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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
1章

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13/33

13:アップロード→草刈り→これは!?

「解析眼!」


 再び建物内へと戻り、室内に置いてあったコレ――ハンモックを解析する。

 目的は、作り方を調べるためだ。


【解析結果:ハンモック。太い紐を使って編んだもの】


 うん。それは知ってる。

 そうじゃなくって、俺が知りたいのはその編み方なんだって。

 

【編み方を解析――完了――万能クラフトへアップロード――完了】


「よし! あとは紐さえあれば作れるぞ」

「ほんとに!?」

「あぁ。でも……紐、なぁ」


 解析したこのハンモックの紐も、ちょっと引っ張っただけでブチブチ切れた。

 ベッドの板が朽ちかけるぐらいだ。紐だってダメになってるだろ。


「それなら大丈夫よ」

「え? 大丈夫って、アテがあるってこと?」

「うんっ。この近くにね、糸の原料になる植物がいっぱい生えてたの。私が生まれ育った集落で栽培してたのと、同じ植物だったわ」


 おおおぉぉぉ! 持つべきものは現地の友!


「よし。まずはエメラルドを交換して、それから草刈りだ!」


 塔へ行って、魔導装置のエメラルドを交換。先にセットしていたエメラルドを、レイアへと返した。


「レイア。俺のスキルでブローチに戻せると思うよ。留め具、持ってる?」

「えぇ。魔法の巾着に入れてあるから」


 彼女が腰からぶら下げた巾着中に手を突っ込み、ブローチの留め具一式を取り出した。


「それって、見た目に反してたくさんのものを入れられる、魔法アイテム的なもの?」

「えぇ、そうよ。あなたのインベントリと違って、こちらは中の空間サイズが決まってるの。んー、これくらいの箱四つ分、ぐらいかしら」


 彼女がこのぐらいとジェスチャーしたサイズは、みかん箱ぐらいか。結構入るんだな。

 

 レイアから留め具を受け取り、それとエメラルドをインベントリへ。

 万能クラフトを開き、さっきの二つを素材に選択すると【修繕】という項目が出た。

 それを押せば、一瞬で元通り。


「出来たよ、レイア」

「わぁ。本当に元通りだわ。ありがとう、志導くん」


 受け取ったブローチを、レイアは大事そうに両手で包んだ。

 彼女の笑顔が見れて、本当によかった。

 

「こちらこそ、あの時咄嗟に貸してくれて感謝してるよ」


 改めて装置を起動させる。あの家で見つけたエメラルドでちゃんと装置が動くか、確認しないとな。


「ニーナ、どうだい?」

『大丈夫、ですの。ちゃんとお仕事、出来てるです』


 お仕事ってのは、魔素の浄化のことだろう。

 よし、次は草刈りだ。

 レイアに案内されたのは、塔からやや南東に行った場所。

 建物の痕跡となる瓦礫は一切なく、元々この辺りには何もなかったことが伺えた。


 駆け抜ける風が心地いい。初めて訪れた時と比べて、ここの空気は確かに綺麗になっている。

 レイアが立ち止まったのは、長ーい茎の植物がびっしりと生い茂った場所だ。


「ずいぶんと背の高い草だなぁ。これが例の?」

「そ。よく育ってると、二百五十センチぐらいになるの。じゃ、さっそく切っていくわよ」


 レイアは剣を抜き、それを一閃。

 ヒュンッという風を斬る音がすると、何本もの茎が一斉に舞った。


「おぉ、お見事。いやでも、草刈りに剣を使うとは……」

「だって、こっちの方が早いんだもの」


 苦笑いを浮かべて、彼女が刈り取った草を拾い集めた。それをインベントリへと押し込んでいく。

 足元の草を収納するだけで、既に掌が青臭くなっていた。


「お。クラフトメニューに、繊維の抽出って項目が出てるぞ。そのまま糸に加工も出来るのか」


 草を拾い集めながら、同時にクラフト作業も進めていく。量が多いと、さすがに少しだけ加工するのに時間がかかるようだ。

 まぁまずは全部拾ってしまわないと、な――。


「うわぁ!? レ、レイア?」


 テニスコート二、三枚分ほどの広さがあったはずなのに、気づけばその半分近くが禿げていた。


「ふ、ふにゃあ~。志導くん、志導くんここ」

「レイア? ど、どこだ……いたっ」


 刈られた部分とそうでない部分の境界線で、猫の姿に戻ったレイアが出てきた。

 本人はもちろん、地面に落ちた剣も服も草まみれだ。

 ちょっと笑いが込み上げてきたが、そこはぐっと我慢。


「大丈夫か?」

「うん。でも途中で猫になっちゃって。全部刈りたかったのに」


 いや、十分過ぎだろ。

 俺がちょっと糸づくりしている間に、テニスコート一枚分を禿げさせるなんて……。

 よ、よし。俺も頑張るぞ!


「この草、アーサって言うのか」 


 麻みたいなものかな?

 長ーく伸びた草は細く、でもこのサイズになるとそれなりに重い。な、なかなか地道な作業だ。

 何度も何度も、しゃがんでは草を拾い、一歩前進してはしゃがんで草を拾い。

 単調な作業でも、これはかなり腰が痛い……。


『ニーナもお手伝い、するです』

「おぉ、ありがとうな、ニーナ」


 小さな体で、自分より遥かに背の高い草を抱えるニーナ。草を抱えているというよりは、草に翻弄されている。あっちにフラフラ、こっちにウラフラ。

 猫のレイアも一本ずつ加えては、俺の傍まで運んでくれた。


 三人で協力して全ての草をインベントりに入れ終える頃には、もう昼になっていた。


「ふぅ。一旦戻ろうか」

「んにゃ。そうね、ユタとユラも戻って来てるだろうし」


 ユラが息子に狩りの仕方を教えるんだといって、二頭とは今朝から別行動。昼には戻ると言っていたから、もう帰ってきているかもしれない。

 

『ユタ、たち、戻ってきたですの。ニーナ、先に戻ってるですね』

「そっか。じゃあ俺たちも今から戻るからって伝えてくれる?」


 ニーナは笑顔で頷き、それからすぅっと光になって消えた。

 あんな風にして消える姿は、神様っていうか、なんかだ精霊っぽい。

 ま、どっちも人間じゃないっていう点は同じだけど。


「さて、戻ろうかレイア。……レイア?」


 さっき自分で禿げ散らかした場所を、レイアがじっと見つめて動かない。

 

「レイア、戻ろうよ」


 背後からそう声をかけると、猫のレイアがぷるぷると震えながら振り返った。

 その瞳は、キラキラと輝いてい見える。


「ど、どうしたんだ、レイア?」

「し、志導くん……私、す、凄いもの、見つけちゃったかも」

「凄いもの?」


 何だろうと思って彼女の側へと向かう。

 地面から十五センチほどの高さで綺麗に刈り揃えられたアーサの茎の根元。

 なんとそこに、懐かしくも感じる見慣れたものが埋まっていた。


 スーパーに行けば当たり前のように並んでいるそれ。

 土から少しだけ顔をだしているのは、オレンジ色の――。

 

「こ、これってまさか……」

「えぇ、そのまさかよ!」


 俺とレイアが視線を合わせる。それから二人同時に、


「「ニンジン!」」


 ――と叫んだ。

 




***********************


そのニンジンは誰のもの?

飢えた男は猫と幼女を交互に見た。

渡してなるものか。これは俺のだ!


次回

【野菜炒め→家族会議?→異変。】


ニンジンを巡るサバイバル会議が始まる!?



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