・全弾発射】!」
俺は風の刃を躱しながら、【魔法矢】五十本分のMPを750使って作り出した【魔法矢・全弾発射】の透明な矢を弓につがえる。
そして、そのまま射ち出す。
射ち出した透明な矢は、さっきと同じようにレインボーバタフライに飛んでいく。
「キィイ!?」
レインボーバタフライはさっきと同じように迎撃しようとしたらしい。
だが、さっきと違い、今度は十本ではなく五十本に分裂して飛んでいく矢に驚いたのか、迎撃しようとしたみたいだが、いくつかの矢はレインボーバタフライに突き刺さり、鱗粉をまき散らしながらHPが削れる。
……よし、これで大体わかった。
「【魔法矢・全弾発射】!」
もう一回、レインボーバタフライに向けて【魔法矢】を五十発分放つ。
「キィィイイ!?」
レインボーバタフライはさっきと同じように迎撃しようとするが、先ほどと同様に数が多すぎて対応しきれていないようだ。
このままいけばさっきと同じようにレインボーバタフライにダメージを与えられるだろうが、それだけでは終わらせない。
「【魔光矢】!」
これで決める!
俺の使える手段の中で一番威力が強力なスキル、【魔光矢】をレインボーバタフライに向けて放つ。
分散した【魔法矢・全弾発射】に対応しているレインボーバタフライに、【魔光矢】をどうにかする術はない。
【魔光矢】はレインボーバタフライに向かって一直線に飛んでいく。
「キィィイ!」
レインボーバタフライに【魔光矢】が当たると、残っていた【魔法矢・全弾発射】も直撃し、レインボーバタフライは鱗粉をまき散らせながら地面に落ちていく。
『レベルが20上がりました』
「よし。終わったか」
レベルアップの音声が聞こえてきたから、レインボーバタフライは問題なく倒せただろう。
レインボーバタフライ戦完了と。
必中のダンジョン探索2~必中なので安全圏からペチペチ矢を射ってレベルアップ
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