第64話 冒険者ギルトで禁書が宣伝された?
「あー。今日集まってもらったのは、他でもない」
冒険者ギルドのギルマスが連絡事項があると、集めた冒険者。
初心者からベテランまで総勢300名。
「禁書の話だ」
あー、あの本の話だな。
しかし、ギルマスもわざわざ、そんな話のために冒険者を集めるとは。
もっとも、話すのは下手だから、檀上にいるのは副ギルマスだな。
「最近、偽魔法の本が流通していると聞く」
偽って言っても、ちゃんと効果がある内容が書いてあるのは俺もそうだが、魔法職をメインとしている奴らはみんな言っているぞ。
「中級魔法、火魔法、風魔法、水魔法。そして新しく土魔法も出たらしいぞ」
おっ、土魔法が出たのか。
それはいい話を聞いた。
「間違っても、買いに行ったりしないようにな」
あー、気を付けないとな。
これが終わったら、早速いこうと思ってしまったからな。
「もし、禁書を持っているのをみつけたら、没収の上、金貨1枚の罰金だ」
それは気をつけないとな。
他の奴に見られないようにしないとまずいってことだな。
「もし、持っているのをみかけたら、ギルマスまで連絡してくれ。これが本物で、これが偽物だ」
おー、副ギルマスが持っているじゃないか。
没収したってことかな。
「もうひとつ、これは嬉しいお知らせだ」
おっ、なんだ?
「本物の魔法の本が冒険者ギルドでも買えるようになった」
えっ、そうなのか。しかし、高いんだろうな。
「中級魔法の本で金貨10枚だ」
やっぱり、高いな。
それだけ貯めるには、いくつ依頼をこなせばいけないのか?
「いいか、こっちの偽本は金貨1枚だ。やすいからと言って騙されるなよ」
おいおい、副ギルマスよ。
本当にあの本を買うのを止めているのか?
なんだか、勧めているように見えるぞ。
「特に、市民区のこのあたり。この偽本を売っている店があるから気をつけるように」
やっぱりそうだな。
副ギルマスは、宣伝しているだろう、偽本の。
後ろにいるギルマスはどう思っているのか?
確認してみたら、うなづきながら副ギルマスの話を聞いている。
あ、宣伝していると気づいてないようだな。
「魔法は我流で出来るのには、限界がある」
そりゃ、そうだ。
中級魔法の本を読んだとき、驚いたからな。
俺が苦労して身に着けたことが、全部書いてあったんだからな。
あ、偽本の方にな。
「だから、ちゃんとした本で勉強をすることを勧めるぞ、金貨1枚の偽本ではなく金貨10枚の本物の本だな」
完全に金貨1枚の方を勧めてやがるな。
金貨10枚の方を買う奴がいるとは思えない。
「比べてみればわかるように、偽本はぺらぺらだ。本の重さも、ほら、こんな軽い」
冒険者にとって軽いというのはすごい良い特徴なんだがな。
とにかく移動が多い冒険者にとって、同じ内容なら軽い方が絶対便利だ。
「すかすかだから軽いんだ。ページ数が同じにもかかわらずにだ」
内容が同じで軽いって言ってるよな。
もちろん、値段が全然違うしな。
「本を手に入れて正しい魔法を使うことをお勧めする」
うーん。やっぱり、土魔法の本を買いに行こう。
これが終わったらな。
☆ ☆ ☆
「すいません。魔法の本はすべて売り切れです」
「なんだと! もうないというのか?」
「いやぁ、なぜか冒険者の方がたくさん魔法の本を買いにきまして」
「あー、出遅れたか」
「なぜ、冒険者の方がうちにやってきたのか、分かりませんか?」
とりあえず、今日の朝ミーティングの話をしてあげた。
納得していたな。
副ギルマスによろしく言って欲しいと言われてしまった。
うーむ。どうよろしく言ったらいいのだろう。
禁書指定をありがとうございます、と言ってましたってか?
「明日なら土魔法の本が入りますので、取り置きしておきますね」
「ああ。明日中にかならず来るから頼んだぞ」
「分かりました」
なんだかんだで、この店は流行るようだな。




