滝があったので修行してみた。
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皆さんの感想は筆者の活力として大変嬉しく読ませていただいております。
旅を続けていた俺達は、近くに滝の姿を見つけたので見物に行く事にした。
日本では滝なんて早々見れないしね。
「なかなか壮大ですねぇ」
「そうね、水浴びに丁度よさそうな勢いだわ」
いや、凄い激しく水が流れてるんですが。滝ですよ滝。
「水浴びをするなら滝つぼの淵で……って!? なにしてるんですか!?」
なんとメリネアは服を脱いで裸になって滝つぼに入っていた。
「何でって、水に入るのだから、人間の服の形状は邪魔でしょう?」
「だからって……服の形状? そういえば服は?」
周囲を見るがメリネアのドレスの姿が見当たらない。
「アレは私の鱗や翼を人間の形状に合わせて変化させたものよ」
なるほど、つまりメリネアは常時全裸だった訳か。エロいな。
「ここの水は気持ち良いわね」
なんて考えていたらメリネアが裸のままで深い場所に進んでいく。
「せめて胸と股間は隠してください。それが人間のマナーですよ」
「あら、そうなの?」
メリネアの背中と腰から赤い布が伸びてきて。シンプルな下着の形状になる。いや、この場合は水着だろうか?
「これで良い?」
「ええ、とてもお似合いです」
「ふふ、ありがとう」
いえいえ、こちらこそ大変良いものを見せていただきました。
これは夜が期待できます。いいよね、夫婦なんだし。
メリネアが遊び始めてしまったので、暫くはここにとどまるとしようか。
そのすぐ傍では、大量の水が凄まじい勢いで滝つぼに向かって落ちてゆく。
しかし、滝か。
ふむ、滝だな。
滝といえばアレだ。
「修行か」
せっかくなのでここで全力を試してみる事にしよう。
人間の力で本気を出した事は無いので自分の限界を知って奥に超したことは無い。
そして相手は水、遠慮する必要は無いからだ。
俺は龍魔法を発動させて滝つぼに入っていく。
龍魔法による強化のお陰で、強烈な水流も何のそのだ。
そして滝の真下に来た俺は、天に向かってアッパーをした。
滝の修行といえばアッパーだからだ。
その結果。
ドッパァァァァァァァァァァァァァン!!
滝が天に逆流した。
そしてたっぷり数十秒が経過してから、豪雨が降り注いだ。
マジかよ。パネェな龍魔法。
人間の体でもコレだけの力を発揮できるとは、流石はドラゴンの力の源だけはある。
「面白そうね。私もやってみても良いかしら?」
メリネアが俺の傍にやって来て同じ様にアッパーをする。
ドラゴン本来の力を見る良い機会だ。これによって人間とドラゴンにどれだけの差が在るのかがよく分かるというもの。
しゅごっ
なんとも軽い音だ。
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!
「ふぁっ!!!?」
軽い音の直後、大砲もびっくりの轟音が鳴り響き水が天へと消えた。
お、音速を超えたぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?
何分待っても滝の水が降ってくる気配はない。
それどころかメリネアのアッパーによって滝の形状が変わっていた。
滝は今までの断崖絶壁から滑り台のような斜めの形状になっていたのだ。
恐らくはメリネアのアッパーによって斜めに吹き飛んだ水が水圧カッターとなり、更に拡散した水がショットガンのような効果を発揮して岩肌を粉砕したのだ。
「あらあら、随分と脆い崖ね」
逆です、貴女の一撃が堅すぎたんです。
滝は今や滝とはいえない形状へと変化していた。
強いて言うなら、傾斜の高い滑り台といったところか。
そういや昔傾斜の偉い高い滑り台を滑って尾てい骨にヒビが入った子が居たなぁ。
あれ今だったら訴訟モンだよね。
あの滑り台は今もあるのだろうか?
とりあえず俺は、今の衝撃で吹き飛んだ魚達を集めて焼き魚にする事にした。
塩をかけるだけで済むのでとっても楽チン。
◆
滝で遊んでいたら日も落ちてきたので、ここで野宿をする事にした。
決して食料が豊富だったからではない。
滝が無くなった影響で滝つぼに大量の魚が流され、入れ食い状態だった事は少ししか関係ない。
そして今日も盗賊達がやって来る。
今日の連中は寝るまで待つつもりはなさそうだ。
木々や茂みの向こうから殺気が漏れ出ているのがその証拠だ。
ふむ、コレは手加減の良い修行になるか。
手刀だと首を刎ねてしまう。手のひらで張り手と思ったが、敵の身体に手の形の穴が空くのが目に見えていたのでやめておく。
あと、グーにいたっては論外である。
そこで俺は元滝を見る。
コレならどうだろうか?
俺は手で水を掬って盗賊が入るであろう場所に向けて水を投げてみた。
水は放水車のような勢いで茂みに飛んで行き……
「ギャアァァァァァ!!」
「いでぇ、いでぇよぉぉぉぉぉぉ!!!」
おお、生きてるぞ。よしコレなら行ける。
俺は水を掬って森に隠れている敵を手当たり次第に攻撃した。
◆
そして後悔した。
茂みの向こうにはスプラッタ死体が山盛りとなっていた。
どうも高速で射出された水が散弾銃、いやスラッグ弾の役割りを果たしてしまったらしく、盗賊達は全滅してしまっていた。
恐らく最初の悲鳴は致命傷を受けた人間の断末魔の悲鳴だったのだろう。
コレなら途中で攻撃をやめて様子を見に行けばよかった。
「ねぇ、コレ……」
「食べちゃだめですよ」
「ねぇ」
「肉を焼きますから」
「宜しくね」
笑顔だった。
◆
メリネアが食事をしている間も俺は手加減を考える。
俺が生きていくためには龍魔法は必要不可欠だ。
だが龍魔法を使えば相手を殺してしまう。文字通り必殺だ。
なら道具を使うか? コレで殴っても絶対死なないってものを使って。
周囲のものを見る。
石……駄目。木の枝……駄目。葉っぱ、ふむ、葉っぱか。
俺は葉っぱを一枚ちぎってそれで近くの岩に振ってみる。
岩に横一文字の傷が出来た。しかも綺麗な一本線だ。
葉っぱもだめかよ。
後は……ふとメリネアの長く美しい赤毛が眼に入る。
「メリネア様、髪の毛を一本頂いても宜しいでしょうか?」
「ええ、かまわないわよ」
メリネアは景気よくぷちっと毛を抜くと俺に手渡した。
「ありがとうございます」
俺はメリネアの毛をブンと振ってみた。
目の前の大木が切断された。
だよねー。髪の毛に見えてもドラゴンの毛だもんね。
漫画みたいなワイヤー武装になってしまったよ。
まぁこの毛は役立ちそうだから、小指にでも巻いておこう。
その瞬間、俺の脳裏に赤い糸という単語が浮かんだが思い出さなかった事にした。
手加減に関しては考えておく事にしよう。
そもそも、俺が手加減をしないといけない理由は後から後から沸いてくる盗賊が原因だからだ。
連中を生かして捕まえて裏にいる黒幕の存在を吐かせなければいけないからだ。
まぁ犯人の予想は付いているけどさ。
手加減が出来ない事で犯人を確定できない問題は、根本的な原因を取り除く事で対処するか。
即ち、エルダードラゴンの骨と鱗と牙を売り払う事。
だがコレだけのモノとなるとそこらの町では買取すらしてくれないだろう。
ならは大きな町に行くしか在るまい。できれば王都のような大きな町が好ましい。
「次の目的地はそこにするか」
大きな町に行って骨を金に換金する。
それは、メリケ国を支配した時以来の目的の誕生だった。




