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第三十三話 シャドー

 二匹の魔物が邪悪に嗤う。

 片方の黒い人型が、抱きかかえている少女をこれ見よがしに見せてきた。


「取り返してみせるわよ」


『イヒッ、やってみろ』


『イヒヒ、俺たちを簡単に捕まえられると思うなよ』


 次の瞬間、二体の魔物は私の前から忽然と姿を消した。

 正確には、()()()()()()()のだ。


 【鑑定】によると、この魔物たちは“シャドー”。

 影が人の(かたち)をして動いているような魔物だって。

 【隠密】、【影潜り】、【影移動】などの斥候系よりのスキルをたくさん有していた。


『イヒッ、さらばだ』


 【影潜り】はシャドーに触れている物や人も影の中に引き込めるようで。

 人質を連れた二つの濃い影の塊が、影の中を進んで私から逃げる。


「逃がさないわよ」


 私は影の中を進むシャドーを追いかける。

 単純な移動速度は私のほうが上。

 だから見失うことなく追いかけることができているけど……。


 シャドーの【影潜り】は、影空間に逃げ込むスキル。

 だから、空間に直接作用するような魔法でもない限り、影の中にいるシャドーに攻撃する手段はない。


『シャッ!』


 突如、私の真下から気配がして。

 腕を大鎌に変化させたシャドーが、私の影から飛び出してきた。


 【影移動】で私の影の中に転移して、そこからの奇襲。

 それ自体はいい攻撃だけど、私に通用するとは思わないことね。


『……ッ!』


 シャドーが大鎌を振ろうとして――慌てて影に戻ろうとしたけど、もう遅い。

 私の拳が、変化させた大鎌ごとシャドーの右腕を消し飛ばした。


『イヒッ……危ない危ない』


 シャドーがおどけたようにそう言いながら、影の中を進んで逃げる。


 帝都は建物が密集しているせいで、影はそこら中にいくらでもある。

 さらに【影移動】を使えば、近くにある別の影に転移することも可能だ。


 結局私は、シャドーを追いかけて帝都の端のほうまで来てしまった。


『イヒ――!』


 相変わらずちまちまと私に攻撃を仕掛けてきたシャドーの片割れが、私の放ったパンチで霧散した。


「まずは一匹」


 シャドー自体はレベルが150くらいだから、まともに攻撃を当てれば一撃で倒せる。

 けど、おそらくシャドーたちの目的は、私を帝都の端まで誘導することだと思うわ。

 人質を傷つける様子はなく、常に私と一定の距離を保ちながら逃げてるからね。


 それをふまえると、こいつらの親玉は帝都で何かをやらかそうとしている。

 けど、私が邪魔だから、手下を使って陽動と人質作戦で帝都の端まで移動させたってところかしら。


「いまごろあの二人のほうでも何かが起こってるかもしれな――」


 私がそう言った、まさにその時。

 帝都の中心から轟音が響き渡ってきた。

 そちらを見れば、()()()()()()()()()()()()()()()の姿が見えた。



「奥の手を使うほどだから、向こうもヤバそうね……。けど、人質を見捨てるわけにはいかないわ。アリア、クララ。二人とも頑張って持ちこたえるのよ」


 もうすぐ帝都の端に着く。

 シャドーの目的が私の誘導なら、間違いなく帝都の外に出る。

 決着(ケリ)をつけるのは、その時しかないわ。


『イヒヒ、【影転移】!』


 とうとう帝都の端まで来たシャドーが、【影転移】を連発して街の外に出る。

 帝都の外の平原のところどころに生えた木々。

 その木の影を経由して逃げようとする。


 やるなら今ね。

 あいつが油断してる今が最大のチャンスだわ。


「【無限収納】……」


 私は【無限収納】の異空間に腕を突っ込み、ソレに魔力を込める。

 そして、ソレを真上に投げた。



 ――カッと。私の投げた魔石から、前が見えなくなるほどの閃光があふれ出た。



『イギィ……!』


 私が投げたのは、例のダンジョンで手に入れた光属性の魔石。

 魔力を込めれば光るというランプ代わり程度の効果しかないけど、魔力を込めまくればこんな芸当も可能よ。



「チェックメイト。子供は返してもらうわ」



 閃光が平原を包み、影が消失した。

 潜る影がなくなったことで、強制的に放り出されたシャドー。


 私は混乱しているシャドーに肉薄し、殴りぬいた。

 パンッと。小気味いい音を出してから、シャドーが弾け飛んで消える。


「眩しくしちゃってごめんね」


 私は地面に落下する人質の少女を、衝撃を殺すように丁寧に受け止めた。


「もう襲って来る魔物は……いないようね」


 私は少女を抱きかかえたまま、帝都まで戻った。


 ブレスを吐いていた巨大な蒼い龍はいなくなり、帝都は静まり返っていた。

 もう魔物の気配は感じないけど、あの二人は無事に勝ったのかしら?



 そんなことを考えた時、帝都の上空から大量の魔力反応。

 反射的に空を見上げると、帝都の上空に巨大なモニターが現れていた。


 ……あれは魔法で作ってるみたいね。

 だとしたら、術者の実力はとんでもないわ。

 帝都のどこからでも見えるような超スーパー巨大モニターなんて、とてつもない魔力を消費しないと作れるわけがないもの。



『……ザザ……ザ……』



 モニターからノイズ音が流れる。



 次の瞬間、モニターには一人の男の姿が映った。

 その男の背後には、気絶させられた皇女と――アリアとクララの姿があった。

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