反撃をしよ……あれ?
いやー、油断してたわ。
相手が理詰めで行動してくるとは限らんね。
それにここは異世界、日本みたいにアリバイとか科学捜査とかないもんな。
それ以前に金で黙らせる事ができるんなら金を握らせて毒殺も十分ありえたわ。
龍魔法を手に入れて、油断していた事は認めざるを得ない。
つーか龍魔法は身体強化だけで毒耐性ないのな。
そういや元のドラゴンの身体も寄生虫由来の毒素で死んだ訳だし、この世界の毒って結構ヤバくね?
いや、日本の毒に対する対策がしっかりし過ぎてたってのが正しいのか。
毒蛇や蜂の毒に対する対策もしてあるし抗生物質とかも在るから医療の充実は大切だよな。
治療を魔法に頼ってるこの世界だと回復魔法をつかえない人達しか住んでいない町や村もある筈だ。
薬という概念が無い訳ではないが、魔法という便利な手段がある所為で薬学の発展が遅れて居るのが現状だ。
最も、こういった知識は騎士団長のエイナルだから持っていたものであって、他の連中は回復魔法があるから苦くて高い薬なんて必要ないと考えていた。
エイナルは戦争で回復魔法の使い手がいない状況を想定していたからそうした知識を得たみたいだ。
不幸中の幸いだったのは、メリネアを奴隷にする為に彼女の料理には毒を入れていなかった事だ。
そういや、メリネアってドラゴンの時、俺と一緒の食事を取ってた筈だけど彼女が食べた物には寄生虫は居なかったのかな?
「そういえばメリネア様は毒とか大丈夫なんですか?」
竜皇の娘とはいえ、メリネアも生物。貴龍となった俺でも寄生虫には勝てなかった以上、メリネアだってあの寄生虫入りの生肉を食べたら死んでしまう可能性が高かった。
「私は【宝石龍】、私が栄養として消化するのは宝石だけよ。普通の肉とかはただ味と歯ごたえを楽しんでいるだけだから、貴方達にとって危険な毒も私の宝石の身体には効果をもたらさないわ。宝石に毒を垂らしても石は死なないでしょう? コレでも竜皇の娘なのよ」
何ソレチートじゃん。
どうやらドラゴンの種類には個体差がかなりある様だ。
「でも俺も竜皇様の血を貰って貴龍になったんですけど。それでも寄生虫の毒にやられたんですが」
「貴方は元々普通のドラゴンの子供だからよ。私は竜皇の直系。お父様の血を受けても元になった肉体が起点である以上その体の弱点は受け継ぐのよ。元々お父様の血は魂に影響を及ぼす物だから。肉体の強化は余禄みたいなものよ」
おーぅ、ドラゴンの王の血の力がお菓子のおまけみたいな言われ様ですよ。
「そう言う事だったんですね」
つまりメリネアの食事に毒を盛っていても彼女は死ななかったという事か。
それはそれで驚いただろうなぁ。
「それで、これからどうするの? 貴方様?」
メリネアが俺を夫と呼んでくれる。
赤の他人の身体になった俺を俺と呼んでくれるメリネアの存在は本当にありがたい。
何がありがたいかは分からないが、本心でそう思ったのだ。
「やられたからにはやり返しますよ。殺された以上こっちに殺されても文句を言えないでしょうからね。ちょっと身の程を思い知らせてきます」
「けどその身体だと……」
怒りに支配された俺はメリネアの言葉を最後まで聞かずに宿を飛び出した。
◆
「おい、うまくいったのか?」
「っ!?」
当然暗がりから声をかけられ驚かされた。
一体だれだと思ったら、そいつ等はこの身体の仲間でバードナの部下達だった。
丁度良い。コイツ等でストレスを解消させてもらおうか。
俺を殺した事と、メリネアを奴隷にしようとした事をだ。
俺は龍魔法を発動させて近づいてきた男を手刀で切り殺した。
「……おい、何のつもりだ?」
男から不機嫌な声が聞こえる。
あれ? 生きてる?
俺はもう一度手刀を打ち込む。
「何のつもりだっていってんだろうが!!」
殴られた。滅茶苦茶痛い。
「おい手前、ふざけてんじゃねぇぞ」
一体どういう事だ?
何で龍魔法が発動しないんだ?
「男は殺したのか?」
理由は分からないがこの状況では敵対しても勝てそうに無い。っていうか負ける。
仕方ないので状況を把握する事にした。
「男は死にました。スンマセンちょっと余りにも見苦しい死に方だったんで気持ち悪くなってまって」
「はぁ? 何言ってんだ。お前ここの仕事は知ってるだろうが」
「まぁ待て。お前まだ入って一年経ってないだろ。ここの料理長は万が一にも死因を疑われない様にいろんな死因に見える様にいろんな種類に毒を使うんだよ。それこそ気が狂いそうな悲惨な毒も使うらしい」
「ま、マジですか!?」
この料理人の記憶にはそんな情報は無いが、記憶を辿ると確かに死体の状態はどれも違った。
「今回はハズレに当たっちまったようだな。まぁこれからは気をつけな」
「は、はい、すみませんでした」
「ち、今回だけだぞ」
「ありがとうございます」
意外に仲間思いな連中だった。
死体処理班の男達が元俺の体を処分している間にメリネアに状況を伝えて一旦逃げる事にする。
◆
「あら、早かったわね」
「龍魔法が使えなくて逃げてきたんです」
「ああ、やっぱり」
メリネアはそうだと思ったと俺に笑いかける。
「何か知っているんですか?」
「簡単よ。その身体、魔法の才能がないもの」
え?
「魔法の使える人間と使えない人間がいるでしょう? アレはね、魔法の才能が無いから使えないのよ。努力をしても使う為の機能がないの。その身体も同じよ。魔法を使えるように出来ていないの。だから魂に龍皇の血を宿していても龍魔法を使えない」
えーと、詰まり竜皇の血を宿した魂を電池だとすると、肉体は機械。
で、俺の今の体は録画機能のないDVDレコーダーって事か!?
録画機能が無いから録画したくても出来ない。でも前に持っていたデッキは録画機能があったから出来ると思った。
その時俺は【憑依】スキルの説明を思い出した。
『【憑依】自分を殺した相手の身体を奪う。乗り移った相手の記憶と能力を手に入れる事が出来る。ただし他の肉体に移ると、肉体の能力は失われる』
コレはエイナル達の記憶やドラゴンの龍魔法は手に入るが、肉体の能力、前の身体の魔法を使う才能を失うって意味だったのか!
つまり魔法の知識は覚えていても、その知識を魔法として発動できるかは憑依先の肉体次第って訳かよ!
ああ、つまりこの世界じゃMPは魂じゃなくて肉体に宿っているんだな。新発見。
「という事はこの身体じゃ闘えない?」
「そうなるわね」
おおぅ、これからは憑依する先の肉体の能力を精査しないと行けないのか。
行き当たりばったりじゃあ駄目って事だな。
「で、これからどうするの?」
メリネアが仕切りなおしとばかりに俺に再度の方針を尋ねてくる。
「俺はこのままこの宿の従業員として働き情報を得ます。メリネア様は素性が知れて居るのでどこかに隠れて頂きたいのですが」
流石に超絶美少女のメリネアは目立ちすぎる。
この身体と一緒に置いておく事などとても出来ない。
無理やり付いてきそうだけど。
「じゃあ形を変えるわね」
「え?」
メリネアの身体がほのかに赤く光る。
「なっ!?」
なんとメリネアの身体がみるみる間に成長していくではないか!
「こんなものかしら?」
気が付けばメリネアの姿は妙齢の超絶美女へと変貌していたのだった。
宝石龍超絶チート。




