表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/33

28:思い出→再開→無傷。

「あ、あのね志導くん。今度のふれあい合宿の時にね、お弁当、いるでしょ?」


 高校に入学して一ヶ月。同じクラスにいた風見さんから、初めて声を掛けられた時の事を思い出す。

 母親はおらず、父親は刑務所。俺の家庭環境のことは、入学早々クラスの全員に知られていた。

 教師がうっかり職員室で漏らしたのが原因だって、あとになってわかった。


 そんな俺に、風見さんが弁当を作って来てくれたのは一度ではない。

 遠足の時も、体育祭の時も、その後の合宿でも。

 彼女は自分の弁当とおかずの内容を変え、自分が作ったものだと周りからもバレないよう気を使っていた。変な噂を立てられないために。

 そこまでするなら、作らなくてもいいのに――とは思わなかったのが、俺もまぁ、美味い飯が食えるのが嬉しくてつい。


 優しい子だった。誰に対しても。

 美人で優しくて、学校でのミスコンで一位になるぐらいだ。彼女に好意を寄せる男も多かったんだ。

 そんな風見さんだから、きっと平和な世界に転生していると思っていたのに。


 でも、今目の前にいるのは――。


「やっと……やっと気づいてくれたんだよね?」

「風見、さ……本当に、君なのか?」

「そうだよ。私だよ、志導くん」


 俺はつい最近転移してきたばかりだ。彼女は高校生ぐらいの年齢だし、時間が合わないじゃない。


「で、でも、俺より数分先に転生した君が……なんで」

「うん。うん、そうだね。私も驚いた。だってあなたは、あの時の、数年ぶりに再会した二十七歳のままだもん。たぶん転移を選ぶだろうなって思ったけど、まさかあの時のままだなんて」


 本当に風見さんだ……レイアは風見さんだった!?

 同じ世界の、同じ時間に生きているなんて……思いもしなかった。


「俺と風見さんとで、この世界に来たタイミングが違ったのか……スキルを選んでた数分の差なのかな?」

「わかんないけど、たぶん違うと思う。あのね恵理ちゃんのこと覚えてるかな? あ、日下部さんのことね」

「あ、うん。覚えてるよ」


 いつも風見さんと一緒にいた、三年生の頃のクラスメイトだ。


「恵理ちゃんね、実はスキルに悩みに悩んで、転生したの一番最後だったらしいの。志導くんよりも後だったって」

「俺よりも!?」


 俺より後の子なんて、いたんだ。


「でも恵理ちゃんと私、同じ歳なの。それに大沢くんも」

「大沢も!?」


 いつも賑やかな奴で、高校の時、俺と普通に接してくれた数少ない同級生のひとりだ。よくゲームの話をしたっけか。

 転生のタイミングが数分違いでも、三人は同じ年に生まれている。

 転生と転移で違いが出ただけ?


 これは他の連中も、十七年前に転生してそうだな。


「ってことは……鈴木や大宮、越後もか……」

「たぶん……」


 お互い声のトーンが低くなる。

 この三人は、俺たちが死んだ原因を作った張本人だからだ。


 高校では鈴木をリーダーにした不良グループで、あいつらは大人になっても変わっていなかった。

 ほろ酔いだったのもあるんだろうけど、悪ふざけで車が来てる道路に飛び出すなんて。

 あいつら、車が止まらなかったら慰謝料がっぽり貰おうとか言ってたけど。死んだら意味ないだろ。しかも無関係な俺たちまで巻き込んで。


「あいつらとは顔を合わせたくないな」

「それは大丈夫じゃないかな。この世界、どこもかしこも汚染されてるから、集落から集落への移動も、命がけだったりするのよ」


 と、風見さん、いやレイア? とにかく彼女はにっこり笑って話す。

 な、なかなかハードモードな世界だと思うんだけど、ここで生まれ育ってるから汚染が日常茶飯事になっているのか。逞しいな。


「風見さん、ここから君が住んでいた場所は近いの?」

「ううん。ここまで二カ月よ。といっても、浄化の魔法を頻繁に使うから、途中の集落で何日も休ませてもらったりもしていたから」

「二カ月!? 何泊もしてたと言ってった、やっぱ遠いんじゃないか」

「毎日歩けたとしても、んー……一ヶ月ぐらいかしら」


 徒歩一ヶ月の距離って……でも、呪いを解くためには魔法王朝に行くしかなかったんだろう。

 何故呪われたのか気になるけど、さすがにそれを聞くのは野暮すぎる。


「大変だっただろ、ここまで」

「うん。でも来てよかった。だって、志導くんに出会えたんだもん……私――」

「俺もレイアに出会えてよかったよ」

「えっ……」


 アリューケの町以外のことは知らないし、そもそもここは何百年も前に廃墟となった場所だ。

 人がいない。

 いるのはユタドラゴンとアルパディカ。そして土地神様だ。


 人間がいない!

 猫に変身してしまうけど、人間のレイナがいてよかった。


「いやぁ~、本当によかったよ」

「そ、そうなんだ? 私もね、私も……あなたに――「アアァァーッ!!」かった」

「ん? ユタ、どうしたんだ?」


 下からユタの声がして覗き込むと、やや不貞腐れた顔でこっちを見上げていた。


「ハラ、ヘッタアァァァァッ」

「あ……悪い悪い。ちょっとうたた寝しててさ。か――レイア、下りようか」

「……うん」


 ん? なんかこっちも不貞腐れているような?

 どうしたんだ、レイアは。

 さっき何か言ってたようだけど、ユタの声で聞こえなかったし。


「レイア、さっき何を言っていたんだ?」

「へっ? あ、えっと……なんでもない。大したことじゃないから」

「そ、そうかい? んー、ならいいんだけ――どわぁっ」

「キャーッ、志導くん!?」


 屋根から下りようとして、転がっていた小さな瓦礫を踏んでしまった。

 マズい! お、落ちるぅぅぅー!!

 いや落ちたあぁぁぁぁーっ!?


 お、俺の異世界ライフ……今度こそここで終わるのか!?


 が、どすんっと両足で着地。

 す、少し足がしびれたけど、大丈夫だ。


「志導くん!?」

「だ、大丈夫だレイア。はは、ビックリし……た……」


 レイアの声がして見上げると、彼女は数メートル先。

 お、俺、あの高さから落ちて無傷? いや、両足で着地したのに、どうなっているんだ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ