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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
1章

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27/33

27:寒い→ミッション→うたた寝。

「クックックックック」


 ん……んん。何の音だ?


「クアアアァァァァァァッ」

「うわあああぁぁぁぁ寒い寒い寒い寒いっ!」


 アルパディカ毛布の温もりに包まれていたはずが一転。

 早朝の冷気が一瞬にして俺を支配する。

 あまりの寒さにすっかり目が覚めた。その原因を作ったのは――。


「ユタ……その毛布を返しなさい」

「クアッ! シドー、オキル。テヤンデェ」

「起きるって、お前なぁ……外を見ろっ。まだ薄暗いだろっ」


 この教会で唯一ガラスが無事な窓から見えるのは、ようやく東の空が白み始めた景色だ。


「んん……どうしたの志導くん。こんな朝早くから」

「あぁ、ごめんレイア。ユタの奴が――」

「ミッション! シドーミッション、ヤル!」


 ミッションってお前……こんな朝早くから……。

 おじさんはまだまだ寝ていたいんですけど、ねぇ、聞いてる?


「アッアッ」

「待て待て待て待て。その爪はなんだ。おい、その爪っ」


 ジャキンと爪を構え、今にも俺のハンモックを「切るぞ」と脅している。


「ミーッショーン」


 こいつ……人を脅すことを覚えやがった。


「え? ミッションやるの? わ、私もやるっ」

「でもレイア……あ」


 そろそろ猫に変身するんじゃ――と言い終える前に、彼女の体が光り出して、そのまま猫の姿になってしまった。


「ふ、ふみゃ~っ。私もミッション、やりたかったのにぃ」

「ミッション! ミッション!」

「わかった。わかったからっ。レイアはさ、猫の姿でも効果あったりしないかな?」


 毛布と、それから自分の服からもぞもぞと出てきたレイアは、こてんっと首を傾げて「どうかな」と。

 エリクサーはまだ生えてるし、クラフトすればすぐポーションは作れるけど……。

 ミッションのために人の姿に戻るってのもなぁ。


「猫の姿でやってみようか」

「ん……そうしてみる」

「ミッッショーン!!」






 小一時間ほど二人にはいろんなミッションをやって、それから朝食に。


「お前ぇら、朝から元気だなぁ」

「眠いけどね……」

「若いもんに付き合わされんのも、辛ぇな」


 アッパーおじさんが同情するような視線を向ける。

 はぁ……俺もせめてあと五歳若ければなぁ。


「志導くん。あのね、もしかすると猫の姿でも効果あるかもしれないわ」

「え? 本当かい?」


 蒸かしたジャガイモをレイア用に小さく取り分けてやり、それを彼女に差し出しながら「何か変化合った?」と尋ねた。


「うん。体が凄く軽いの。人の姿の時にミッションをクリアした時と同じ感覚だから」

「へぇ。じゃあ日中も猫の姿のままミッションが出来そうだね」


 そう言うと、レイアは嬉しそうに笑った。

 が、食後もミッションをと言われる前に先手を打っておく。

 

「ご飯を食べたら、ゴーレムの頭を修理しに行こうと思うんだ」

「あっ……そ、そうね。修理が先よね」


 やっぱり食後もミッションをって、言おうとしてたな。隣でユタも肉を口からポロっと落としてるし、こいつもか。


「他にもさ、ほら」

 

 と、天井を指さして見上げる。二人も同じように天井を見た。

 天井から細い光の筋が何本も降り注ぐ。

 つまり、穴が開いている。


「これからもっと冷え込むんだろ? あれさ、早めに治しといたほうがいいと思うんだ」

「そ、そうね。どおりで毛布から出たら、寒いわけだわ」

「ククククク」


 ゴーレムと屋根の修理。こっちが優先だ。


『志導お兄ちゃん』

「お、ニーナ。おはよう」

「おはようニーナ」

「アッ」


 光の玉がすぅっと現れ、ニーナの姿に形を変える。

 ニーナも修理後のゴーレムが気になるようだ。

 さっさと食事を終わらせ、ゴーレムの頭を持って例のゴミ捨て場へと向かった。


「な、なにこれ……え? 全部ミスリルなの!?」

「そう」

『ですの』


 山積みになったミスリルを見て、レイアがペタンと座り込む。

 ま、そうなるよね。


「さぁて、修理しますか」


 解析眼と万能クラフトで魔導ゴーレムの頭を修理!

 あちこち欠けた部分があったようで、みるみるうちに再生されていく。


「完了だ。さぁ、次は――ん?」


 解析して動くのかどうか調べようと思ったけど、その前に結果が出た。


【解析結果:壊れた魔導ゴーレム。胴のパーツがなければ起動しない】


 ……だったらなんで修理素材とか出したんだよ!

 胴がないと意味ないって……持ち帰った意味すらないじゃないか。

 ガクっと項垂れると、ニーナが心配そうに俺の袖を掴んだ。


『志導、お兄ちゃん?』

「胴体がないと……動かないって……」

『はいです。魔導ゴーレムさんは、体にエネルギーを蓄える核があるです。それがないと動かないですの』


 え、ニーナは知っていた?


『魔導ゴーレムさん。アリューケの町にもいたですが、瓦礫の下敷きになって……。掘り起こせばきっと治せるですの』

「この町にもゴーレムがいたのか!? じゃ、それを解析すればよかったんじゃ……」


 なんか全身の力が抜けた……。

 だけどニーナは首を振る。


『ゴーレムさんの記憶は頭の中にあるです。そのゴーレムさんは、都市が暴走した原因や、解決策を知っているかもしれないですの』

「あ、そうか。都市の防衛システムと直接リンクしてたのはこいつなんだよな」


 ゴーレムごとに、パソコンのメモリみたいなものがあるってことだ。ずっと昔にこの町で壊れたゴーレムだと、都市のシステムが暴走してからの記録なんてあるはずがない。

 持ち帰ったのは、無駄じゃなかったんだな。

 よかったぁ。

 

 ということは、次は瓦礫の撤去か。

 いや、その前に教会の屋根を修理しよう。


「ユタ、レイア。ミッションだ」

「にゃ」

「クアーッ」


 さすがに猫の姿じゃ出来ない作業なので、エリクサーをクラフトしてポーションへ。

 三人で瓦礫を集め、それを煉瓦へとクラフトする。

 大量に煉瓦を用意し、教会の屋根へ上って万能クラフトで修理!


「よし。新品同様とはいかないだろうけど、これで隙間はすべて埋まったはずだ」


 教会の構造を解析眼を使って調べてある。それに適した屋根として、クラフトした。

 これで天井から冷気は下りてくることはないはず。雨漏りの心配もしなくてすむだろう。


「はぁ、今日もいい天気だなぁ」


 遠くの空は曇ってるけど、町の上空はよく晴れている。

 なんかこう……朝も早くに叩き起こされ、いい具合に肉体労働のして……風も気持ちいいし、おひさまも出てるし。


 ねむ……。


「――くん」


 ん、誰だ? 今、凄く眠いんだ。


「志導くん」


 あぁ、この声は――。

 目を開くとそこには、銀色の髪と澄んだ青空の色をした瞳の持ち主――レイアがいた。


「志導くん。そんな所で寝てたら、風邪引いちゃうぞ」

「え……」


 その言葉は先日夢で見た、学生時代の記憶と同じ……。

 

「風見……さん?」


 思わず漏れたその名前に、言った俺自身が驚いた。

 それ以上に驚いたのは、彼女の方かもしれない。


 彼女は目を丸くし、それから瞳を潤ませ右手で口を押えた。

 それが全ての答えだということを、寝ぼけた俺の頭でも理解することが出来る。

 

 俺の瞳に映るのは、レイアなのか、それとも……。

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