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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
2章

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32/33

32:砂糖→塩→足跡。

 第二畑を耕し終え、残っていた種も蒔いた。

 奥様方が嬉しそうに何かしていた気がする。たぶん、ニンジンの種だけ多めに蒔いたんだろうな。

 

 レイアが持っていた砂糖はごくわずか。その他の調味料も同じ。

 現物があるうちに解析眼で作り方を記録させておく。

 サトウ草が手に入ったので、絞って煮詰めてクラフト砂糖の完成だ。


「他の調味料も手に入るといいんだけどなぁ」

「塩ならあんぜ」

「おぉ、塩ならあるのか――って、あるのか!?」


 固茹でしたニンジンをもっしゃもっしゃと食べながら、アッパーおじさんが平然とした顔で言う。

 海が近いわけでもないのに、なんで塩が?


『ここ、昔むかーし、海だったですの』

「え? ここが海?」


 ニーナは食事の準備を手伝ってくれている。いい子だ。


「そう。魔法王朝が出来るよりもずぅーっと昔だ。だからよ、塩の洞窟があんだぜ」

「お、おじさん。そこに連れて行って! もう塩の在庫もちょっとしかないのよ」

「そりゃ構わねぇぜ。わしらも塩は不可欠だし、この冬の間の塩を運んで起きてぇしな」

 

 じゃ、決まりだ。ついでに山で食べられそうなものを探してみよう。

 まぁ浄化しなきゃ食べられないんだけどさ。






「この穴の中に塩が?」

「岩塩ね。都や集落で出回っているのは海水から取った塩だけど、都の方じゃ時々、岩塩が売りに出されてるって聞くわ。凄く高いんだけどね」

「へぇ。どこで誰が仕入れて来ているんだろう?」


 翌日、アッパーおじさんが案内してくれたのは、北の山の中。壁の方へと向かう山道の途中、更に上へと登るルートを進んだ先に穴はあった。

 崖沿いにぽっかり空いた穴。

 アッパーおじさんを見て、穴を見る。


「この穴……」

「あ? もちろん、わしやご先祖が開けた穴だが?」


 やっぱり。穴のサイズ的にドンピシャだったからもしかしてと思ったら、案の定か。


「おぉし。んじゃ掘ってくれ」

「了解」


 瓦礫と木を素材にしてクラフトしたツルハシを手に、俺とレイアが穴の中の壁を掘る。

 今日はこれのために、レイアは人の姿だ。


「オイラ」

「ん? さすがにユタはツルハシ持てないだろう」

「ンクアァァァーッ」


 あぁあ、拗ねちゃったよ。って、がむしゃらに壁を殴りまくって、欠片が――いてっ、いてててっ。


「おいユタ。痛い、痛いってば」

「クックッ」


 今度は尻尾でビタンビタン。大きめの欠片が飛んでくる。

 これが……ツルハシで掘るよりユタに任せた方が早そうだ。


「わかった、わかったよユタ。掘るのはお前に任せよう。お前の爪と尻尾は、俺がクラフトしたツルハシより強そうだからな」

「クッ。クアックアァー。クククククク」


 どうだ、スゴイだろ――ってことなのか。鼻をフンっと鳴らして仰け反る。次に起こることは後ろ向きに倒れ……た、倒れない、だと。

 こいつ、尻尾をうまく使ってバランスとってやがる。


「成長しやがって」

「ク」

「なんのこっちゃ」

「ふふ。ほんと、良いコンビね」


 あぁ、まさにいいコンビだ。

 ほんの数十秒、ユタがガリガリした壁の欠片は結構ある。


「これ、このまま塩として使えるのかな?」

「わしらは気にしねぇが、人間は気になるかもな。石や砂も一緒に圧縮されてっからよ」

「となると、細かく砕いてから水と一緒に煮込んで、塩とそれ以外を分離……志導くんの万能クラフトで、そういうのも全部出来ちゃいそう?」

「出来る、かもしれない」


 砂糖だって出来てしまったし、出来るんだろうな。


 この辺り、冬になると一メートル以上は雪が積もると言う。冬場に塩がなくなって困ることがないよう、十分な量を確保する。


「雪が降り始めたら、お肉の塩漬けなんかも作りたいわね」

「長期保存用に?」

「そうそう。塩漬けにして余分な水分を抜いたら、それを燻製にするの。そうしたら一冬は持つから」


 俺ひとりだとそんなこと思いつかなかったかもな。

 ほんと、レイアがいてよかった。


 みかん箱よりやや小さめの木箱をいくつかクラフトし、ユタが砕いてくれた岩塩を含んだ岩を詰め込んでいく。それをインベントリに押し込んで、作業終了だ。

 段々陽も短くなってきたし早めに帰るつもりだったが、ユタのおかげで作業も早く終わった。


「もう少しかかるかなと思ったけど、早く終わってよかった」

「そうね。ユタのおかげ……あら、ユタ?」


 ん? ユタの奴、何やっているんだ?

 鼻をふんふん鳴らして、茂みの中に入った?


「おい、ユタ」

「アッ。シドー、シドーココ。ココアルク?」

「俺が?」


 茂みをかき分けて中に入ると、ユタが地面を爪で指している。

 足跡だ。しかもこれは――


「人間の足跡!?」

「え? 人間の足跡ですってっ」


 レイアもやって来て、二人でその足跡を見た。

 

「俺の靴、二十六センチなんだけど――あまり変わらないな」

「じゃあ、成人男性かしら」

「高二の時には二十六だったし、十五歳前後よりは上、ってところじゃないかな」

「おーい。こっちに来てみろい」


 アッパーおじさんの声のする方へ向かうと、そこには更にたくさんの足跡があった。

 ひとりや二人じゃない。ここにいたのは複数の人間だ。

 もう一度茂みにあったひとり分の足跡を少し辿って見る。

 茂みを出て、その先に崖に向かっているようだ。


 その崖から――


「町が……アリューケの町が見える」

「え? あ……本当だわ」


 直線距離にすると、アリューケの町までそう遠くない。

 さすがにここからじゃ、俺たちの姿を見ることは出来ないだろうけど……それでも、なんか不安だ。


 この世界の今の状況だと、町なんて見つけたらとりあえずそこへ行ったりしないか?

 それをせず引き返しているようだし……なんだか嫌な感じがする。

 

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