表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/33

17:最高の目覚め→収穫→スケベ。

「んん~……はぁ、意外といいもんだなぁ、ハンモック」


 目覚めは最高だった。

 どう最高かと言うと、全身の節々が傷まなかったことだ!

 

「おはよう、レイア」


 教会の隅に設置したハンモックでは、猫の姿に変わったレイアが毛づくろいをしていた。


「おはよう、志導くん。ハンモック、寝心地よかったわね」

「だよな。いやぁ、ハンモック最高。君が糸の原料になる草を見つけてくれててよかったよ」


 じゃなかったら今朝も全身バッキバキだったろうし。

 解析眼で実物を解析していたおかげで、クラフトするのも簡単だった。素材の糸も大量にあったし。


「でもこれから冷えてくるから、ほら、ユタとユラが狩りしてくれたキラーラビットの毛皮。あれを加工して敷いたほうがいいかも」

「キラーラビット? あの兎、そんな物騒な名前だったのか!」


 殺人兎じゃん。おぉ、怖っ。

 でもレイアの意見には納得する面もあった。

 確かに寒いんだよ。いや、まだ寒いって程じゃないけど、明け方は少し冷える。なんとか焚き火の熱でしのげたけど、一週間後はどうなるか。

 兎の毛皮を敷くのはいいとして、掛ける方をどうするかだなぁ。


 そんな時、俺の視界にアッパーおじさんが映った。


「あの毛で毛布とか編めたらなぁ」

「そうねぇ。絶対暖かそうよね」

「レイアもそう思う? 思うよなぁ」


 あの毛、いただけないものか。

 そのアッパーおじさんはというと。


「ほらあなたっ。火が消えかかっているわよっ」

「わ、わかってらぁな、かあちゃん」


 昨夜、五頭の奥様方に何も告げずこの町へとやって来て、そして暗くなっても戻らなかった。

 それで心配した奥様方が探して、見つけたのは美味そうにニンジンを食っている旦那の姿。

 そりゃあ怒るよなぁ。だって何十年もニンジンを食べていなかったんだし。旦那だけ美味いもん食ってりゃそりゃあさ。


「アッパーおじさん。一晩中、焚き火の番してくれてありがとう」

「お、おおぉぉ。志導ぉぉぉぉぉ。お前ぇだけだぜ、そんな優しい言葉かけてくれんのは」


 おじさんは罰として、奥様方から火の番を言い渡されていた。そのおかげで俺たちも、震えずに眠ることが出来たんだ。お礼ぐらい言うさ。


「志導、この人を甘やかさないでね」

「そーよそーよ」

「放っておくと夫殿は、あっちへふらふら、こっちへふらふらするのよ。きつく言わねばならぬこともあるわ」

「か、かあちゃんたち……わ、わしは人間たちと話しがあってだなぁ」


 奥さんに頭の上がらない男って、人間だけじゃなくモンスターでもそうなんだな。


「まぁまぁ。それよりも、みんなで朝食を収穫しにいかないか?」


 野菜は――もう、ない。といっても「ここに」ないだけだ。

 収穫という言葉を聞いて、アッパーおじさんの奥様方の目が輝いた。


「「行くわっ」」


 も、もの凄い勢いで返事をされた。長い睫毛で瞬かせ、大きな瞳で俺をじっと見つめる。

 うっ。あ、圧が凄い。






「ンアァァ」

「そうね。今日、は、太陽がしっかり、出てるわね」


 今日はみんなでアーサ畑へとやって来た。アルパディカの雌五頭も一緒だ。

 全員、おじさんの奥さん、らしい。 


「アーサを刈らないと、探しづらいわよね」

「そうだね。でもまぁ、しゃがんで探せばいいさ――」


 そう言った途端、シュパシュパっと風を切る音が聞こえた。それから草が落ちる音も。


「え……」


 アーサが、宙を舞っている。


「どうせ来年にゃまた生えてくるんだ。ぜーんぶ刈り取っちまえ」

「そうね。じゃあ全部切っちゃうわよぉ~。そ~れっ」


 奥さんの一頭が首を振ると、風が吹いた。視覚化されたその風が、一瞬にして大量のアーサを刈り取っていく。


「ま、魔法!?」

「んあ? おうさ、魔法だぜ。わしらアルパディカは、魔法が得意な種族なんだよ」

「おおおぉぉ。凄い。へぇ、風の魔法かぁ――あ」


 感心して見ていたら、その奥で別の奥さんが別の魔法を使っていた。

 足で軽く地面を踏むと、ぼこぼこと土が盛り上がって――埋まっていたニンジンが出てきた!

 え。つ、土の魔法?


「ほらほら、こっち。志導、来てみなさい」

「え? あ、はい」


 土の魔法を使っていた奥さんに呼ばれてそこへ行くと、彼女が首を下げて地面に鼻先を向けた。


「ここ。ほら、トウモロコシよ」

「トウモロコシ……あっ、本当だ!」

「まだ芽が出ていないから、拾っておきなさい。ちゃんとした所に蒔きなおせるわ」


 種を撒く……栽培出来る!

 大事に拾い上げたトウモロコシの粒は、ポケットから取り出したハンカチに包む。

 この奥さんが他にも見つけてくれ、何種類かの野菜の種を手に入れた。

 食材が増える。それだけでもう感動ものだ。


「よぉし。みんな、野菜は持ったか~?」


 朝食用なら、そんなに数はいらない。

 いらないはず、なんだけど……。


「みんな、収穫しすぎじゃないか?」


 アルパディカたちは、全員がニンジンの葉っぱを咥えている。しかも一本じゃない。それぞれが五本以上咥えている。よく見たらおじさんの背中にも何本か乗ってるし。

 そしてユタとユラもニンジンやジャガイモ、タマネギを抱えて持っている。

 レイアは……ジャガイモでも掘ろうとしたのか泥まみれだ。


「ほーか?」

「残してても仕方ないでしょ?」

「アーッ」

「放っておくと、花が咲いて、味が落ちてしまうわ」


 そうだけど……。んー、まぁ夏でもないし、土から掘り起こして置いてても腐ったりしないか。

 みんなで教会へと戻りながら、ふと、あることを思った。


「おじさん。昨日、奥さんたちと移住だとかなんとか言ってたけど」

「んお? ほーらな」

「ニンジン咥えたままじゃ喋りにくいだろ。俺が持つよ」


 おじさんが咥えたニンジンを受け取り、それを脇に抱え直す。


「そうだな。ここは空気も綺麗だし、子育てする環境にゃバッチリだ。な?」


 おじさんがそう言うと、奥様方もみんな頷く。


「そっか。町で暮らすのか。……じゃあさ」


 ここは思い切ってお願いしてみよう。俺とレイアの死活問題でもあるんだし!


「おじさん。住む場所を俺のスキルで整えるからさ、だから……だからおじさんの毛をくれないか!」

「わしの……毛?」

「そう。おじさんの毛だ」


 もちろん奥様方の毛も頂きたい。これから寒くなるっていうなら、表面の方を少しずつでもいいんだ。

 なんて考えていると。


「わしのどこの毛だ!? どこの毛がいいんだ、このスケベ!」

「は? いや、え? ス、スケベ?」


 ス、スケベってどういうこと!?


「ぷふーっ。にゃっ。にゃははっ」

「ちょ。レイア笑わないでくれよっ」


 何かがツボったらしい。レイアは突っ伏して笑い、長い尻尾がくねくねと動く。

 袖を引かれて視線を下に向けると、ニーナが眉尻を下げて俺を見ていた。


「志導、お兄ちゃん……スケベ、なの?」

「ちょ。違うっ。おいアッパーおじさん! 子供の前でなんてこと言うんだ!」

「クッククッ」

「ユタ。お前まで同情するような目で俺を見るなよ!」

 

 俺は雄のアルパディカに対して、下心なんて絶対に――ない!!

 ないったらないぞ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ