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第53話 魔法使いギルドに目をつけられたらしい

「ほう。金貨1枚で魔法の本を売っていると?」

「はい。これなんですが」


ラックス商会の番頭が持ち込んだのは、中級魔法の本。

それも神紙と呼ばれている物を使った本だ。


「ほう、不思議な紙を使っているな。西方の国に作られている紙のようだな」

「さすが、魔法ギルドのギルマスですな」

「まぁ、我々魔法ギルドは知識に関する専門家でもあるからな。知識を伝達する紙にも詳しいぞ」


しかし、そんな遠方の国が作った紙を使って作るのでは紙代だけで金貨1枚を超えてしまうのではないか。

そのあたりは、ギルマスはどう判断するのか。


「内容は我々が売っている中級魔法の本と一緒だな」

「やはりそうですか。すると、別の紙に内容だけを写していると?」

「だが。魔法文字をここまで正確に書ける物はそこそこの魔法の知識を持つ者だろう」

「すると、魔法ギルドのメンバーもかかわっていると?」


ギルマスは何か考えるようにしている。

何か思いついたように、話出す。


「ひとり心当たりがある」

「ほう。誰でしょう」

「ルモンドという上級魔法使いでな。3年前まで魔法ギルドに所属しておったが、派閥争いに負けて脱退した奴だ」

「ああ。負け犬ってことですね」

「いや。派閥争いには負けたが、奴が主張していた魔法をオープンにするという考えは今でも実践していると聞いている」


要はギルドを飛び出して、独立して行動しているというのか。

それは相当きついことになっていそうだ。


「そいつが作った魔法の本と考えていいのでしょうか」

「奴がかかわっているのは間違いない。市民権のない冒険者にも系統だった魔法の知識をと言っておったからな」

「あ、それなら話がつながります。この魔法の本を売っている店は、冒険者の利用も多いらしいですから」


元々は娼館の女だけだったのが、最近では冒険者、さらには普通の市民にも利用者がいるらしい。

間違いなく、いまのうちに潰しておかねば、先々に面倒なことになるはずだ。


「まずは冒険者ギルドに圧力をかけるとするか」

「おー、そんなことができるのですか?」

「この魔法の本は魔法ギルドが承認していないモグリの品だ。とうぜん、それで学んだ魔法がどんなことを引き起こすのか、分からないからな」

「それはそうでしょう。ああいう、訳が分からない奴らがやることは、早目につぶす必要がありますな」


うん、いい感じだ。

冒険者ギルドと魔法ギルドの両方があの店を非公認の店だと糾弾したら、冒険者も市民も近寄らなくなろう。

せいぜい娼婦くらいしかいかない店。


そのくらいがあの店に合った生き方だろう。


「では。そうのように願います」

「分かった。しかし、根回しをするにしてもいろいろと物入りだな」

「分かっていますって。これは珍しい菓子です。お納めください」

「おー、菓子か。ずっしりと重い菓子は好きだぞ」

「そうでしょう。そうでしょう。今回は特にずっしりとさせていただきました」


よし、これでいいだろう。

あの店は長くないな。


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