第84話 オヤジの夢で完売御礼だー
「それであれは売ってくれるのか?」
「ごめんなさい。あれは俺の専用でして」
「そんなことを言っても、昨日はひとつくれたじゃないか」
翌日もハプニングバーに行ったら、オヤジが待ち伏せしていた。
別の若い女性と一緒に。
「パパが言っていたの、この人なんだ」
「そうだ。すごい精力剤を持っていてな」
「へぇ、それ楽しみ」
しかし、このオヤジ、気持ちだけは元気らしいな。
何人のパパになっているんだ?
「それに、あれ。すごく手に入れづらいものでして」
「そこをなんとか」
「1箱5つ入りで10万円ですよ」
「安い!買った!!」
「だから。俺だと売れないんです。ある場所じゃないと入手できません」
「それはどこだ?」
そんなやり取りの後。
俺の裏ショップに連れていくことになった。
ここで売ってしまうと転売扱いだから、NGになる。
ちゃんと狭間エリアの店で買ってもらわないとな。
このオヤジだけと思っていたら、他に3人の男達がついてきた。
年齢はオヤジと似たようなとこ。
「そんなにすごい精力剤なら欲しいぞ」
「10万円で20代の頃に戻れるなら」
「いや、20代どころか、見たことがない絶倫さだったぞ」
あ、そういえば一番最初に除き穴にとりついたのがこいつだったな。
興味津々って感じで。
結局、オヤジ4人衆をつれてハプニングバーから10分くらい歩いたとこにある俺の裏ショップについた。
誰も通らなさそうな路地のはずれの塀に扉を付けてある。
「いらつしゃいませ」
「おーい、少女じゃないか。本当にここか?」
店番はジョゼにやってもらっている。
15歳の異世界少女の登場に面食らっているオヤジ4人衆。
「ここです。例の物を出して」
「はい。ひと箱5つ入りです。1日1つまで。それ以上はヤバイから」
「ひとつでも、ヤバイくらいに効いたぞ」
「はい、1箱10万円です」
「おう」
「はい、あと。これをだれかに売ってはいけません。プレゼントする分にはかまいません」
「売るとどうなるのかは?」
「この店に入れなくなります」
「それは困るな。分かった。自分の分だけにしておこう」
全部で6つ売れた。
これでなんと60万円の売り上げだ。
精力剤は異世界ではそれほど珍しいものではなく、1つ大銅貨3枚で手にはいる。
5個に箱もつけて銀貨2枚が仕入れ代だ。
それが10万円に化けるんだから、すごいな。
「この店は毎日やっているのか?」
「えっと」
「毎週月曜日、午後8時から9時が営業時間だ」
「はい、そうです」
「他の友人を連れてきてもいいのか?」
「はい。売切れていなかったら、大丈夫ですよ」
「そうか。売切れるかもしれないのか。そうだよな」
たぶん、このオヤジ。
来週月曜日の午後8時前に来そうだな。
きっと、似たような刺激がいるオヤジの友達が多いんだろう。
「だけど、お前。こんな商売をして親に怒られないのか?」
おっと、説教モードに入ったのか?
面倒くさいオヤジだな。
「えっと。親はいなくて…」
そんなことはないだろう。
ちゃんと仕送りしていると言ってなかったか?
「そ、そうか。ごめんな。余計なことを聞いてしまって」
反省したオヤジ、ジョゼにお札を握らせているぞ。
ちらっと見えたのは、5千円札だ。
やるな、ジョゼ。
そんな技、いつの間に覚えたんだ。
「ありがとうございました」
オヤジ達4人はわいわい騒ぎながら帰っていった。




