第88話 日本人の仲間ができたぞ
「オーナー、お話があるの」
「ん? なんだ」
撮影会モデルをしているニナが第一リビングでくつろいでいると声をかけてきた。
ニナはライトグリーンの髪でエメラルド色の瞳が綺麗な美少女。
たしか年齢は14歳だと言っていたな。
「あの。紹介したい人がいて」
「おっ、恋人ができたのか? どんな奴だ」
「それが。。。お客さんで。。。」
「お客さんって! ま、まさか、日本人か」
「そうなの」
ニナは撮影会モデルをやっているから、日本人の男と接点がある。
ちゃんと日本人はどんな存在か話してある。
だから、あまり深入りするなよ、と釘を刺しておいたんだが。
「そういえば、毎日のように指名が入っていたな」
「うん。その方なの」
毎日指名してくれて、チップもはずんでくれる。
そのうえ、スイーツなんかも差し入れしてくれる。
「あー。それはだな。単にニナのファンであって」
「すごくやさしいの。ちょっとエッチだけど」
うーむ、どうしたものだろう。
そのままにすることはできないな。
これからも起きうる事態だし。
「まぁ、会ってみるか」
「嬉しい」
抱き着いてきた。
おっ、なかなか胸あるな。
まだニナは14歳だから、本来はこの第一リビングじゃなくて、第二リビングの方だ。
第一リビングは俺も利用するから、成人している15歳以上にしている。
別にエッチなことをしようと思っている訳じゃないけど、よく間違いが起きるから予防のためだ。
15歳以下の女の子とそういうことをするのを自ら制限しているってことだな。
「いつ、会えるのかな」
「今、撮影室で待ってもらってる」
「あ、まだ、撮影時間内なのか」
「そうなの。まだ半分くらいで」
「よし、会おう」
しかし、どうした物かな。
別にニナの父親という訳じゃないから、恋人に会う必要はない気がしてきた。
でも、異世界人と日本人のことだから、俺しか対応できないしな。
「連れて来たわ」
「わ、わたし、二木と申します」
「あー、緊張しなくていいよ。ここのオーナーだ」
おやうく名前を名乗りそうになった。
変に情報を与えると問題になるかもだから気をつけないとな。
「モデルさんに言い寄ったりして、すいませんでした」
「あー、基本的にそういうの管理していないんだよな、うちは」
「そうなんですか? じゃあ自由恋愛してもいいのですか?」
「それはだな」
うーむ、どうしたものか。
見たところ、いかにもオタクって感じの20代半ばの男だな。
小太りでぱっとしない顔だし。
モテないだろうなー。
「ニナとどういう関係になりたいのか?」
「もちろん、責任ある付き合いがしたいです。結婚を意識した関係で」
「もし、結婚したらちゃんと養えるのか?」
「それは大丈夫だと思います。ネットでいろいろやっているから、月収は百万円は超えてますから」
「おおーーー」
なんと。
なかなかのカネづるじゃないか。
ニナ、やったな。
「ならいいか。しかし、外に連れ出すことはできないぞ」
「な、なぜですか?」
「それはな。ニナは異世界人だからだ」
「御冗談を」
だよな。
普通信じないよな。
「ニナ。ちよっと火をつけてみて」
「えっ? あ、はい」
ぽっとニナの指先から小さな火が灯った。
「えっ、それって……」
「そうだ。魔法だ。異世界人だから、このくらいの魔法はできるんだ」
「えっ、異世界人っていうのは、えええーーーー」
異世界の秘密を明かした初めての日本人になったな、こいつは。
頭は良さそうだけど、悪賢くはなさそうだ。
ニナを使って、こいつをうまく利用してみようと思ったのだ。
「ニナは異世界人だから、日本には出れない」
「えっと。すると僕はニナの世界に、うわっ、異世界転生?」
「いや、それは異世界転移だろう。単語はこの際どうでもいいか。ニナも二木くんも、異世界転移はできないんだ」
「じゃあ。ニナと一緒になるには……」
「そういうことだ。無理だな」
「そんな」
二木くんもニナも目に涙をためている。
あー、なんか純愛ぽいな。
「だけど、ここならふたりは一緒にいられるぞ」
「本当ですか?」
「ああ。君たちふたりだけの部屋を用意することもできるぞ」
「ありがとうございます!」
「オーナー、ありがとうっ」
まだ、女の子の部屋が空きがあったから、ひとつくらいは準備することはできるな。
「ただし、交換条件がある」
「どんなことでしょうか?」
「日本での活動の手伝いをして欲しい」
「わかりました!」
おいおい、どんな手伝いなのかを聞かないでいいのか?
まぁ、百均の仕入れやら、精力剤のおっさん集めやら、そんなところだけどな。
「じゃあ、今日はここに泊まっていくか?」
「いいんですか?」
「ああ。まだ使っていない部屋があるしな。これからの話もしよう」
「わかりました」
「ちなみに、ニナはまだ未成年だ」
「もちろん分かっています。無理強いなんてしません」
「あー、日本の法律は関係ないぞ。異世界は成人が15歳でな、それより前にみんなエッチしてるぞ」
「ええーーー、そんな」
「ニナはどうなんだ? したことあるのか?」
「ないもん。ニナ、そんなにエッチじゃないもん」
本当かな?
まぁ、そのあたりはうまくやってもらおう。
どうせ、二木は経験がほとんどなさそうだから、バレっこなさそうだしな。
「だけど、ふたりのことは例外だからな。他の客には黙っているんだぞ」
「もちろん」「もちろん、言いません」
「あと、ニナは他の女の子には、ちゃんと説明すること。真似するのは無しだって」
「わかったわ」
うん、まずはこれでいい。
1室、使えるところが減ってしまったけど、まだ余裕があるしな。
うん、今は二木のことを信じるとするか。
ニナという人質みたいな存在もいるから大丈夫だろう。




