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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
1章

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18/33

18:畑→伐採→井戸。

 「はぁ~……土魔法って、便利なものだなぁ」


 毛の誤解を解いて、朝食の後、今日やるべきことを話し合った結果――野菜畑の整理、だった。

 といってもアーサ畑を耕すのではなく、教会の裏手に家庭菜園を作るというもの。


「魔法っていうけどね、これは精霊魔法なのよ。精霊の力を借りてやってるの」

「へぇ。これが精霊魔法かぁ」


 奥さんのひとりが、教会裏の土を耕してくれた。

 俺はそこに、朝方拾い集めてきた種を撒く。

 更に――。


「お待たせ。それじゃあ浄化するわね」

「ごめんな、レイア。わざわざ人の姿に戻ってもらって」

「いいのよ。私だって日差しの下で、人に戻りたいもの。それに食料は大事だから」


 猫の姿だと浄化の魔法は使えないそうだ。だから必要な時に、エリクサーを飲んでもらうしかない。

 リンゴの木の周辺はニーナが守っていたから汚染されてはいないけど、さすがに畑はその範囲を超えてしまう。それでレイアに土を浄化してもらう必要があった。


「空気はもう完全に魔素が浄化された状態だ。土も深ーい所までは汚染されてねえし、表面を浄化すりゃ問題ねぇ。そのうち魔法で浄化しねぇでも、正常化するだろうぜ」


 その言葉を聞いて胸が高鳴る。

 土の深い部分は汚染されていない。魔導装置の浄化機能があれば、まだこの世界の土は安全な野菜を育てることが出来るんだ。


 レイアと視線を交わし、笑顔で頷き合う。

 ここからだ。ここからいろんなものを再生して行こう。


「あ、そうだ。畑を作るなら、あれも必要になるだろうから修理しとくか」

「あれ?」

「そ。あれだよ、あれ」


 前に見つけた井戸を指さす。中は暗くて水の様子も見えないけど、まずは滑車の修理だな。

 修理に必要な素材。それは解析しなくても見ればわかる。

 木、だ!


 土の浄化と種まきをレイアに頼んで、素材になる木材を探して町へと出た。

 ユタとユラが一緒に来てくれるから安心だ。


「あの辺の木、伐採出来ればいいんだけどなぁ」

「出来る、わよ」

「え? 出来るって、ユラ、どうやって?」


 ギランっと、ユラが鋭い爪を見せる。

 いやいや、爪で木は伐れないだろう。


 そんな風に思っていた時期が俺にもありました。

 ユラが「クァウッ、クァウッ」と二度吠えると、彼女の体から淡い光が放たれた。

 そしてドドドドドドッと地を蹴って走り出すと、木の左に回り込んで腕を振る。

 爪の先が幹に当たるかどうかのギリギリライン。

 だが次の瞬間、木はミシミシと音を立てて倒れた。


「マ、マジかよ! うわっ。すげぇ。スパっと切れてるじゃんっ」

「ふふふ。これぐらい、どうってことないわ」

「ドーッテコト、ネェゼ」


 お前が切ったんじゃないだろ。

 倒れた木は、万能クラフトの画面を開いて押し当てると、全部にゅるっと入った。

 これ一本で結構な木材が手に入ったぞ。


「まだいる?」


 んー……。


「もう二、三本頼むよ。そうしたらしばらく薪の用意もしなくていいしさ」


 他にもクラウトしたいものもあるし。テーブルとか椅子とか。


 合計四本の木をインベントリに入れ、教会へと戻る。

 土の浄化は終わり、レイアとニーナが耕された土に種を植えている最中だった。


「ただいま。手伝うよ」

「おかえりなさい、志導くん。大丈夫。もうすぐ終わるから。ね」

『おかえりですの、志導お兄ちゃん。ニーナ、お手伝いしたですから、終るです』


 そういうことなら、俺は井戸の修繕に取り掛かろう。

 まずは滑車を解析。縄を引っかける丸い部分と、それを支える枠。

 まぁ解析結果は、当然ながら木材が朽ちて使えないというもの。

 これは修繕というより、そっくりそのまま新しいものを作った方が良いな。


 いつものようにゲームのUIに似た万能クラフト画面を開いて、解析眼がダウンロードした滑車構図、サイズをそっくりそのままクラフトする。ついでだ。屋根と柱も新品にしとくか。


「あとはこれを建てれば……どうやって建てよう……」


 ハンモックは紐だし、画面から取り出して人力で設置した。これはどうする? 取り出したところで、重すぎて持ち運べないぞ。

 何か方法はないか――そう考えていると、クラフト画面に新しいボタンが現れた。

 


【設置する】


 というボタンだ。

 どんな風にやるのかわからないけど、とりあえずやってみればわかるさ。

 ボタンを押すと、今度はクラフト画面で作ったものの輪郭線だけが現れた。


「おぉ!?」

「ん? どうしたの、志導くん」

「いや、ここに井戸の……あれ、見えてない?」

「え?」


 あれ。この輪郭線、他の人には見えていないのか。

 それに、俺が視線を動かすと輪郭線もついて来る。設置する場所を自由に変えられる、そんな仕組みなんだろう。


 輪郭線を井戸の上に合わせると、クラフト画面に反応があった。

 今あるものを素材として回収しますかって出てる。リサイクル機能まであるのか。へぇ。


 ボロボロの滑車たその他をリサイクルし、更にロープとバケツもクラフトして井戸の完成!


「さぁ、水はどんな状態かなぁ」

「あ、完成したのね。これでいつでも水が汲めるわ」

「あぁ。雑貨屋にあった水の石を使わなくてもよくな――らないかもしれない」


 バケツで汲み上げた水はどす黒く、どうみても汚染されたもの。

 うわぁ、せっかく新しく作りなおしたのにぃ。骨折り損のくたびれ儲けだぜ。


「大丈夫よ、志導くん。浄化すればいいんだし」

「レイア……」

「ほら――不浄なるもの、汚れしもの。清め、真の姿となれ」


 レイアが唱えた呪文が効果を発揮する。

 バケツで汲んだどす黒い水が、一瞬にして透明なものへと変わった。


「んっ。んー、美味しい」

「レ、レイア!」


 彼女は躊躇うことなく、バケツの水を掬って飲んだ。


「ね、大丈夫」

「あ、あぁ、そうだね」


 レイアはずっとこうして生きてきたんだ。汚染されたものは浄化する。それで安全に飲めるし、食べられる。だから不安なんてない。

 俺も彼女を信じよう。これまでこの世界で生きてきた彼女を。


 バケツの水を、俺も手で掬って口に運ぶ。

 ニオイなし。味も普通。

 本当にただの水だ。


「水が汲めたのなら、土に撒いてくれるかしら~?」

「はーい」


 木材でジョーロをクラフトし、水を入れてレイアと一緒に畑へと向かう。

 なんだかスローライフっぽくなってきたぞ。

 さぁ、次は何をクラフトしようか。

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