第69話 女の子の部屋を訪問してみた
オーク太郎ラーメンの店長に抜擢予定のピンク髪少女。
名前はジョゼ。
まぁ、俺がスラム入口で拾った女の子であり、俺の素人童貞を捨てた相手だな。
そのジョゼからご招待が来た。
今は狭間エリアにある女子2号室で寝起きをしている。
女子2号室は15歳と16歳の女の子が5人入っている。
今の時間は夜の7時くらいだから仕事が終わっているし、まだ起きているだろうから5人揃っているのかな。
だけど、女の子だけの部屋にお邪魔するのは、ドキドキするな。
部屋の大家さんは俺だけどね。
女子2号室へは俺のプライベートエリアから新たに作ったドアから廊下を通っていく。
部屋のドアをノックして声を掛ける。
「こんばんは」
うーん、なんの工夫もない声掛けだな。
どう言ったらいいか、全然思いつかないしな。
「はーい」
ジョゼの声がして、ドアが開いた。
ダブルベッドが2つも入っているから、部屋が狭いな。
ふたつのベッドをソファーみたいにして、間に小さなテーブルが置いてある。
そこには、ティーセットがあり、ちょっとお菓子が置いてある。
俺というお客さんを迎えるために用意したみたいだな。
「今日はお招きありがとう」
「ううん。いつもお世話になっているから、私達」
うん、みんなおめかししているね。
さすがにコスプレをしている子はいないけど、古着でかわいいのをみつけて買った子が多いんだろう。
ちなみに、ジョゼ以外の4人は、メイドと1号店の店員、撮影会のモデルがひとりづつ。
ジョゼともうひとりは、まだ仕事に入っていない。
ジョゼがオーク太郎ラーメン店の店長で、もうひとりが店員になる予定で、二人ともラーメン作りの指導を食堂のおばちゃんから受けている。
「まずはお茶どうぞ」
「これって、どういうお茶なのかな?」
お茶というと、紅茶だと思うのは異世界じゃ常識じゃない。
いろんな植物をお茶として利用している。
「これは甘茶。ガクアジサイの一種の葉っぱで作るの」
「ほう」
まるで玉露のような黄色とオレンジの間の色をしている。
一口含むと甘い。
「ほう、甘いな」
「でしょ。だから、私好きなの」
たぶん砂糖は入れてないな。
元々、甘茶と言う名前の通り、元々甘い味がするのだろう。
「おいしいな」
「よかった」
お茶の甘味より、もっと気になっていることがある。
部屋に充満している甘い匂い。
たぶん、少女たちの身体が発する匂いなのだろう。
あ、やばい。
身体の一部が熱くなってきた。
ジョゼは俺の右に座って、左にひとり、対面に3人座っている。
ジョゼがぴたっと身体をくっつけてくる。
おいおい、みんなの前で何をするかな。
「あのね。みんな、ヒロには感謝しているの」
「そうなのか」
この女子部屋にいる子達には、とりあえず1日大銅貨1枚の日当を出している。
仕事とは別の基本賃金みたいな物だな。
その中から、みんなでお金を出し合って食材を買って毎日のご飯を一緒作って食べている。
部屋代はないから、大銅貨1枚でも十分足りているはずだ。
仕事をすると、それぞれ追加の賃金が出るから、それは親に仕送りしたり欲しい物を買ったりしている。
「だって。食べる物も満足になかった暮らしだったんだもん。特に私はね」
うん、拾ったときは本当にお腹を空かせていたな。
3日くらい食べていなかったと言ってたな。
「仕事も用意してくれるし、ここにいるだけで日当も出るし」
いやぁー、かわいい子がいるっていうのは価値があることなんだぞ。
こんなにかわいい子がいるガールズバーで5人も指名したら、いくら取られるか分かったもんじゃない。
「私達って幸せになっていいってこと、ここに来て初めて実感したの。ありがとうっ」
「ありがとう、ヒロさん」「ありがとう」「ヒロさんに会えてよかった」「ありがとーーー」
うーん、カワイイ女の子に一気に感謝されるなんて。
初めての経験だぜ、癖になりそうだ。
「他の部屋の子も、みんな感謝しているって。私がヒロさんを部屋に招待するって話をしたら、みんないいなぁーって」
幸せだなぁー、なんか。
異世界に来て、いろいろとしてお金を稼いだ。
ふたつの世界の技術差がすごいから、そこを利用して金貨を稼ぐ。
最初は何も分からないから苦労したが、だんだんと分かってきて楽に稼げるようになった。
元世界の商品を仕入れられるのは俺だけというチート持ちだからな。
ただ、稼ぐのはいいが、使い道がいまいちわからない。
まぁ、娼館に行ったり美味い物を食ったり。
そこまでは欲望のままにできた。
その後が続かない。
どんなに異世界的には価値があるものであっても、元世界を知っている俺にとってそれほど魅力的には思えない。
いくら高級な食事だと言っても、単に肉料理が数あるだけに感じてしまう。
元世界の繊細さは存在していない。
元々、太郎系ラーメンのようながっつり系が好きな俺だ。
異世界においても、それほど高級な物ではなく、普通に屋台の肉串が美味いと感じてしまう。
女遊び以外は、異世界で金を使う楽しさは感じられていなかった。
しかし、スラムのことを知ってから金の使い方が変わった。
スラムの人達がひどい扱いを受けていて、なんとかしてあげたいと思う。
もちろん、スラムの人全員なんて大それたことはできやしない。
でも、知り合ったかわいい女の子だけでもいいじゃないか。
ちゃんとした生活の元を用意してあげる。
ちょうど、異世界ビジネスが広がってきて人手が必要となってきたところだ。
金もあるし、やってみたいこともある。
そこにスラムの女の子達を活用できるようにした。
そしたら、感謝されてしまった。
それも改まって。
こういうのを幸せって言うのかな。
いや、幸せじゃなくて、仕合せ(しあわせ)の方だな。
幸せって字は、中国から伝わってきた感じで、手かせ足かせからの解放という絵が字の源になっている。
中国においては奴隷からの解放が幸せだった。
しかし、日本古来の仕合せは違う。
することを合わせる。
みんながひとつの方向へ向かう。
仕合せる。
それが仕合せの語源だという。
今、俺がやっているのは、それかもな。
スラムの人達と一緒にビジネスをする。
そして、一緒に美味い物を食えるようになる。
それができたとき、仕合せになれる気がする。
最初は身近な人達を仕合せにする。
それが広がって、もっと多くの人が仕合せになる。
女の子たちから感謝されて、俺は本当に仕合せを感じることができた。
「私達、どうやってヒロに感謝の気持ちを伝えたらいいか、考えたの」
「ああ。しっかり言葉にしてくれてありがとうな。すごく感謝の気持ちが伝わってきたぞ」
「ううん、言葉だけじゃ足りないわ。もっと、伝わる形で伝えたいの」
「ん? それは……」
おいおい、なんで抱き着いてくるんだよ。
みんなの前だぞ。
えっ、左の娘もかっ。
あっ、対面の3人も近づいてきた。
もしかして…。
異世界の性モラルは元世界と全然違うんだった。
15歳にもなれば、ほとんど経験済みで結婚とかそういうのがあいまいだった。
「結婚の約束をしてくれないと」
そんな考え方はないらしいしな。
だいたい、恋人っていうのもあいまいな関係らしい。
お金持ちは、恋人と奥さんも何人もいるのが当たり前。
そんなモラルのとこだった。
当然、感謝の気持ちは身体で表す。
そういう展開をちゃんと想定しておくべきだった。
部屋に入ったときから女の子特有の甘い匂いでムラムラしていて俺は、15歳くらいの可愛い女の子5人にすりすりされて、理性が保てなくなってしまった。
あー、そうだよ。
ハーレム遊びしちゃったよ。
思いっきりな。
翌朝、女の子の部屋で目覚めた俺は。
反省しまくった。
だけどな。
満足そうに寝ている女の子達をみて、考えた。
「これもありかもしれないな」
感謝の気持ちを受け取ってもらえないっていうのは、辛いかもな。
今彼女たちが分かりやすく感謝を示すなら、やっぱりこの形になるしかない。
そう思うと、これがスラムとの異文化交流の形なのかもしれないな、と。
元世界のモラルを持ち出して、それを否定する俺の方が器が小さいんじゃないか。
そう思ってしまった。
もちろん、頭の片隅で。性欲に負けているぞーって、騒いでいる奴もいるけどな。
どうみても、声が小さいから無視でいいだろう。
いつの間にハーレムが!




