第49話 大きな問題が起きてしまった
「うーむ。このままじゃ、すぐに足りなくなるな」
俺は残高が少なっている通帳を見て憂鬱になった。
最近は店の売上が順調で、毎日金貨数枚になる。
だけど、それが問題につながる。
売上を上げるためには、仕入れをしなければならず、日本円が必要だ。
商品はほとんどが百均で仕入れているのだが、1日で300個とか買ってくるためガンガンにお金が出ていく。
異世界のお金は溜まる一方だが、日本円は減る一方だ。
「なんとかして、異世界の商品を日本円に替える方法を考えないとな」
まず考えたのが、金貨の換金だ。
異世界の金貨はだいたい直径2センチで10gくらい。
大きさは500円玉より小さいが、金の方が比重が重いから重さは500円玉より重い。
この金貨にどのくらいの金が含まれているか分からないが、半分ということはないだろう。
仮に6割として、金6gの現代の価値は、1gが6千円くらいだと言うから3万円以上になるだろう。
300枚ほどある金貨のうち、3枚を売りに出すことを考えた。
ただし、見たこともない金貨が沢山出てくると怪しまれるかもしれない。
だから、まずは3枚だけにする。
「金の買い取りショップはあるけど、それは難しそうだ」
日本の商品を異世界で売ることは禁じられている。
異世界の商品を日本で売ることも禁じられているようだ。
だから、金貨を売るなら店舗じゃなくて出張買取をしてくれるところにしないとな。
ネットで探せば、金貨の出張買取をしてくれるところは簡単に見つかる。
ただ、今の俺には住所がないから、ちょっと難しいところだな。
いつも利用した公園で待ち合わせを認めてくれる店を探したら、電話した3軒のうち1件だけオッケーだった。
「ここでして」
「これって、公園の倉庫じゃないですか?」
「あー、俺が借りていてな」
「そうですか」
どこに住んでいるかは、あまり興味がないようだ。
それよりどんな金貨かが気になっているのだろう。
ここは狭間の部屋に6畳間くらいの部屋を作った物。
テーブルとイス2つしかない部屋だけど、金貨の取引なら余裕だな。
「これなんだが」
「ほう。見たこともない金貨ですな」
「まぁ、歴史的な価値がある物ではないと思うが」
「それは調べてみないと無理ですな」
調べても分からないだろうな。
そっちの価値でなくて金自体の価値を知りたいのだ。
「金の地金としてなら、ここでも調べることはできますが、どうしてますか?」
「それなら、地金としての価値で買い取ってくれればいい」
「分かりました」
なにやら道具を取り出して、比重や硬度をしらべている。
何をしているのかはよく分からないが。
「なかなか純度が高めですね。90%くらいの物でしょう」
「それなら、買い取り価格はいくらになるのすか?」
「手数料を引きまして、ざっと、4万5千円になります」
「売りましょう」
3枚すべて調べてもらったら、14万円ちょっとになった。
うん、いい感じだ。
現金で買い取りしてもらって、金貨を3枚渡す。
よし、これで日本と異世界のお金が交換できるようになるぞ。
「それじゃ、これで」
「また、頼むかもしれないからよろしくな」
「はい。店に戻って精密に調べたら、次はもう少し高く買えるかもしれません」
「よろしくな」
買い取り屋は帰って行った…と言いたいところだが。
「あれ?」
「どうした?」
「扉が開かないんです」
「えっ」
なぜ、開かない?
もしかして…
「ちょっと聞きたいんだが。その金貨は、このあとどうなる予定だ?」
「地金として再利用する予定ですが?」
「具体的には?」
「まずは溶かして金だけを分離して、市場に出す予定です」
あー、やっぱり。
それだと、転売扱いになるのか。
自分が使う訳ではないからな。
「あ。すいません。やっぱり、辞めます」
「えっ、なんででしょう?」
説明しても理解してもらえそうもないから、もらった現金を返して金貨を取り戻す。
無理やり扉かせ外に出す。
「ちょっと待ってくださいよ」
混乱しているようだが、気にせずカギをかけておいた。
うーむ、金貨買い取りでは駄目らしい。
この失敗を元に考えたのは、異世界の物で日本人が欲しがる物を探すこと。
もちろん、科学的、技術的には中世の物は日本では価値がない。
しかし、アンティークな物としては価値を認めてくれる人がいるんじゃないか。
昭和の古い物でも、昭和レトロとしてネットで売れている。
異世界の物を中世ヨーロッパのアンティークと言えば欲しがる人はいるんじゃないか。
俺はそう考えて、ネットでアンティークショップを開くことにした。
ただし、通販は不可で店まで取りに来てもらえる人、限定で。




