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第六話「乱れた息の原因はなんですか?」

 私は今、黒の騎士シャークス様と一緒に首都ジョンブリアンへと向かっていた。恐れ多くも、私はシャークス様の愛馬に一緒に乗せて頂き、手綱を引くシャークス様の背中にしがみ付いていた。


 さっきから緊張し過ぎて心臓のバクバクいっているのが聞こえていないか心配だった。密着度高いもんね!シャークス様の愛馬アドニスは聖獣のユニコーンのように、真っ白で毛並みも良く、たてがみが流れるように美しくて、端整な顔立ちをしている。


 まさに主人のシャークス様に似ているんだろうな。しかも二人も乗せているのに、軽やかで走りも速い。アドニスに乗る前にシャークス様が彼を撫でていたけど、とても主人を慕っているように見えた。お互いに大事に思っているんだろうな。そういうシャークス様の姿を見て、私は彼の人柄の良さを実感した。


 ―――わざわざ宮殿まで呼んで、お礼ってなんだろう?宮殿でお食事かな?そしたら嬉しいな♪


 私は高鳴る心臓を抑えるために、お礼の内容を考えていた。シャークス様にお礼はなにかと尋ねてみたんだけど、「来てからのお楽しみだよ♪」と、言われてしまい、結局わからなかった。


 それにしても、馬のアドニスも素敵だけど、やっぱりシャークス様も相当素敵な人だよね。年もイーグルス兄さんと変わらなさそうだから、25歳ぐらいかな?それなのに兄さんよりもお偉いさんだし、地位もあって極めつけは目を奪われるほどの美貌の持ち主!


 こんな素敵な人に招かれてガーネット宮殿に行けるなんて!いつか騎士になったら、絶対に行きたいと夢見た場所なんだ。昨日の昼間は大変な思いをしたけど、勇気を出して頑張って良かったな。私は感極まって、思わずギュゥーと腕に力が入ってしまった。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 ―――ん?


 …気のせいだよね?背中姿しか見えないシャークス様だけど、微妙に息が荒くなっているような?んっなわけないない!私は違和感を覚え気にかけたが、自分の思い違いだろうと気にしない事にした。


 ―――数十分後。


 私の村から首都は歩いて一時間、馬を走らせても20分ほどはかかる。しかし、首都は大国なだけあって、入口から宮殿まで馬を走らせても30分はかかるみたい。ここには買い物の用事があって訪れる事はあっても、いつも入口付近の商店街でしか買い物しないからな。改めて首都の大きさに度胆を抜かされた。


 走る事30分して、ようやく目的のガーネット宮殿が見えて来た。開いた口が塞がらない!だって重厚な城壁に囲まれた宮殿はゴシック式(天にそびえてゆくような尖頭アーチ)の建物で、先端がまさにガーネット色で強調されていた。


 しかも造りも繊細ディテールで彫刻やハイレリーフといったデザインに目がキラキラする!周りの城壁もご立派だよ。万が一攻撃されても、これだけ分厚く頑丈な煉瓦なら、攻めて来られてもそうそうは崩されないだろうな。


 私の木造の家とはなんて違うんざましょ!ガーネット宮殿は絵画でしか見た事がなくって、実際の目の前に映る巨大なお城に圧巻させられた。私は高揚した気持ちに、またしても無意識にシャークス様への密着度を上げてしまった。


「スターリー」


 まだ走っている途中だったけど、突然にシャークス様が私の名を呼んだ。


「なんでしょう?」

「あまり力を入れられると、アドニスから降りた時にオレは立てなくなる」

「なんでですか?」

「うーん、反応し過ぎて抑えられないんだ」

「え?なにをですか?」


 キョトンとする私の顔に一瞬、表情を見せたシャークス様の頬が熱を帯びているように見えたのは…気のせいだよね?しかもさっきも感じた息遣いが荒い?シャークス様はすぐに前を向いて走る事に専念されてしまったから、彼の状態も質問の内容も確認はとれなかった。


 ――なにをお伝えしたかったんだろう?


 疑問が残ったまま、シャークス様は宮殿の門の前まで行かれた。正門の衛兵士に騎士様の証となるブローチを見せると、宮殿へと通された。


 ―――わわっ、今の正門ゴージャス過ぎてヤバイよ。


 金属製のハイレリーフに、さらにキラキラの宝石が埋め込まれたノーブルな門だった。兄さん達はこんな素敵な門を毎日くぐっていたのか。羨ましい~。帰ったら父さん達にも自慢しようっと!


 正門から数分走って、やっとエントランスの入口までやって来た。私は心臓をドキドキとさせながら、到着を待つ。暫く走ると、アドニスの走りがゆっくりとなり、ある場所で停止した。


「やっと着いたよ」


 振り返ったシャークス様はにこやかな表情を向けて教えて下さった。そして軽やかな身のこなしで先に下りられた。続いて私が下りようとしたら、彼は私に手を差し伸べてくれて、そのまま抱きかかえるように持ち上げてくれた。


 ―――わわっ!


 私は変にドキドキとしてしまい、一瞬で赤面になる。その間にゆっくりと地に足が着いた。


「あ、有難うございます」


 私は俯き加減でお礼を伝えた。は、恥ずかしいな。今、絶対に顔が赤いもん!でもシャークス様ってば紳士様だよね。というか女性の扱いに慣れていらっしゃるのかな?


 ―――チクン。


 あれ?今ちょっと心がチクンとしたのはなんでだろう?


「どういたしまして」


 満面の笑顔で応えてくれたシャークス様は眩しいな。私達が馬から下りると、近くにいた衛兵士がアドニスを連れて行った。


「さぁ、宮殿内へと入るよ」


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