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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
1章

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24/33

24:大小→作戦→砂嵐

「これ以上近づくと、都市の防衛システムに引っかかっちまうぜ」


 アッパーおじさんがそう言うので、今はこれ以上進めない。

 ここからだと、あの動いてる巨大な奴がロボットなのかゴーレムなのか見分けがつかない。


「志導くんの解析眼で、何かわかる?」

「いやそれがさ、距離があり過ぎるからなのか、反応しないんだよ」

「そう。目視系のスキルにありがちなことね。鑑定とかもそうみたいだから」


 へぇ。鑑定スキルなんてのもあるのか。

 輪廻転生課で見たスキル一覧にはなかったと思うけど、そもそも他の連中が取った後だったしなぁ。


「言っとくがなぁ、アレぁ一体だけじゃねえんだぜ」

「え? 他にもいるのか!?」

「あぁ。ちっこいのがうじゃっといやがるのさ」


 うじゃって、どのくらいいるんだ……。

 クソゥ。解析出来なきゃ、あれの正体すらわからないってのに。


「まぁ何とかならなくもねぇんだ」

「おじさん、それ本当なの?」

「あぁ。ただし壁の突破は無理だ。あの高さだしな。翼でもねえと、ありゃ飛び越えらんねぇぜ」


 飛び越えることが出来たとしても、それをやる間に攻撃されてしまう。

 一番は、アレを排除するか無効化することなんだけど。


「おじさん、なんとかなるってのは、近づけるってこと?」

「あぁ、そうだ。でけぇゴーレムは常に動いてんだが、小せぇ方は普段、壁ん中で待機してんだ」

「え、あれってゴーレムだったのか」

「あ? ゴーレムじゃなかったら、なんだってんだ」

 

 ロボット……とか。

 うん。言わないでおこう。

 

「先日の黒煙。何かがあって、それで小さいのも出てきたってわけね。でもあれから二日以上経ってるのに、まだいるじゃない」

「しつっけぇからなぁ、奴ら」


 小さい奴らが壁に入ってくれさえすれば、となるのはあのデカブツだけ。

 しかしそこでわずかでも壁に触れようものなら、再び小さい奴らが出てきてしまう。


「要は壁に触れさえしなければ、出てこないってわけか」

「そういうこった。だが壁の向こう側へ行こうとすれば、道具を使おうと触ることに変わりはねぇ。魔法を使おうとしてもな、魔力に反応しちまうのさ」

「へぇ。よく知ってるのね、おじさん」

「オッチャ、カシコイナ!」


 ユタが尊敬の眼差しを向けるが、アッパーおじさんは明後日の方角に視線を向ける。

 それから疲れ切った声で。


「あぁ、頑張ったんだぜ」


 とポツリ。

 その一言で、アッパーおじさんが何故詳しいのかわかった。

 都市に入ろうとして、何度も何度も壁に挑んだんだろう。そして何度も何度も妨害され、突破出来ずに今ここにいる、と。


「近づけりゃ、お前ぇのスキルでゴーレムの止め方かなんかわかんだろ?」

「だと信じてる」


 正直、何もわからないってのが本音だ。

 でも何かやらなきゃ一歩も進めない。やってみるしかないだろ。


「ふぅ……よし、だったらよく聞け。小せぇのはな、どこからでも出てくるわけじゃねえ。ちゃんと出入口があんだ。あのデカブツは巡回してるだけ。奴が出入口から一番遠い所に行った時が狙い目だ」

「小さいのが到着するまでの時間を、少しでも稼ぐ方法か」

「ダメな時は全力で逃げろ。奴らは壁から一定の距離までしか離れらねえ。深追いしないよう、命令されてるからな」


 誰に? と聞くと、おじさんは「昔々の魔導師にだよ」と答える。

 何百年も前に亡くなった人の命令を、今も忠実に守っているのか。

 なんだか少し、悲しいような。それでいて、どこか優しさも感じられる。

 正しく起動していたなら、頼れる連中だっただろうに。


「気付かれるまでは魔法を使うなよ。無駄に察知されちまう」

「小さいのが出てきても、志導くんの時間を稼げるように私たちで引き付けましょう」

「クアッ」

「お、おい。危険じゃないのか」


 だが三人は、普段と変わらず柔らかい表情を浮かべている。


「なぁに、心配すんねぇ」

「テヤンデー、テヤンデー」


 テヤンデーってお前……何かあったらユラが心配するだろ。


「志導くん。もしもの時はエリクサーがあるわ。大丈夫」

「あ……そうだった。でもっ。でも、死んでしまったら生き返らないだろ?」


 いくら万能薬といったって、怪我に対してだろうし。


「んもうっ。私たちのこと、信じてよ。あと安心させるために言うんだけど、ユタドラゴンってモンスターの中でも上位種に近いの。アルパディカもね」

「ユタドラゴンほどじゃねえがな。まぁそいつはチビだし――いてぇよ。ユラは卵を産んでまだそう経ってねぇから弱ってはいるがな。全快するにゃ、もう一年位かかるだろうよ」


 ユタドラゴンとアルパディカは、種族として強い。

 確かにそれは、安心材料になる。

 じゃあレイアは?


 訴えかけるように彼女を見つめる。


「信じて」


 真っ直ぐな眼差しでそう言われたら、俺はもう、信じるしかない。

 いや、信じる。彼女は強いって。

 三人が稼いでくれる時間で、俺はゴーレムに近づいて解析眼を使う。

 そしてあいつを止める!


「行こうっ」


 俺たちは駆けた。ユタとアッパーおじさんは、俺たちの足の速さに合わせてくれている。

 先に飛び出せばそれだけ、解析眼を使う前に見つかってしまうからだ。


 百メートルほどの距離まで近づくと、ゴーレムの姿がはっきりとわかるようになった。

 よく見るとこいつ、いくつもの四角いパーツで出来ている。岩……ではなさそうだ。

 そのパーツ一つ一つに、まるで血管のような線がいくつも走っているのが見える。

 青白く光るその血管は、どくどくと強弱をつけ脈打っていた。


【解析:ウォールガーディアン。古代魔法王朝時代に作られたゴーレム】


 解析来た!

 と同時に鳴り響く、空気を震わせるような冷たい音。

 ウウウウゥゥゥゥゥーっと、いつかアリューケの町で聞いたアレと同じ音だ。

 チッ。スキルに反応されたか!?


「解析眼っ。こいつの止め方を解析しろっ」


 普段なら頭の中でそう浮かべる言葉を、今は口にした。

 冷静ではいられない。

 ズンっと重く響く音。遠くの壁の一部が開くのが見える。

 早く。

 早く解析結果を!


「志導くんっ」


 レイアの声。

 だが解析は終わらない。

 直後、何かが俺に触れた気がした。

 いや、触れたんじゃない。覆った、そう表現するのが合っている気がする。

 そして、視界に浮かぶUIのウィンドウにノイズが走る。途端にそれは砂嵐となって、解析画面を浸食していった。


「え? どうなって――」

「志導くん、危ない!」

 

 その声にハッとなって振り向くと、レイアが飛び込んでくるのが見えた。

 俺の目に映ったのは赤い光を背負ったレイア。

 それと、ゴオォっと唸りを上げた――火球。


「レ、レイアアァァッ!」

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