表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定!】転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/56

52:ボス属性→再会の予感。

「クソッ、クソッ、クソッ! どいつもこいつも役立たずめ! なんで俺には奴みてぇに、強ぇ手下がいねえんだっ」


 本アジトへと引き返す道中、鈴木は荒れに荒れまくっていた。

 こんな時、下手に近づけば八つ当たりされることを部下たちは知っていた。時には重症では済まないことも。

 それでも鈴木の元を離れられないのは、彼らが真っ当な人間ではないから。

 鈴木に出会う前、既に罪を犯し、お尋ね者となった連中がほとんどだった。


 そして――鈴木と出会ってから、何故か彼に従いたいという感情を抱いたからでもある。

 それこそ鈴木に贈られた『ボス属性』だった。


「ちっ。このスキルにはモンスターを従えさせる効果はねぇのかよ。クソが!」

 

 スキルの効果は、持ち主と同じ属性を持つ人間に対し、無条件でカリスマ性を発揮すること。

 そして、従える部下が増えれば増えるほど、持ち主を強くするというもの。

 

(百や二百じゃ足りねえのか……クソ。もっとも。もっと人を集めねぇと、渡錬は()れねぇ)


 手っ取り早く従う者を増やすのなら、奴隷がいい。

 だが奴隷を買うにしても、金がない。

 部下が増えれば、それに合わせて出費も増える。


「もっと金が要る」

「え? じ、じゃあ、ゼザーレ聖国か聖法国シュットランに行きますか?」


 部下の一人がそう尋ねた。


 盗賊と言えば、街道を行き来する者を襲って金品を奪うのが定番。

 しかし、この滅びかけた世界では空気が汚染され、土地神がいる里から出るものなどほとんどいない。

 たまに他所の里へ物々交換するため荷車が通ることはあるが、積み荷はほとんど食料だ。衣類なんかもある。

 盗んだところで、自分たちで消費するようなものばかり。


 だが、大神の加護で守られたゼザーレ聖国と聖法国シュットランは別だ。

 国内は魔素が浄化され、空気も澄んでいた。

 そこでは庶民が暮らし、貴族が暮らし、王が暮らす。

 だからこそ、街道はそれなりに賑わっていた。

 良い荷物を奪えれば、金にはなるのだ。


「そうだな……前に行ったのはどっちだったか?」

「前は……ゼザーレだったか? なぁ?」

「う、うっす。ゼザーレでしたぜ、兄貴」

「どうします? こっからだとゼザーレの方が近いですが、立て続けだと衛兵に覚えられてるかもしれませんし」


 鈴木は少し考えたあとシュットランへ行くと部下へ告げた。

 だがその時だ。


 彼らの前方に、こんな汚染地帯で見ることなど決してないような、豪華な馬車が止まっていた。


「あ? なんだありゃ。頭のおかしい貴族様でもいらっしゃったのか?」


 ニヤりと笑いながら、鈴木は短剣を抜き、馬車へと近づく。

 すると馬車の扉が開き、中から燕尾服を着た五十代ぐらいの男が出てきた。


「おい、てめぇ。死にたくなけりゃ、その馬車と中のもん全部置いて失せろ」

「お迎えにあがりました。鈴木尚人さま」


 男はそう言って、恭しく頭を下げた。

 

「は? なんで俺の名前を……てめぇ、誰だ!」


 頭を上げた男に向かって、鈴木がどかどかと歩いていく。その手には短剣を握ったままだ。

 だが、男は臆することなく、顔色も変えず鈴木を見据えた。


「なんとか言いやがれ!」


 鈴木は苛立ちを隠そうともせず、男の首筋に短剣を突き付けた。

 そこで男の口がわずかに動く。

 

「委員長がお待ちです」


 男の口から聞かされたのは、その一言だった。

 

 一瞬、何のことだか理解できなかった鈴木だが、その言葉の意味を思い出す。

 長い間聞くことのなかった言葉だ。それ故、言葉の意味を忘れてしまっていたのだろう。


 ニタリと口元が歪む。


「そうか、委員長がねぇ。おい、案内しろ」

「そのためにわたくしめはここまで来たのです。部下の方々は申し訳ありませんが、あちらの荷車へお乗りください。罪人を捕らえた、という体でお願いいたします」

「わかった、好きにしな。おい、お前ら。捕まれ」


 部下たちは一様に不安な表情を浮かべるが、鈴木の「大丈夫だ」という一言で、すっかり安心して荷車へと乗り込んだ。

 実際に安心したのではなく、スキルによる強制力が働いただけ。


「なかなかよいスキルをお持ちでいらっしゃいますね、鈴木さま」

「だろ? で、委員長は元気なのかよ。他の奴らはどうした?」

「我が主の健康については、まったく問題はございません。他の方、がどの程度いらっしゃるのかわかりませんが、お一人だけ」


 ひとり。はて、誰だ? と鈴木は首を傾げる。

 まぁ誰でもいい。利用できる奴ならだれでも利用する。

 

 前世ではクラスの委員長だった男を、鈴井はよく知っていた。

 クラスの委員長であり、生徒会長だったクラスメイトだ。


 表向きには、鈴木は委員長と対立していることになっていた。

 生徒会委員長と不良グループのリーダーが、実は協力関係であったなんて誰も思わないだろう。


 鈴木が暴れる。

 委員長が注意をする。

 起こった鈴木が委員長を殴ろうとするが、怯えることなく立ち向かう委員長。

 そんな光景を見れば、周りの生徒は委員長に尊敬の念を抱くだろう。生徒会会長になるための、票集めもできるというもの。

 そして鈴木は、委員長から報酬を受け取っていた。高校生が手にするには、なかなかの金額。

 そのことを思い出し、鈴木は無意識のうちに顔をにやつかせた。


「委員長、今度は俺に何を頼もうってんだ。あぁん?」

 

 滅びかけたこの世界でも、委員長は相変わらずあくどいことをやってるな――そんなことを考えながら、鈴木は馬車の窓から外の景色を眺めた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ