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第24話 意外なところにヒット商品があった

「こんにちわ」

「あ、ミッシェルさん」


ドワーフ大工の棚づくりを見ていると、ミッシェルさんが恰幅の良い紳士と一緒に来た。

前に話していたお客さんだろう。


「あれ? 今日はお休みなの?」

「あ、やっていますよ。ただ、店内改装中でして。バタバタしてすいません」

「なにやら、素晴らしいグラスがあると聞きましてな。見せてもらえないだろうか」


うん、やはり紳士的な方だな。

見た目は紳士であっても、しゃべると人を見下すような人もいるからな。

見た目と話し方も紳士ならば、本物の紳士だろう。


「もちろんです。こちらです」


店の中に導くと、新しく入った棚の一番上に『売約済み』の札がついたグラスがふたつ置いてある。

ひとつは普通のカップ型でもうひとつは玉子型の丸みを持ったグラスだ。


「ほう、キレイなグラスですな。すごく透明です」

「持ってみてください。この商品の売りは薄さなんです」

「どれどれ。ん? なんですか、これは!」


なにやら本物紳士は驚いている様子。

うん、あのグラスの薄さには僕も驚いたからな。


「薄いでしょう。ここまで薄いのは珍しい物です」

「いや、グラスではなく、これです!」

「はぁ? これって、『売約済み』の札ですか?」

「これは紙ですな。すごく薄く真っ白です」


あ、そういえば、こっちの世界に紙があるかよく知らなかった。

どうも、あるにはあるけど、もっと厚くて白くない物らしい…わら半紙みたいなものか?


「それは私が使っているノートの切れ端です」

「そのノートをみせてくれませんか?」

「使っているノートは商売の記録が書いてあるので見せられませんが、未使用なノートなら」


俺は文房具が入っている箱から、ノートと鉛筆を取り出した。

もしかして、ノートも買ってもらえるかもな。


「これなんですが」

「おー、なんて薄い紙の束ですな。これで何枚ありますか?」

「確か、30枚のはずです」

「おー」


商売をしているなら、紙を使うことも多いだろう。

この世界において紙の質はよくない上に高価な物のようだ。


「これは遠くの国から仕入れている特別なノートなんです」

「でしょうな。これを売ってはくれないか」


うーむ、いくらなら買うのかな。

紙は1枚いくらくらいなのだろう。


「銀貨1枚ではどうでしょう」

「やはり、そのくらいはするのですね」


あ、高すぎたか。

それはそうだろう、いくら高品質だと言っても紙だからな。


「この形だと使い道が限られます。もっとシンプルに紙だけの物はないだろうか」

「今はないですが。取り寄せられますよ」

「時間が掛かりそうですな」

「いえ。明日には」

「ほう! それはいい」


ノートよりコピー用紙をお望みらしい。

それも大量に。


「白紙になりますと。これより大きい、このサイズで100枚入りになります」

「それは高そうだな」

「ええ。銀貨2枚になります」


たしか、コピー用紙は百均にもある。

100枚入りだったはず。


「それなら、それを50束もらえないだろうか」


銀貨2枚が50だと金貨で10枚。

おお商いだな。


「あー、それだと紙を売り出すつもりですな」

「そうではありません。これだけ良質な紙なら、特別なお客様に瓦版のような物を渡そうと思いましてな」


要はチラシに使いたいってことか?

どうなんだろう……それは、転売ではないのかな。


「ちょっと試してみましょう。このノートでそれを作ると思って扉から出てみてください」

「どういうことかな?」

「お売りできるかのチェックです」

「よく分からないが、こうすればいいのか?」


ノートを胸に抱えたまま、扉から外へ出た。

特に問題はないらしい。


「はい、ありがとうございます」

「大丈夫なのですか?」

「はい。白紙を100枚束で50冊、ご用意しましょう」

「おおそうか」

「もしかしたら500枚束になるかもしれません。その場合は10冊で」

「どちらでもいいですよ。金貨10枚用意しておきます」


うん。いい感じで商売の約束ができた。

それも大商いの。


「それと、このグラス確かにいいですね」

「はい。特別な物です」

「これはいくらですか?」

「金貨1枚です」

「これも買いましょう。気に入りました」


丸い方がいいらしい。

もうひとつ欲しいということで、予約もいただいた。


「うふふ。いっぱい買ってもらったわね」

「ミッシェルさん、紹介ありがとう」

「お金の使い方が綺麗な方で良い物が分かるだから、たぶん買ってくれるかなって」

「またお店行きますね。なにかプレゼントを持って」

「うふふ。楽しみにしているわ」


売り上げ金貨1枚で、前金として金貨2枚もらってしまった。

明日、コピー用紙を買ってこないと、だな。


しかし、意外なところにヒット商品がある物だな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 現実世界で中世の文明レベルだと羊皮紙やアフリカでパピルスの様な植物紙が普及していましたけど、コピー用紙どころか藁半紙もない異世界ではコピー用紙は相当質がいい物ですね。 横線が引いてあって書き…
[良い点] 本物の真摯に脱帽。 [気になる点] シンブル → シンプル ですね。 [一言] 序盤のエロ要素の印象が強すぎて…(笑) あそこ(ラーメン屋)まで進むにはまだまだ時間がかかりそうですね。
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