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3-6 思惑行き交う交渉テーブル

「す、すみませんでしたッ!」

「いえいえ、いいんですよ。しかし驚きました、てっきり暴漢に豹変されたかと」


 ゼラは腰に提げた【マジックバッグ】との会話であったと説明をしてから、深く深く頭を下げた。


「よかったぁ、いつものゼラくんで」

「ほんとね。オールマイティな私も、さすがに反抗期の暴漢のお守りはできないわ」

「ぐ、ぐうぅぅ……」


 うさみのちょっとキツめのからかいにも、ゼラは言い返す言葉もない。

 すると再び、ゼラの脳内に響く、あの声が。


 ……俺様ハオ前ガ暴漢デモ構ワナイゼェ! ヨッ! 暴漢!


 ケタケタ笑うその声に、ついついゼラは言い返す。


「だから、俺は暴漢なんかじゃねえって! ――ハッ!」


 図らずもペラルゴとうさみにかなり反抗的に言い返す格好になってしまったゼラは、慌てて両手で口を押さえた。


「すみません、言いすぎましたね」

「あぁん? ゼラ、ずいっぶん反抗的じゃない?」

「ちっ、ちが……」


 焦るゼラの横に座っていたミミリは、すくっと立ち上がってゼラの前に屈んでから、じーっと熱い視線をゼラのお腹周りに向けている。


「ミミリ……?」


 ミミリは、ゼラの腰の【マジックバッグ】を見つめて少しだけ口を尖らせ、人差し指を立て言う。


「めっ! ダメだよ、ゼラくんをからかっちゃ。仲良くしてね? それに私とも。私はミミリだよ。よろしくね。みんな仲良しのほうが楽しいから。ね? ゼラくん」


 ミミリは、しゃがんだまま小首を傾げ、ふわっとゼラに微笑んだ。その微笑みは、桜の蕾が花開くよう。


「――!」


 ゼラの顔はたちまち赤くなる。荒ぶる煩悩を抑えられなくなったゼラは思わず両膝に両肘をついて、埋もれるように顔を押さえた。


「あらあらあら……」


 ゼラの横で2人のやりとりを見て両手で口を押さえながらニヤつくうさみ。


 2人に夢中のうさみも、そしてもちろんミミリとゼラも気がつかなかった。


 ペラルゴとバルディが、ミミリとゼラを見て、少しだけ哀しそうにしていたことを。ローデは2人に心を寄せてから、切り替えるために敢えて告げる。


「街長、早速本題に入りましょう。恐れ入りますが、この後予定が詰まっております」

「あ、あぁ、悪かったね。そうしよう」


 ――本当は予定など詰まっていなかった。

 たとえ昨晩、唐突に街長の予定を空けるようバルディに指示されたとしても、ローデにとってスケジュール調整など造作もないこと。

 予定が詰まっていると敢えて言ったのは、有能な秘書、ローデの心優しい嘘だった。


◆ ◆ ◆


「では、早速本題に入らせていただきます。錬金術士ミミリさん、私共の街を救っていただけないでしょうか? 率直に申し上げますと、『アザレアの街おこし』にご協力願いたいのです」


「「「エェッ?」」」


 うさみはビックリしすぎて、ミミリの胸にピョンッと飛び込んだ。ミミリはミミリで、うさみをギュッと抱きしめている。

 2人の横に座るゼラは心の中で、やっぱりな、と思った。身分証ならまだしも、アザレアの中にミミリの工房をくれるだなんて、人助けの礼にしてはあまりにできすぎている。ゼラの予想していたとおり、あの申し出には裏があったのだ。


「どういうことか、詳しく説明してください」


 いつもの明るいゼラとはうってかわって、冷静でどこか冷たい印象のゼラが顔を出す。ゼラの頭の中でまたもや【マジックバッグ】の笑い声が聞こえたが、今ゼラは【マジックバッグ】に構っている暇などはない。


「実は……この街は今、危機に瀕しているのです」

「とてもそんな風には見えないわね。門を抜けてここへ来るまでの間、活気で街が賑わっていたけれど」

「そう見えたなら幸いですが、内実は経営難でして」


 うさみは、昨日この街に偶然現れた身元の知れない旅人、しかも子どもに突然街の経済状況を暴露するなどにわかに信じがたかった。だが裏を返せばそれだけ差し迫った状況であり、猫の手も借りたいということの表れでもある。そう思えば、妙に納得できるのだった。

 とはいえ、こちらの事情も鑑みず一方的に提案されたのでは虫の居所も悪くなるというもの。それにうさみは年長者として、このパーティーを守る責務がある。絶対に2人を守ると、アルヒに固く誓ったのだから。


「経営難の原因と根拠は? それによって私たちが被害被るかもしれないもの。失礼な物言いで悪いけど、私たちは大事な冒険の途中なの。こちらにメリットのない寄り道はしないつもりよ」


 ペラルゴはあまりに小さい――しかもぬいぐるみのうさみがこれほど弁が立つと思っていなかったのでいい意味で驚いた。藁にも縋りたいペラルゴとて、世間知らずの子どもを丸め込んで利用するなど気が引ける。真っ向から、それも理論的に詰めてくれるなど、願ってもないことである。


「それについては私が。僭越ながら、経営難の原因と根拠、その対応策として、ミミリさんたちにご協力いただいた場合に見込める経済効果をまとめてみました」

「さすがローデさん!」

「恐縮です」


 ミミリたちは早速、ローデがまとめた資料に目を通した。


『主題:アザレアの街を経営難から救うために


《経営難の原因》

●支出が収入を上回ったため

・数年前より出現モンスターが逓増(ていぞう)

 →街に入る人口、商品流通が低下(収入減)

 →門番等、街の警護かける費用面の増大(支出増)


《原因の根拠》

●モンスターの報告数と街経済の相関関係

・モンスター増加に伴い街経済は衰弱する、反比例の関係にあり


《対応策》

●活気ある街へ――アザレアが目指す街の姿

①安心して暮らせる街アザレア

・冒険者ギルドへの登録人数を増やす

 →冒険者の母数を増やすことで競合効果を狙い、護衛依頼の相対的単価を下げる

 →モンスター討伐依頼の受注増を狙う


②【重要】魅力ある街アザレア(要交渉)

・可愛い錬金術士の魅力ある錬成アイテム


《対応策②による経済効果》

・アザレア最盛期を上回る経済効果を期待!

 →現在比75%増


(根拠となるデータは、別添資料645ページから735ページをご参照ください)』


「うぅ〜頭がこんがらがりそうだよ」

「資料としてはよくできていると思うわ。でも……」


 うさみは、ゼラをチラリと見た。ゼラの表情は見るのも辛いくらいにかげっている。


「俺はミミリを見せ物にするつもりはない」

「……とゼラが言うように、納得できるほどのメリットを提示されない限りは受け入れられないわね」


「アザレアの立地の良い場所に大釜付きの工房をご用意するのでは……」

「魅力的だけれど、絶対に必要かと言われたら答えは『いいえ』。ミミリは錬金釜を今も持ち歩いているもの」

「「え……?」」


 ペラルゴとローデはミミリの【マジックバッグ】を知らないために、うさみが話す意味がまったくわからなかった。2人は理解を深める機会すら与えられないまま、ペラルゴの提案は、うさみによって一蹴された。


 どんどんと場の空気が悪くなってきてしまったことに、責任の一端を感じるバルディ。それでも、バルディとしてはこのチャンスを逃すわけにいかなかった。


「差し支えなければ、冒険の理由、聞いてもいいかな。魅力ある提案をするために」

「それは……」


 ミミリたちは冒険を始める前に決めていた。

 情報を開示することによって危険な目に遭うかもしれないが、右も左もわからないこの世界、どこに手がかりが落ちているかもわからないのだから、こちらの手の内を明かしてでも情報はつかんでいこう、と。

 ミミリは、アルヒのこと、スズツリー=ソウタのこと、そして両親のこと。冒険を始めるきっかけになったゼラとの出会いも、包み隠さず打ち明けた。

ミミリがしゃがみこんで上目遣いで見てきたら、ゼラでなくても赤面するかもしれません。


次話は明日の投稿を予定しています。

よろしくお願いいたします。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆★☆ーー

最後までお読みくださりありがとうございました。


続きを読みたいな、今日の話なかなか面白かったよ!と思ってくださった方がいらっしゃいましたら、是非、ブックマークと下記の☆☆☆☆☆にてご評価をお願いいたします。


ブクマや、ご評価、感想をいただくたびに、作者はうさみのようにピョーンと跳び上がって喜びます!


とってもとっても、励みになります。

どうぞよろしくお願いいたします。


うさみち

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミミリちゃん、アタフタしてる時もめちゃくちゃ可愛いんですが、時々こうやって、先生みたいに優しくなだめるというか、そういうところを見ると、やっぱりしっかりしてるなと思います(#^.^#)描写…
[良い点] ミミリちゃんのサービスショットでゼラが戦闘不能かと思いきや、免疫がついたのですかね。思ったより冷静で面白かったです。まだ、アザレアの人が騒ぐほど錬金術士の希少価値が確信しきれてないながら、…
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