第55話 スラムの服向上計画
「しかし、いつも似たような服を着ているな」
「まあ。服なんて、そんなにもってないからしょうがないよ」
まぁ、青髪少年は男だからいいが、女の子達は気になるな。
せっかく、美少女なのに来ている服はみんな生成りというのかな。
素材の色、そのままだ。
そのうえ、あちこち穴があいていたり、つぎばぎしてあったり。
せっかくの美少女がもったいない。
撮影会のときは、下着まで含めてコスプレ衣装を貸し出すから問題ないが、普段着はなんとも寂しい限り。
「だけどさ。服って高いんだよ。このシャツだって3か月前に古着で買ったんだけど、銀貨1枚もするんだ」
「そんなにするのか!」
どうみても、日本なら新品でも1000円くらいだろう。
自然素材、手作りだとすると高いが、それが当たり前の世界だからな。
日本の安い服屋で大量に仕入れてきて、こっちで売れば売れそうだな。
しかし、残念ながら百均だと碌な服がない。
そのうえ、100円ではなく300円とかするし。
「うーん。もっと安い服はないか」
そんなことをなんとなく考えていた。
そしたら、数少ない友人が面白い話を持ってきた。
☆ ☆ ☆
「古着の転売しないか?」
そいつは高校からの友人で、今はサラリーマンをしながら、副業と称していろんなビジネスをしている。
いや、正しく言うと副業とか起業とか言いながら、訳も分からないセミナーに出て一攫千金を狙っている。
しかし、いままでいろんなビジネスの話をしているが、うまくいったという話はないな。
高い金払ってセミナーに出て、結局は損ばかりしている。
それでもめげずに新しいビジネスの話を聞くとセミナーに参加してしまう。
そんな奴だ。
それでも話が面白いから、年に何回は一緒に酒を飲む数少ない友人のひとりだ。
「今度はな、古着の転売ビジネスだ」
話を聞くとなかなか面白い。
セミナーを企画している講師がコンテナ単位で古着を輸入するそうだ。
それを仕分けして、オークションやフリマアプリで転売する。
そうすると、大儲けできると言うんだ。
「本当かよ。その話。古着だろう? どうせ着られなくなったのを回収したものだろう」
「いや、それがな。中にはビンテージ物が混じっているそうだ。1枚で10万円もするジーンズも入っていることもあるそうだ」
うーむ、嘘っぽい。
どうも信じることができないな。
だけど……そう、あっちだったら、どうだろう。
どんなに人気のない服、ボロボロの服であっても。
古着でも銀貨1枚もするところ。
それも染料が高いから色付きの服など、高級品扱いだ。
間違いなく転売すれば、利益はでるだろう。
「で、その古着いくらするんだ」
「おっ、一緒にやるか? コツはな未整理の物を買うことだ」
「未整理?」
「古着は今、世界からバングラディシュに集まってくる。バングラディッシュで仕分けして世界に送られるんだ」
仕分けされた古着は品質が安定して、日本でも古着屋が買う。
しかし、それではお宝品が手に入らない。
仕分けするときに、全部抜かれてしまうそうだ。
「だから、未整理品なんだよ。で、今、その未整理品コンテナ1つ分。倉庫にあるそうだ」
40フィートコンテナ、約12mもある巨大コンテナ一つ分。
重さにして30トン。
世界中で回収させた古着がそれだけある。
「おいおい、さすがにそんなに大量の古着。どうしようもないだろう」
「だから、それを転売する人に安く分けてくれるというんだ」
45㎏がひとつの単位で1ベールと言うらしい。
圧縮してあるからそれほど大きくない。
「それがなんと、東京なら送料込みで6000円で手に入るんだぞ!」
「それって、何枚くらい入っているものなんだ?」
「まぁ、服の種類によってさまざまだな。ざっと言って、1㎏で3枚くらいだな」
すると45㎏で135枚か。
それが6000円なのか。
「だが、ちょっと問題があってな」
「どんな?」
「もし、転売できない古着だとゴミに出すしかなくてな」
「あっ!」
それはいいかも。
こいつが価値があると思う物を抜いた後の古着。
それを買えばもっと安く手に入るんじゃないか。
「それなら、転売できない服を安く買おうか?」
「おいおい、そんなの買ってどうするんだよ」
「それは内緒だ。そうだな、1㎏50円でどうだ?」
「おー、それはいいな。その代わり、良さげな古着はみんな抜くぞ」
「もちろん、それでいいぞ」
さっそく、次の日曜日までに5ベールほど買うらしい。
3万円か…そのうち8割くらいはこっちに来そうだな。
180㎏で9000円か、悪くないな。
あー、こんなことを書いたのが去年あたり。
実際に転売を体験してみたくで、ヤフオクで買ってメルカリで売るって転売をやってみた。
そしたら、実際に廻りはじめて。
転売屋になってしまった。
それがこのお話が更新ストップした原因なんです。はい。




