第45話 魔導書は転売禁止!
「できているか?」
「もちろんです」
俺は印刷が終わったコピー用紙をどん、と机の上に置いた。
40枚の束が10束で400枚。
コピー用紙40枚を半分に折り、裏表に印刷してあるから全部で160ページになる。
元になった羊皮紙の魔導書も持ってくる。
「なんと。もう10冊分の中級魔導書ができてしまったということか」
「ええ。魔導転写機を使えば、簡単です」
本当のことを言うと、スキャンしたデータは残っているから、いくらでもコピーができてしまう。
さすがに、そんなことをする気はないがな。
「金貨1枚と銀貨6枚になります」
「驚くほど安いな。ほれ、色をつけて金貨2枚だ」
「ありがとうございます」
魔導士ルモンドはすごく喜んでいるな。
弟子に安く分けてあげるらしい。
「また、別の本を頼むかもしれないがよろしくな」
「もちろんですとも」
そういうと、紙の束を大切そうにバッグに詰めて店を出ていく。
「ん?」
「どうしました?」
「でれないのだが……」
「ん? あーー」
しまった。
この形ではルモンドが弟子に売ると言う形になってしまう。
つまり、転売だ。
コピー用紙が大丈夫だったから、これも大丈夫だと思い込んでいた。
参った!
「すいません。この店の商品は転売が禁止でして」
「どういうことか?」
謝罪をしながら、説明をする。
ルモンドは理解が早いタイプのようで、すぐに納得してくれた。
「しかし、困ったの。どうしたらいいのか?」
「えっと。お弟子さんがこの店に買いに来る形になれば問題はないんですが」
青髪少年がやっているように、お客さんを連れてきてマージンを払うのは問題がない。
青髪少年が商品を持っていお客さんに売るのだと転売扱いになってしまう。
それと同じだな。
「ならば、この店に預ける形ではどうか」
「委託販売ということですね」
「そうなるな。販売手数料は1割でどうだ」
「あ、なるほど。それなら大丈夫かと思います」
聞いてみたら、中級魔導書は金貨1枚で売るつもりだったらしい。
委託販売も金貨1枚で決まった。
10冊全部うれば、手数料として金貨1枚になる。
「なに、今日中に皆、買いにくるから大した手間もなかろう」
「分かりました。よろしくお願いします」
ルモンドが帰ってから、すぐに若い魔導士が何人もやってきた。
中級魔導書だけでなく、店の商品に興味を持って別の物も買っていく。
おかげで、この日の売り上げはいつもより多くなった。




