ロックタイガー
【書籍化・8月30日1巻発売予定です!】
「これで終わりっと!」
弓につがえた【魔法矢】を射ち出し、5メートルほどの前足と後ろ足が岩に覆われた巨大な虎のモンスター、ロックタイガーの眉間を貫く。
それと同時にロックタイガーの足の力が完全に抜け、ズシンという音を立てて地面に倒れた。
『レベルが25上がりました』
「ふぅ……これで終わりだな」
俺はそう呟きながら龍樹の弓を背中に背負う。
「お疲れカエデ!」
「お疲れ様ですカエデさん」
「おう! 二人もお疲れ」
俺はそう言ってパタパタと飛んでくるシルフィとディーネに手のひらを向ける。
それに反応してシルフィとディーネは小さな手を俺の手のひらに叩きつけ、ハイタッチしてきた。
現在、俺達三人がいる場所はさっき倒したロックタイガーがボスの、Bランクダンジョンである『虎山のダンジョン』。
この虎山のダンジョンにディーネを助けてから、壊れた疾走の短剣の代わりの短剣の購入にシルフィ、ディーネ、
俺のために高位のMPポーションのハイ・MPポーションの購入。
そして、ディーネと雅さんとの顔合わせなど。
これらの事をやっているうちにすぐに時間が経ってしまい、虎山のダンジョンに潜るまでに三日もの時間がかかってしまった。
あ、ちなみにディーネと雅さんとの顔合わせはあっさり終わった。
というのも雅さんの元を訪ねたディーネをつれた俺を見た瞬間、雅さんが「あ、またなのね」というような顔をして察しくれたおかげなのだが。
それからは雅さんがシルフィの時と同様にテイムモンスターの登録。
ディーネをテイムモンスターとして証明するためのスカーフの作成。
その他情報収集……。
…………いや、思い返してみるとホントに雅さんには迷惑かけてばっかりだな。
とりあえずこの恩は絶対に後で返さなきゃ。
「さてと、それでどうだったシルフィ? この部屋におかしなところはあったか?」
「う~んとね……。この部屋にもおかしなところはなにもなかったよ……」
「わたしも確認しましたがシルフィと同意見ですね」
俺の言葉に対しシルフィとディーネはなんとも言えない顔をしてそう答える。
……まあ、そう簡単にはいかないよな。
むしろ探し始めて一回目のダンジョンでディーネを見つけることが、幸運だったんだ。
ちなみに、この虎山のダンジョンはそれぞれの階層が岩山になっている岩山型のダンジョンで、2メートルほどの爪や体に薄く岩が体に生えているストーンタイガー。
こいつが真正面から襲いかかってきたり、岩の陰なんかの死角から並大抵の防御力じゃ抵抗もできないような力で攻撃してきたりする。
シルフィが常に風を使って探索ついでに索敵してる俺達には関係ないけど……。
そんな場所だったから、かなり視界は開けていたのもあって、そこまで期待してたと言うわけではなかったけど……。
「ま、そううまくはいかないよな……」
「そうだね……。あ、でも、このダンジョンには仲間がいなかったってわかっただけでも良かったと思うから!」
「……確かにそれもそうだよな」
「そうですね……。カエデさん、これからどうしますか?」
「そうだなぁ……。とりあえずこのダンジョンにはなにもないみたいだし、次のダンジョンに行こうか」
この虎山のダンジョンだけでも四日間潜ってたし。
「さんせーい! じゃあ次のダンジョンに……って言いたいけど、ディーネはどうするの?」
「どうするとは……?」
シルフィがなにを聞いているか意味がわからなかったのかディーネは首をかしげる。
「えっと……ディーネもついてきてくれるよね?」
「……ふふっ。もちろんですよ。シルフィだけではカエデさんさんを支えきれないかもしれませんからね」
「む~っ! そんなことないよ!」
「でもシルフィ昨日は慣れてきたせいか前に出すぎてたじゃないですか。カエデさんに助けられてましたけど少し危ない場面もありましたし」
「そ、そんなことないよ!」
シルフィはディーネにからかわれて顔を赤くしながら言い返す。
そんな二人のやり取りを見て、思わず笑みがこぼれる。
「まあまあ……。とりあえず、ディーネもついてきてくれるってことだし時間もまだあるから次のダンジョンに行く前に、ちょっと休憩してから行こうか」
「はーい」
「わかりました」
俺の言葉にシルフィとディーネはそう返事をする。そして、それから休憩を挟み俺達は次のダンジョンに向けて出発した。
向かう先は……とてもとても嫌なことに一番虎山のダンジョンに近いダンジョンである『鱗粉のダンジョン』だ。
何度も失礼しますが
【書籍化・8月30日1巻発売予定】
です!
web版よりも遥かに読みやすくなっております!
ぜひお手に取っていただきたいです(ごますりすり~)




