第235話 『ここまでする奴があるか』
有咲と陽の通う学校名前どうしよっかなぁ、そうだ、エスカレーター式の女子校にしよう!
どんな名前にしようかな……あれ?女子校の正式名称ってなんだ?分からんから実在のを参考にしよう!
女学園で検索→見事に風俗店しか出てこねぇや!
なトラブルを乗り越えた回です
妙にくすぐったい自己紹介を終え、笑いも治まってきた頃。
最初に口を開いたのは、護だった。
「そういや、2人の通ってる彩女ってもしかして彩原女学園高校の事か?」
「およ、せーかい。護君の冷津波と違って彩女ってそこまで有名じゃ無いと思うけど、なんで知ってるん?」
「あっ!去年の夏の大会!確か県大会でウチのバレー部が冷津波と当たってたような……!」
「そうそう。そこで明楽……あぁ、カレットな。アイツが助っ人で出ててさ。ウチの女バレ、実は結構人数厳しくてさ、そんな中で1人怪我人で出ちゃって、この大会だけでいいから助っ人として出てくれって言われて出たらしいんだよ」
もしかして……!と記憶を探り当てた陽に、正解を告げて護は過去の情景を思い出すように、少し目を細めて楽しげに語る。
「うっわぁ、なんか漫画みたいね。去年って事は1年でしょ?凄いわねー」
「アイツ運動神経はめちゃくちゃいいからな。それに、物覚えもいいし空間把握能力も高い。穴埋め程度なら普通にこなせるんだよなぁ。なんなら最後の方とか普通にスパイクとかサービスエースとか決めてたし」
「うひゃーますます漫画の世界ね。なんで魔法なのかしら……と思ったけど軽戦士もやってたわね。だいぶ動けるし、納得だわ」
護の語るまるで漫画のような思い出話に、有咲はけらけらと笑って相槌を打ち、《EBO》でのカレットの姿を思い出して納得納得と1人で自己解決していた。
「っていうか、去年って言うならそれこそ2人は中学生だろ?むしろなんで知ってるんだ?」
「ほら、彩女ってエスカレーター式だから。中等部と高等部の繋がりも結構あって。その時期はちょうど十何年ぶりだかの県大会出場って事で横断幕を新しく作ろう!って事になってね。その年にちょうど高等部に行った美術部の先輩に呼ばれて横断幕作り手伝ってたんだ。その時に初戦の相手があの冷津波だって先輩達が言ってたから、それでかな」
「そういえば話題になってたわねぇ。めちゃくちゃ強い訳じゃないけどめちゃくちゃ記憶に残るプレイをするあの冷津波と初戦から!?ってすごい盛り上がってたわ」
冷津波第一は部活動にも力を入れている高校だ。
だが、それはイコール強豪校という訳では無い。特に、女子バレー部は人数ギリギリの過疎部活だ。では、何故あのと言われる程に他校に名が知れているのか。
それは簡単。冷津波は、記録には残らないが記憶には残る高校として有名だからだ。
遠くに弾かれたボールを観客席まで突っ込みながら上げた、だとか、執念の顔面ブロックだとかネットとブロックの隙間を突く超スレスレアタックを成功させてそのバウンドボールに逆襲されるだとか、まともなスーパープレイから笑いを誘うようなプレイまで、何故かそういった記憶に残るプレイングに愛されているのだ。
「はは、結局初戦は負けてるけどな」
「いやいやいや、ブロックでネットの横についてる棒をへし折ったりブロックされたスパイクを上げたりめちゃくちゃ高くレシーブして天井にボールぶつかったとか、色々スーパープレイと珍プレイをされまくったって噂よ?」
「はははうわさはうわさだよきにすんなきにすんな」
「護、棒読みだよ?」
天井にボールカチ上げた犯人の保護者として、死んだ魚の目でこの話は断固拒否させてもらう!とばかりに護はスルーした。若干出来ていなかった。
あと棒は折ってないから。留め具が外れて吹っ飛んだだけだから。と心の中で弁解もしておく。
「それとさ、もう一個気になってる部分があるんだけど」
「おん?なになに?花のJKのリアル情報になにかご興味が?」
「りーちゃん、言い方がおっさん臭いよ……」
「うん。なんかそう言われるとめちゃくちゃ言う気失せるけど、リアル情報かはグレーゾーンだから言うわ。向こうにあるシミュレーターでさ、『シノハラ』って名前の奴がランキングに乗ってたんだけど……もしかしてお前か?」
思い出すのは、護達がプレイする前のバトルシミュレーターのランキングに君臨していた(過去形)唯一の星付きネームである謎の人物『シノハラ』。
あえて言及はしていなかったが、曲がりなりにもトッププレイヤーの一角として対抗心を燃やしていた部分はあるのだ。
その当人の可能性がある人物が目の前にいる……確かめられずには、いられなかった。
「およ、護君もやったの?そうそう。私が『シノハラ』よ。別に『リーシャ』でもよかったんだけど、遠足だし何となくね」
「そうか……それは、悪い事をしたな」
「ほ?悪いこと?」
「あぁ。その記録、俺と『カレット』と『リクルス』が塗り替えたわ」
「えぇぇぇぇぇ!?……って言いたいところだけど、うん。3人なら納得だわ。私だって張り合いある相手いなくて流してやったし?まぁしゃーないわね。うん。しゃーない。うん。んじゃちょっと私この後行くところあるから、じゃあね」
「さすがにそれはあからさまにあからさまだろ……」
「もうそれ隠す気ないでしょ……?」
薄ら笑いを貼り付けた顔で席を立ち、まっすぐバトルシミュレーターの方へと向かう有咲の後を、半目でじとっ……とした視線を向ける陽と苦笑する護が追う。
どうやら、『リーシャ』と『メイ』、そして『リクルス』と『カレット』の遭遇は近そうだ。
◇◇◇◇◇
「ずりぃぞちっくしょぉぉぉあぉぉぉぉ!!!」
「わーっはっはっはっはっはっ!やっぱり私がナンバーワン!」
「しずかに……して……くれ……」
脇目も振らずに真っ直ぐバトルシミュレーターに向かう、え?全然気にしてませんけど?みたいな風体を装ってると自分だけが思ってる有咲と、追い掛ける陽と護。
目的地に到達した3人が目にしたのは、四つん這いになって慟哭する『リクルス』こと瞬と、その目の前で随分と調子に乗って勝ち誇っている『カレット』こと明楽。
そして、死んだ魚のような瞳で弱々しく懇願する一守の姿だった。
何故にここまで『カレット』が調子に乗っているのか、その理由は特に探さずとも目に入って来る。
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1位:カレット 【13392】ポイント
2位:カレット 【13344】ポイント
3位:カレット 【13296】ポイント
4位:カレット 【12960】ポイント
5位:カレット 【12672】ポイント
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「…………ごめん。訂正。『カレット』が塗り替えた」
このシミュレーター、スコア算出方法的に魔法が圧倒的に有利です
だからってここまでやるやつがあるか……
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