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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
2章

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30/33

30:日常→信仰→ジャングル。

新章です!

「ふぅ……こんなもんかな」

「モンカーッ」


 レイア=風見さんであることを知ってから三日。

 特に俺たちの関係がどうこうということはなく、ここでの日常が続いている。

 毎日ユタとレイア、時々アルパディカたちにミッションを出してやり、俺もそれに付き合う。


 身体能力強化スキル。

 持っているだけじゃ何も変わらない。ちゃんと鍛えなきゃ、その効果は得られない――とレイアは言った。

 だから走り込みや反復横跳びといった、トレーニングを一緒にやることに。


 二十七歳の体には堪える……と思っていたが。意外とそうでもなかった。

 むしろ体を動かすと清々しくさえ思えるほど。


 で、鍛えることと同時に、生活環境の改善も行っている。

 今日、ようやく教会の修繕が終わった。


「お疲れさまにゃ、志導くん」

「レイア。家具の位置はこんなもんでいい?」

「うん。ごめんね、手伝わなくて」

「いいさ。エリクサーポーションだって無限じゃないんだ、無駄遣いしない方が良い」


 礼拝堂の床石の隙間から生えていたエリクサー草は、もうない。

 レイアが持ってた空き瓶を解析して、そっくり同じ物を万能クラフトで作成。予備も含めて二本分のエリクサーポーションを作った。そこで葉っぱは終了。


「そう、ね……。でもまさか、百年に一度しか咲かないなんて思わなかったわ。どうりで手に入らないわけよね」

「その種が元々この教会の下にあったってのも、驚きだよ」


 葉を頂いた後、エリクサー草は一輪だけ花を咲かせ、あっという間に種を残して消えた。

 その種は、土地神像の隣に改めて植え直してある。

 百年後、誰かが必要としたときにまた咲くだろう。


『種は、防衛の町に一つずつ、あるですの』


 すぅっと光が飛んで来て、土地神ニーナの姿に変わる。

 

「ニーナ。防衛の町って、古代魔法王朝の周辺を囲んだ五つの町?」

『ですの』


 古代魔法王朝は、都市を中心にぐる~っと巨大な壁で囲っている。

 更に外部からの攻撃を防ぐ目的で、壁の外側に五つの町を建設。その町に、結界用の魔導装置があった。

 この装置には王朝を守る結界を張る以外にも、空気や土壌の汚染を浄化する作用もある。

 俺が解析眼で修理したのは、浄化機能だけだ。


 まぁ他の町が壊滅しているし、アリューケの町だけでは防御結界は張れないってことだけどさ。


「どうしても必要になったら他の町に取りに行けばいいのか」

「でも咲いてるかどうかわからないんじゃない? 百年に一度だし」

『たぶん、アレからずっと咲いてないですの。魔王に……壊されてから』


 ここだけじゃない。他の町も魔王の攻撃を受け、瓦礫の山と化しているだろう。


「ニーナはこの町から離れられないって言ってたけど、他の町にも土地神様はいるのかな?」

 

 その問いに、ニーナは一瞬言葉を詰まらせた。その表情は悲痛そのもの。

 あぁ、こりゃ聞いちゃマズかったな。


「ごめん、ニーナ」


 他の町の土地神はもう、いない……。ニーナが最後だったんだろう。

 土地神は人からの信仰を得られなかったら、力を失っていくって言ってた。

 魔王によって数百年前に滅ぼされた町なんだ。土地神様がどうなったかなんて、少し考えればわかることだろ。はぁ、何やってんだ俺。


『ニーナは……ニーナは幸運だったですの。アッパーおじさんが、話し相手になってくれてたですから。それに五年前からユラも来てくれたですし』

「そっか。って、ユラって割と最近、ここの住民になたのか」

『はいです。その時はまだ、ユタもいなかったですの』

「ク?」

 

 自分の名前が出て、ユタはよくわからないといった様子で首を傾げている。

 少しでも汚染度の低い場所で、子育てをしたかったのかな。アッパーおじさんもそんな事言ってたし。


「話しかけるだけでも、神力を維持出来るのか?」

『維持、とまではいかないですの。でもニーナが消えてしまうまでの時間が、ちょっぴり伸びたです』


 だからお兄ちゃんに出会えた――ニーナはそう言って笑う。

 消えてしまうという言葉を、当たり前のように口にするこの子を……俺は守ってやりたい。消えずに済むように。


「よし、祈ろう。土地神様ニーナ様。えぇっと……」


 何て言って祈ればいいんだ?

 前世っていうのかな、まぁ一応死んだし。その前世では特に宗教とかには入ってなかった。

 無神論者って奴だ。

 祈りなんてよくわからない。


『うふふ。志導お兄ちゃん、お祈りの言葉はいらないですの』

「え? でも祈った方が神力が増したりしない?」

「私が生まれ育った集落でも、土地神様にはお祈りしていたわ。一日の糧をありがとうございます、みたいに。何かあれば感謝を伝えてたの」

「そっか。じゃあ、ニーナ様。雨風を凌げる教会に住まわせてくださり、ありがとうございます」

「ありがとうございます」


 俺とレイアがわざとらしく手を合わせると、ニーナは堪らず笑い出した。


『ふふふふふふ。でもニーナは普通にお喋りする方が好きなの』

「いつもみたいに?」


 ニーナはこくんっと頷く。


『その方が、ニーナの心をぽかぽかにしてくれるです。力ももりもり増えるです!』


 と、細い腕でぐっとマッチョポーズを決める。もちろん、筋肉のきの字すらない細腕だ。


「そっか。じゃあいっぱいお喋りしないとな」

「お喋りでも土地神様の力が増すなんて、知らなかった。集落の土地神様は、滅多にお姿を現してくれなかったし」

『ふ、普通はそう、なのです。ニーナはその……ずっとひとりで寂しかったから……』


 そりゃ何百年とこの町でひとりぼっちだったんだ。そこへ人が来たとなれば、嬉しくて出てくるよなぁ。

 こんなおっさんでごめんな、ニーナ。


「あ、そうだ。昨日は畑の水やり、してくれたんだって? ありがとう、ニーナ」

『はう。ど、どういたしましてなの』


 頭を撫でると喜ぶ。ニーナは小動物みたいでかわいいなぁ。

 その瞳が丸くなって、突然俺を見上げた。


『わ、忘れてたですの! 畑が、ちょっとその……』

「ん? 畑がどうしたんだ?」

『お、お水撒くとき、楽しくってつい……力を入れ過ぎたですの!』


 力を……入れる?

 ん?


 ニーナに手を引かれ、教会の裏手へと出た。


 ん?


「いつから菜園は、ジャングルになりましたか?」


 三日前に芽がでたばかりのはずの畑が、もっさりもさもさと葉が生い茂っていた。


 

書き溜めあるうちは毎日更新頑張ります!

ブクマ、★、お待ちしております。心から、お待ち、して・・・

(´・ω・`).;:…(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..

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