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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
2章

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33/33

33:乙女心→召喚→謝罪。

「本日のミッションです」

「テヤンデェ」

「にゃっ」


 山で発見した人の足跡。気にはなるけど、だからといってどうすることも出来ない。

 足跡が誰のものなのかもわからないし、その連中がどこに行ったのかもわからないんじゃお手上げだ。

 ということで、日常を送る訳だ。


 今日も今日とてユタとレイアを鍛えるべく、ミッションを出した。

 まずは脚力を付けるために走ってもらう。

 俺も体を鈍らせるわけにもいかないし、一緒に走る。


「しっかしユタは早いなぁ」

「ユタには全然追いつけないわ」

「はは、同じく」


 エリクサーを節約するため、レイアは今も猫の姿のままだ。この姿でもミッションの効果はあるし、なんだったらその影響は人の姿に戻った時にもちゃんとあるんだとか。


「クククククッ」


 前を走るユタが瓦礫を飛び越えるため、タンッとジャンプする。

 いいよな、あいつ。ジャンプ力も高くてさ。

 俺とレイアは瓦礫を迂回して走る。前を走っていたユタの姿はもうない。

 角を曲がると、既に教会前に到着していたユタがドヤ顔で出迎えた。


「オイラ、イッチバン!」

 

 ビタビタビタと尻尾を打ち付けて、嬉しそうに体を揺らしている。


「はいはい、お前が一番だ。人間の俺がドラゴンのお前に勝てるわけないだろ」

「ククククク」


 嬉しそうに喉を鳴らすから、その喉を撫でてやる。

 そしてレイアと目が合った。


「もしかして、撫でて欲しかったりする?」

「ふえ? そ、そそそそ、そんなこと、ないわよ。ないんだからっ」


 ピュンっとレイアは走って教会の中へと入って行った。


「あれ? 俺、なんかマズいこと言った?」

「テヤンディ?」


 ユタと一緒に首を傾げていると、背後に気配を感じて振り返った。そこには真っ黒い影――アッパーおじさんが。


「かぁーっ。わかっちゃいねえなぁ、乙女心ってもんがよぉ」

「乙女心? なんのことだよ、おじさん」

「だからよぉ。人間の雄がひとりと雌がひとりだ。つまりはなぁ、はつじょう――」

「あー、あー、聞こえなーい。なーんにも聞こえなーい。さ、ユタ。ミッションの続きやるぞ」

「ヤルゼェ!」

「あ、おい。アルパディカの話を聞けって。おいっ」


 ったく。何が発情期だ。人間にはそんなもんないっての。


「ツギ、ナニスルカ?」

「そうだなぁ。ゴーレム探しもしたいし、瓦礫の撤去作業をミッションにするか。足腰が鍛えられるだろうし、筋力もな」

「ヤルゼー!」


 そうは言ったものの、この町の建物は七割が倒壊して瓦礫になっている。このどこかに埋まっているゴーレムを掘り起こすのは大変だぞ。運も絡んでくるからなぁ。

 でも、やらないわけにはいかない。


「とりあえず教会から近いとこから始めるか」

「オーッ」


 エイエイ、オーッと気合を入れていると、ヒョコっとレイアが出てきた。


「何するの? 私も手伝える?」

「小さいレイアだと、どうかなぁ。瓦礫の撤去作業をしようと思ってさ」

「岩を運ぶのね。それあら手伝えるわっ」

「いや、そのためにエリクサーを飲むのは……え、何、それ?」


 レイアが前脚で地面をたしたしと叩くと、足元の土がぼこぼこと盛り上がった。そこから出てきたのは、一見するとゴーレムにも見える何か。

 ただ、小さい。あとファンシーなグッズにありそうなキャラだ。

 角が丸みを帯びた四角い顔。同じく四角い胴と下半身。手足も、全てのパーツが資格で出来ている。

 背丈は俺の膝ぐらいしかなく、顔には黒い目だけがあった。


「レ、レイア? なんだい、これ」

「ノームよ。土の精霊」

「せ、精霊!? これが?」


 あ、なんか気に障ったようだ。顔に怒りマークが浮かんでいる。


「ふふ。志導くんが神様からもらったスキルが、ミッショントレーナーでしょ。私はね、精霊召喚ってスキルを貰ってたの」

「え、じゃあそのスキルで召喚したのか!? 精霊使いかぁ。いいなぁ」

「それがね、ちょっと違うの。召喚するだけで、精霊魔法が使えるわけじゃないみたい。私も半年前にこのスキルが発現したから、まだ具体的にはわからなくって」


 精霊召喚ってスキルだから、召喚するだけでお終いなのか。でもまぁ、あり得るな。


「それにね。精霊は汚染された地域では上手く召喚出来なくって。でもここは汚染されてないから、精霊もご機嫌みたい」

「へ、へぇ……」


 後頭部に怒りマークを付けてる奴がご機嫌だなんて、とてもそうは見えないけどな。

 召喚した精霊は、簡単なお願いあら聞いてくれるらしい。


 まとまった所にある瓦礫は、俺が直接インベントリの中へ収納していく。ユタとノームには、あちこち転がっているものを集めてもらった。


「あ、そうだ。レイア、ノームってずっと召喚しっぱなしなのかい?」

「え? ううん。召喚している間は魔力をほんの少しずつ消費していくから、倒れる前に還すんだけど。どうして?」

「じゃあ、ノームを召喚して一時間働かせるってミッションはどう?」

「あっ」


 気づいたらしく、レイアも顔をほころばせながら「うんっ」と返事をした。

 一度ノームを土に戻し、ミッションを発動させてから再召喚。


 一時間後、無事にミッションは終了して彼女の魔力と精霊との相性がよくなったという通知メッセージが浮かんだ。

 その後もいろいろユタとレイアにミッションを出しながらがれきの撤去を続ける。


「ところでさ……そのゴーレムって、どこにあるんだろう。ここ何日かであちこち足り回ってるけどさ、ゴーレムっぽいものは全く見てないだろ?」

「そうね。全部が全部、瓦礫の中に埋まってるわけないと思うんだけど」


 一体ぐらいその辺に転がっていてもいいんじゃないか?

 そんなことを思っていると、ふわりふわりと光が飛んで来てニーナの姿へと変わる。


『ご、ごめんなさい、ですの』

「ニーナ、どうして謝るんだい?」


 もしもししながらニーナは、小さな声で答える。


『ゴ、ゴーレムさん……アリューケの町には一体……しかいないですの』


 ……そりゃ見つからないわけだ。


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