第77話 ロングソード、売り切れ!
「金貨10枚の鋼鉄ロングソード売ってくれ!」
「すいません。売り切れです」
「なんだと! もうないのか?」
「今あるのは、ロングソード・ホワイトとロングソード・ブルーです」
「じゃあ、それをくれ」
「ホワイトが金貨40枚、ブルーが金貨60枚です」
「なんだと!」
うーん、参ったな。
今朝、売り出した全鋼鉄製のロングソードは10本とも売切れてしまった。
副ギルマスの使者の彼にこそっと教えたら、冒険者ギルドで大々的に告知があったようだ。
「例の偽物ショップに金貨10枚の鋼鉄ロングソードが入荷するらしいが、もちろん偽物である。間違っても手を出してはいけないぞ」
ベテラン冒険者のうち、剣士をしている人達が大挙して店にやってきて剣を買っていった。
さすがにホワイトとブルーは買えないみたいだけどね。
しかし、お昼過ぎになると副ギルマスの使者がロングソード・ブルーを金貨60枚で買っていった。
なんでも、高価な偽物を間違って買ってしまう冒険者がでないように予防的に副ギルマスが買い取ることにしたらしい。
副ギルマスは現役引退しているはずなんだけどな。
高価な剣などいらないと思うんだが……単なるコレクションか?
ついでに魔法の本やら冒険者用グッズが一緒に売れたから今日の売り上げは過去最高になるはずだ。
金貨で200枚まではいかないだろうけど、それに近いくらいになりそうだ。
冒険者が剣を買いに来たからいろんな噂をしていった。
ひとつはオーク肉の買い取り価格が上がっているみたいだ。
元々、オークは戦闘力が高い魔物だから、それほど討伐数が多くない。
オーク肉は一部の愛好家がいて確実に売れる物だったが、その相場が高くなっているらしい。
別の街の商人が大量に買い取りしていると噂されているが、事実はどうか誰も分からない。
逆に相場が下がっているのが鋼鉄インゴット。
鍛冶屋が別のルートで鋼鉄を手に入れられるようになったんじゃないか。
そんな噂がとんでいる。
オーク肉が高くなっているのは、ちょっと困るがまぁ、まだ30%上がっただけだ。
まだまだ、許容範囲のうちだな。
ロングソードはアトリエ・シュミットに増産を頼んでおいた。
週に10本なら対応できるそうだ。
もっとも、他のアトリエから鍛冶職人を動員しての生産になるらしい。
まぁ、あの親方のことだから品質の低い剣を出荷することもないだろうと思う。
これからはそんなに大量には売れないだろうが、うちのメイン商品のひとつになるのは確実だな。
日本の鋼鉄は優秀みたいだね。




