第36話 なぜがすごい男になったらしい
「ダーリン」
「なんだい? ハニー」
スラムを出て、ホテルに向かっている。
ソフィさんがラブラブモードになっている。
あれ、発情中とか?
「大好き。ちゅ」
「おいおい、こんなことで」
「駄目?」
「駄目じゃないっ」
傍目を気にせずラブラブしている。
あ、冒険者ぽい少年がじとーーっという目で見ている。
きっと、「リア充爆ぜろ」って思っているはずだ。
「どうしたんだ? すごく積極的じゃない」
「だって。すごくうれしかったんだもん」
「何が?」
スラムの食堂が高級レストランに勝つ。
たしかに痛快だよな。
「あのね。スラムを出て、成功するのって大変なの」
「まぁー、そうだろうな」
なんとなく変わる。
日本だって、平等って言っていても実際には差別みたいな物がある。
堂々と差別がまかり通るこの街だと、スラム出身ってだけで差別がすごそうだ。
「私みたいな仕事、冒険者、そうして料理人。このくらいね、スラム出身者でも実力で成功できる可能性があるのは」
「料理人もそうなんだ」
「うん。中にはレストランのオーナーシェフになったスラム出身者もいるわ」
料理人は最後は「美味いが正義」だからな。
どんなに偉そうなことを言っていても、美味くない料理では勝てやしない。
「だけどね。ほとんどのスラム出身者は下働きで使い潰されてしまうの」
「使い潰される?」
「そう。ずっと下働きの安い給料でこき使われて。五感や手足が弱ったらポイ。そんな料理人とも言えない一生を過ごしたスラム出身者が多いの」
「差別か」
「それと経験ね。おいしい物を食べる経験なんて生まれてからほとんどしたことがない」
「だけど、レストランなら残り物とかで、味見くらいできるだろう」
「無理よ。下働きは別の倉庫みたいな場所で働かされているの。出来上がった料理なんて味見はおろか見たことがない人だっているわ」
「うーむ」
この街では差別がおおっぴらに徹底的にされているみたいだな。
よっぽど運が良くなれば、スラム出身者にチャンスなんて訪れない。
チャンスの女神は前髪しかないって、ことわざがあるけど。
日本なら前髪があるだけましだな。
ここではスキンヘッドらしいな。
「それなのに、スラムの小さな食堂のおばさんが、高級レストランのシェフをぎゃふんを言わせてた」
「そうだね」
「あれって、ダーリンの力よね。どうやったか分からないけど」
「まぁね。ある料理を作りたくて食堂のおばさんに協力してもらったんだ」
だけど、あのおばさん。
真面目にしっかりと作業をしてくれる人だから、俺も助かったんだよな。
「そうなんだ」
「その結果できたスープベースを彼女は毎日作っている」
「だけど、あんなにおいしいスープベースを作る材料はどうしているの? ダーリンの寄付?」
「そんなことはないさ。スラムにあった、捨てる物を再利用したんだ」
「ええーー」
ちゃんとオークの骨を使っていることを説明した。
魔物の骨を料理に使うなんてことは、聞いたことがないって言う。
「だから、材料費はゼロだね。せいぜい解体のおやじさんにどぶろくを差し入れするくらいだってさ」
「すごいわ。スラムの中で全部廻っているのね」
「ああ。ちゃんと魔物の解体が出来るのはスラムだけだからね」
「他のとこで魔物の解体なんてしたら、クレームがすごいわ、きっと」
「だけど、あのスープベースの材料がオークの骨だとバレたら取り上げられそうだろう」
「うん。秘密にしないとね」
そんな話をしながらも、俺の身体をあちこちすりすりしている。
どうも、俺はかわいい女の子にすりすりすると、一部が元気になってしまうらしい。
「もうひとつ秘密があるんだが」
「何?」
「ほら、ここ」
「わー、すごい!」
俺たちのホテルに急行した。
おまえ、異世界に何しに来たんだ?
えっ、「何」しに来たって……しょーもないな。
まぁ、それはおいおいて。
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