表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/33

25:伸ばした手→掴んだもの→頭!?

 手を伸ばした。

 届かない。

 俺の目の前で、レイアが火球に飲み込まれる。


 ブオォッという、何かに着火する音と熱気。

 その中で彼女の口元が動いた――ように見えた。


「レイアアァァァッ!!」


 黒い影が躍り出て、炎の中からレイアを連れ出す。


「ずらかるぞっ」

「アッパーおじさん!?」


 その背にレイアを乗せている。


「レイアッ」


 呼びかけると彼女は薄っすらと目を開いた。

 無事……よかった。よかったぁ。


「走りやがれぇ」

「ユタ、ユタ行くぞ!」

「クアッ、ッククク」


 自分の何十倍もあるゴーレムを相手に、ユタが俊敏さを生かして翻弄している。

 そこへ小さいゴーレムもやって来た。人間の子供――ニーナと背丈はそう変らない。だが足はなく、菱形の無機質な胴に頭と腕をくっつけただけの外見は、生き物とすら言えない何かだ。

 ユタも踵を返して逃げて来る。

 ゴーレムたちは追いかけて来るが、やがて停止した。


 俺たちが最初に様子を窺っていた場所。ここが奴らの索敵範囲の外なんだろう。


「レイアはっ」


 顔が真っ青だ。服も体もあちこち煤だらけ。火傷したような痕もある。

 でも不思議と、服は燃えてはいない。火力が低かったんだろうか。

 

「だい、じょうぶよ、志導、くん」

「大丈夫じゃないだろっ。エリクサーを早くっ」


 彼女の巾着袋から、手探りでポーション瓶を探し出す。

 取り出したソレの蓋を開け、急いで彼女に飲ませた。

 早く、早く、早く、効いてくれっ。


 ポーションを全て飲み干すと、彼女の全身の傷がすぅーっと癒えた。

 見える範囲だと、火傷の痕も残っていなさそうだ。


「どう? 他に痛む所はないか?」

「ううん。もう大丈夫。ごめんなさい」

「なんで謝るんだっ。謝るのは俺の方だろ。解析画面ばかり見て、周りをおろそかにしていたんだし」


 あの火球は俺を狙っていたんだ。俺のせいだ。


「違う。ちゃんと私がチビゴーレムの注意を引けていなかったから。だからあなたが狙われたんだもん」

「レイア……じゃあ、お互い様ってことにしよう。それと、助けてくれてありがとう」

「そうね。お互い様ってことにしましょう」

 

 レイアが俯き、それから俺の胸に顔を預けた。

 え……なに、これ?

 ハグ? ハグってやつですか?


「よかった……志導くんが無事で」

「お、おぅ。き、君のおかげさ」


 どうしよう。どうすればいい。どうしたい?

 えっと。

 抱きしめる? いやなんかチャラ男みたいじゃないか?

 か、彼女は俺を心配して、それで無事だとわかって気が緩んださけさ。他に他意はないはず。

 たぶん。

 こ、ここは、背中をポンポンだ。ポンポン。


「イチャついてんところ悪いんだけどよぉ」

「イチャついてないし!」


 にゅっと横からアッパーおじさんが顔を出す。足元ではユタが何故か俺の足をホールド。

 こほんっと咳ばらいをして、レイアを解放。

 彼女は顔を真っ赤に染め、背中を向けた。


 アッパーおじさん、こういうのセクハラっていうんだぞ。若い子はデリケートなんだから、変なツッコミするなよなぁ。俺がとばっちり受けるんだから。


「そ、それで、なんだよおじさん」

「なんでしかめっ面なんだよ。まぁいいや。んで、解析はどうだったんだ?」

「解析、それがさ。なんか途中で変なノイズが入って。解析画面が消されたって言うか、なんていうか」


 あれは何だったんだ?


「スキルキャンセルじゃないかしら」

「スキルキャンセル? 失敗ってこと?」


 レイアは首を振って違うと言う。


「志導くん。解析眼のスキルがおかしくなる前、何か感じなかった?」

「何か……あ、感じた! 誰にも触られてないのに、なんかぬめっとしたものに全身が触れたようなないような。何か気持ち悪くて、鳥肌立つ感じ。えっと、上手く伝えられなくてごめん」

「いいのよ。そのぬめっとしたものが、あなたのスキルを妨害したんだと思う」


 スキルの妨害……そんな。

 止められるのかどうなのか、それすら解析出来なきゃわからないってのに。

 どうすりゃいいんだ。


「志導くん……」


 不安げなレイアの声。顔を上げると、彼女の悲壮感漂う表情が目に入った。

 俺なんかより、レイアの方が辛いに決まっている。

 なのに俺がこんなんじゃ、彼女を絶望させるだけじゃないかっ。


 もっと時間を掛けて、壁の外周を全部見て回ろう。何か手があるはずだ。


「レイア。時間は掛かる。でも必ず見つけよう」

「志導くん……でも……」

「一年、二年、三年。見つかるのはもっと先かもしれない。だけどどこかにきっとあるはずだ! 都市へ入る方法がっ」


 そう思う気持ちに、嘘はない。

 必ず見つける。必ずだ。


 俺の気持ちが伝わったのか、レイアは少しだけ笑った。

 その笑顔を、どこかで見た気がする。

 どこだっけ――と考えるよりも先に、ユタが声を上げた。


「ククククッ。アッアー。アレ、アッチ、ミテ」

「ん? ユタ、どうしたんだ?」


 何かを見て、と訴えるユタ。その方角はゴーレムたちがいる壁の方。


「何があるんだ、ユタ」

「アシ。ニンゲンノ足、アト」


 人間の足跡!?

 目を凝らすと、ユタの言う通り足跡らしきものがある。

 チビゴーレムに足はない。地面から少し浮いた状態で動いている。


 人間がいたのか!?

 

「んぉ。いいもんがあるじゃねえか。おいユタ坊。行くぜ」

「イックーッ」


 え、行くって……まさかゴーレムの方に!?


「ちょ、おじさんっ」

「すぐに戻ってくらぁ。お前ぇらはそこで待ってな」


 待ってなって、危険だろ!

 先に駆け出したユタが、大きく跳ねてチビゴーレムの前に躍り出る。ゴーレムが反応すると横に走り出し、奴らの注意を引いた。

 その隙にアッパーおじさんが、こちらに向かって何かを蹴り飛ばした。


「受け取れぇーっ」

「え? え? う、受け取れって?」

「く、来るわ、志導くんっ」


 ぽーんっと弧を描くようにして飛んできたそれを、ギリギリキャッチ。

 丸みを帯びたそれは――。


「うわぁっ!?」

「ゴ、ゴーレムの頭!?」


 煤で汚れているそれは、間違いなくチビゴーレムの頭だ。

 この煤、もしかして先日、黒煙を上げてたのはこいつ!?


「ウッヒョーッ。ユタ坊、戻るぞっ」

「ガッテン」


 戻ってきたおじさんとユタが、得意げに笑う。


「そいつを知らべりゃ、ちったーわかるかもしれねえぜ」

「こいつを……」

「だが町に戻ってからだ。ここじゃ妨害されるかもしれねえからな」


 索敵範囲外とはいえ、スキルに反応するかもしれない。

 そうだな。町でこいつをじっくり解析しよう。


「よし。一度町へ戻ろう、レイア……レ、レイア?」

「ふにゃっ」


 レ、レイアが猫の姿に!?

 な、なんで。エリクサーを飲んだのに。しかも一滴じゃなく、瓶の中身全部をだ。


「あー、体内のエリクサー成分が、怪我の治癒に全部回っちまったんだな」

「そ、それで猫の姿に……」

「うにゃあ~。エリクサーは飲んじゃったし、人の姿に戻れないにゃ~」


 いろんな意味で町へ戻らなきゃいけなくなったな。

 彼女をアッパーおじさんの背に乗せて、俺たちは南へ向かって歩き出した。


 この頭だけのチビゴーレムを壊したのは、おそらく人間。

 この地に足を踏み入れた人がいる――いったいどんな人物なんだろう。

 友好的な人物だといいんだけどな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ