第47話 計算スキルがこんなに低いとは
「大銅貨2枚と銅貨4枚になります」
「銀貨でいいか」
「はい。まずは銅貨4枚、5、6、7、8、9、10。これで大銅貨3枚です。4、5、6、7、8、9、10。銀貨1枚です」
「おう。いいよ」
「毎度ありがとうです」
最近、店番を頼むことが多くなった青髪少年。
たまたま、見ていたら不思議なおつりの渡し方をしている。
「おい、なんでそんな面倒なやり方をするんだ?」
「えっ、何が?」
「銀貨1枚で大銅貨2枚と銅貨4枚の物を買ったらおつりは大銅貨7枚と銅貨6枚だよな」
「えっ、どうして、それが分かるの?」
話をしていて分かったこと。
青髪少年は足し算はできるが、引き算ができないってこと。
「じゃあ、掛け算と割り算は?」
「掛け算ってあれですよね。同じ商品を何個買ったって」
「そういう」
あ、やっぱりだな。
掛け算は指を使って、何回も足している。
うーむ、間違いそうで怖いな。
そんなことが昨日あって。
今日用意してきた物。
太陽電池付きの電卓。
これなら、使い方を教えれば青髪少年だって、相当レベルの計算ができるはずだ。
「まずな。銀貨は100で、大銅貨が10、銅貨は1だ」
「えっと、はい」
「おつりを計算するには、この『-』を使う」
「あ、はい」
最初は電卓がどんな物なのか。
全く理解しなかった。
引き算を教えようとしたら、混乱したから足し算から教えてみた。
「たとえば、銅貨3枚のりんごと銅貨2枚のみかんがある」
実際にリンゴとみかんを用意して説明してみた。
うちの商品だと高すぎるから安い果物で説明してみる。
「それだと、銅貨5枚だね」
「そうだ。これは指で計算できるな」
「はい」
「で、これを使うときは、まずリンゴの3を入れて『+』を押す。で、みかんの2を入れて『=』だ」
「あっ、5って出ました! リンゴとみかんで銅貨5枚ってこと?」
「そうだ」
うん、やっと電卓の機能を分かってくれたらしい。
これは何かと聞かれたから答えたよ。
魔導計算機だってね。
なんでも魔導をつけるとそういうものだと思ってくれて便利だ。
「すごい。いっぱつでおつりが出た!」
その後も、電卓の使い方を教えていると、いちいちびっくりしてくれる。
なんか、楽しいな。
しかしまぁ。
太陽電池の電卓も100円なのはびっくりだな。
手のひらサイズだけど、モノトーンでおしゃれなのが。
引き算ができない青髪少年に引き算教えるより、
ずっと早いな。
「よし。店番をするときは、これを使え。おまえ専用だ」
「本当? これ僕の?」
「貸すだけだぞ。肌身離さず持っているんだぞ」
「はいっ。絶対無くしません!」
「それはな。金貨20枚もする物なんだからな」
「!」
嘘です。
100円です。
だけど、50年前くらい最初の電卓はすごく大きくて何十万円もしたはず。
こっちの世界じゃ、間違いなくオーバーテクノロジーだから金貨20枚くらいの価値はあるな。
「よし、俺は出かけるから、後は頼んだぞ」
さて、今日はどこへ行こうかな。
ソフィのとこがいいかな。
それともミッシェル?
新しいところを開拓するのもいいかもな。




