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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
1章

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14/33

14:野菜炒め→家族会議?→異変。

「ただいま! ニーナ、見てくれっ」


 小走りで教会へと戻って来ると、ニーナ、ユラ、ユタが待っていてくれた。

 おっと。今日も兎を仕留めてきたんだな。


「オ、オオ」

「おかえりなさい。何を見つけた、のかしら?」

「オ! オエーリッ」


 おかえりのつもりか? こりゃまたミッションをやらないとな。

 

「見てくれよユタ、ユラ。ニンジン、ニンジンだよ、えっと、わかる?」

「にゃ~ん。他にもジャガイモとタマネギもあったのよ」


 そう。あのアーサ地帯には、他にも野菜が実っていた。

 収穫できたのはこの三つだけ。他にもまだあったが、実が生ってないものや、収穫時期をとっくに過ぎてしまっていた。


 差し出したニンジンに鼻先を近づけ、ユラはフンフンとその匂いを嗅ぐ。


「知ってるわ。私、たちも食べることがあるから」

「そっか。じゃあ一緒に食べよう」


 俺とレイアの分で一本。これは炒めて食べたい。

 

「待って志導くん。そのままじゃ食べられないわよ」

「え? ど、どういうことだい、レイア」

「説明する前に、私、人の姿に戻るわね」


 ということで俺は外に出て、彼女が服を着るのを教会の裏手で待つ。

 ん……あれって、井戸かな?


「中はどうなってるのかな。――の前に、汲み取り用のバケツとか滑車とか、全部ボロボロじゃないか。こっちは保存魔法をかけてなかったんだろう」


 まずは修理しなきゃ、中に溜まってる水すら汲み上げられない。


「志導くん、お待たせぇ~」

「お、じゃあ戻るよ」


 中へ入ると、人の姿に戻ったレイアが出迎えてくれた。


「志導くん。野菜を全部出してくれる? 汚染地帯で実った物はね、どれも同じように汚染されてるの」

「え? ってことは、それを食べると体調を崩す、とか?」

「その通りよ。食べ続けてたら命の危険だってあるんだから。でも大丈夫、こうしてね――」


 レイアが俺にはわからない言葉を呟くと、彼女の手が光り出す。そして抱えた野菜を包み込むと、少し煤が付着していたような野菜が綺麗になった。


「も、もしかして、あの黒ずんでた煤みたいなのが、汚染?」

「えぇ。これでもう食べられるわ。今のは浄化の魔法。こうしないと食べちゃダメなのよ。あっちの兎も浄化しておくわね」

「浄化!? お、俺たち、昨日、肉食べてるよっ」

「そうね。でも大丈夫。モンスターはもともと、汚染に対して抵抗力を持ってるから」


 よ、よかったぁ。うわぁ、何も知らないでうっかり食べてたら、大変なことになっていたかも。

 そういえば、ニーナがリンゴは汚染されてないから大丈夫って言ってたもんな。

 それってつまり、汚染されてるのは大丈夫じゃないってことだし。


「それじゃ、食事にしましょう。鍋とかフライパンは、私が持ってるから。料理は任せて」

「おぉ! じゃ、よろしくお願いしますっ」


 笑顔のレイアが、手際よく準備を始める。

 コンロなんてものはないけど、焚き火を使って野菜と兎肉を炒めはじめた。

 ジューっという肉の焼ける音。

 もうそれだけで米を二杯食えそうだ。


 彼女が料理をしている間に、こちらは盛りつけようのお皿をクラフトしておく。

 石のお皿だ。それを焚き火の側に少しだけ置いて温める。料理が冷えないようにね。


「さ、完成よ。味付けは少しの塩と香草しかないから、ちょっと薄味だと思うけど」

「いやいや、十分だよ。こんな世界じゃ、きっと塩も高価なんだろうし」


 クラフトした石に盛りつけられた野菜炒めは、めちゃくちゃ美味そうなニオイを漂わせていた。

 肉が多めなのもあって、この一品で十分。腹は満たされる。

 何より手料理だ。それだけでウマい!

 

「ご馳走様。はぁー、美味かったぁ。兎の肉、野菜炒めにも合うな」

「ほんとねぇ。久しぶりに野菜をいっぱい食べられたわぁ」


 野菜をいっぱい、か。ニンジンとタマネギの二種類だけなんだけどね。

 ジャガイモは晩御飯に残す頃にした。蒸かして食べれば、主食の代わりにもなる。


「さて……ここで話し合っておきたいことがあるんだ」

「話し合う?」

「そう。今後、どうするかってこと。最終的な目的はさ、レイアの呪いを解くこと。それから都市の魔導装置を起動させて、魔素の浄化範囲を広げる事だ」

「そ、そうね……でも今のままだと、都市には入れそうにないんでしょ?」


 俺とレイアがニーナを見つめる。


『たぶん……とっても、難しいです、の。近づくと危険』

「だよなぁ~。中に入らず、魔導装置の防衛システムを停止させる方法があればいいんだけど」

「他の町はどうなっているのかしら。そっちにヒントとかあればいいんだけど」

「他の町? 魔法王朝には、アリューケみたいな町が他にも?」


 そう尋ねると、ニーナとレイアが視線を交わす。だが口を開いたのはユラだ。


「魔法王朝の都市。その周り、五つの町がある、わ。ここは、その一つ。都市から南東の位置、よ」

「五つ……」

『その五つが、全部、都市を守る結界、作ってたです』

「そうだったのか。各町の魔導装置が動いているかどうかって、わかるのかい?」


 その問いにニーナは首を振る。

 わからない――ではなく、『壊れてる、です』という答えだ。


「簡単にはいかないわね」

「そうだね、レイア。でも焦らず、少しでも安全な方法で都市へ入れる手段を見つけよう。長期戦になるのは必須だし、まずはさ、ここでの生活環境を整えようと思うんだ」

「生活、環境?」

「そ。周囲の探索も必要になるだろう。町に戻って来てからさ、出来れば快適に過ごしたいじゃん?」


 ベッドの件は、午後からハンモックを編んでなんとかする。

 でもそこで終わりじゃない。

 さっきの井戸とか、この教会とか、人が住めるようにしたいんだよね。

 せっかくそれが出来そうなスキルを持っているんだし。


「快適……そうね。うん、その通りよ。生活環境の整えに賛成~」

「クッ? サ……シェーッ」


 ユタが立ち上がって、尻尾をビタビタ打つ鳴らし万歳をする。

 

「埃、舞うから止めなさい」

「クアッ! ク、クウゥゥゥ」


 はは。ユラに怒られて拗ねてやがる。


「よし。それじゃ俺たちの当面の目標は、ここを暮らしの場として住みやすくすることだ」

「えぇ」

「クッ」

『ニ、ニーナもお手伝いするですのっ』


 決まりだ。それじゃあまずは――。


『あっ』


 ニーナが突然立ち上がり、町の中央の方へと視線を向けた。


「どうしたの、ニーナ?」

『魔導装置……なんだか変んな音、してるです』

「なんだって!?」


 まさか壊れた?


「レイアは留守番をしててくれ。そろそろ猫の姿になる頃だろ?」

「そ、そうね。ごめん、直ぐに追いかけるから」


 ニーナと、それからユタと一緒に塔へと向かった。

 けど、俺には特に音なんて何も聞こえない。

 解析眼の方でも、特に問題を表示していなかった。


「ニーナ、どう?」

『ん……今、大丈夫、みたい。とっても古い装置。長い間、動いてなかったから、それが動くようになって、装置もビックリ、しているかもですね』

「どっか錆びてるのかなぁ。まぁ解析眼の結果だと、どこもおかしくはなってないようだし」

「クアァァ~」


 何事もなく、それが退屈なのかユタがおいきな欠伸をした。

 

「じゃ、戻るか。また何かあったら、直ぐに知らせてくれよ。ニーナ」

『はいです』


 塔から出て教会の方へと向かう。

 天使にお勧めされて思わず取ったこのスキル。取った甲斐はあったな。

 めちゃくちゃ役に立ってるよ。


 ――でしょでしょ~。


 ん?


『志導、お兄ちゃん。どうしたですか?』

「クオォォ」


 今、あいつの声が聞こえたような……。

 いや、いるわけないよな。あんだけ忙しそうにしていたんだし。

 あの輪廻転生課の天使。

 やたらインパクトは強すぎたせいで、あいつの幻聴が聞こえるとはな。

 ははは。


「何でもない、何でもない。さ、帰ろう」

「志導くーん」


 歩き始めてすぐ、猫のレイアが駆けて来るのが見えた。

 通りに風が吹き、木の葉が舞う。

 彼女と合流する直前――それは突然鳴った。


 ウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥーッ。


 空気を引き裂くような、けたたましいサイレンの音。足元の地面がわずかに振動する。

 

「な、なんだ!?」

「キャァァァーッ」

「クックアァァッ」


 すぐにサイレンの音は止んだ。けど、空気を震わせる残響を、まだ肌で感じるほど。

 同時にさっきまで吹いていた風も止んだ。

 血の気が引くような、そんな錯覚に襲われる。


 嫌な予感がする。

 いったい今のは、何だったんだ。

 



*****************************

サイレン・・・それは裏の世界が開く警告音。

人ならざる異形の怪物が蠢く・・・

ん?

そんなゲーム(映画)あったな?

ん?


次回

【サイレンの原因→修理→もっふもふやぞ。】


ブクマと★もよろしくだぜベイベー!

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