狩人対狩人
天空より地上に視線を向ける。
文字通りのホークアイである俺の目ははるか地上の光景をはっきりと映し出していた。
そこにウシ型の魔物、バルバイソンを発見、数は5、大きさはざっと3mか。
丁度良い、朝食として頂こう。
俺はバルバイソンに対して急降下を敢行。数百mの距離が一瞬で縮まる。
だがバルバイソンはまだ気付かない。
残り数十mに近づいたところで漸くバルバイソンの一匹が俺に気付き声を上げる。
周囲のバルバイソンもその声で気付いて首を上げるが、もう遅い。
足の杭はバルバイソンを斜め上から突き刺し、その身体を掴む。
もう片方の足で地面を蹴って浮上、空へと離脱。
足の中のバルバイソンは刺さり所が悪かったのか既に動かない。もう2、3体狩っていこうかな?
上空を旋回しながら様子を見ると、バルバイソン達は群れになって逃げているところだった。
倒された仲間の敵討ちよりも群れの存続を優先したか。
どうするかな、向こうは逃げに徹している、けど纏まっているから狙い易いといえば狙い易い。
あれ?
バルバイソンを狙っていた俺はその近くに何かが動いているのに気付いた。
アレは……人間か?
俺の視界にはバルバイソンが逃げていく中、不審な動きをしている人間達の姿が見える。
彼等は全員が槍や弓で武装しており、上空の俺とバルバイソンを何度も交互に見ていた。
もしかして彼等の狩りを邪魔してしまったのだろうか。
そういえば前回大型の牛を襲った時も人間が居たなぁ。
っつー事は、この間襲ってきたのは狩りの邪魔をされた人間の報復って訳か?
いや、ただの仕返しで山の頂上まで来る筈は無いか。
だとすれば……あの牛の魔物達が、人間の貴重な食料である可能性か。
そーいやイルミナだった時にカネダ国に逃げ込んで牛丼屋経営してたもんなー。
そう考えると俺は人間の経済に悪影響を与える駆除対象って可能性が高くなるな。
で、襲ってきた人間達は駆除依頼を受けた冒険者って訳か。
話が繋がってきたぞ。
しかし、そうなるとどうするかな。ここから出て行くのが一番穏便な解決法だけど、人間はいたるところに居るからなぁ。
うーん、どうしよっかなー。
まずはご飯を食べてからにするかー。
◆
と、いう訳で山頂に帰ってきた俺は、ご飯タイムにする事にした。
足に串刺しにしたバルバイソンをもう片方の足で引っ張ってから嘴でくわえる事で足を自由にする。
そして頂上に着陸…………
ズボッ! バキバキバキッ!!!
オワァァァァァァァァァ!? 何じゃぁぁぁぁぁ!?
突然俺の足が地面に突き刺さる。更に周囲の地面がズルリと動き出して巨大な穴が空いていくではないか。その様はまるで砂時計の砂のように。
いや違う、地面の下から大量に切断された木や大きな葉っぱに布が現われる。
砂のように見えたのは上にまぶされた土だ!
そうだ、コレは落とし穴だ!! 俺は巨大な落とし穴にはまってしまったんだ!!
慌てて飛んで逃げようとした俺に対し、物陰から何かが飛んでくる。
それはロープの付いた矢だった。
俺が飛び上がろうとすると、ロープはピンと伸びてそれ以上飛び上がれない様になる。恐らく地面に付き刺した杭か何かに縛り付けてあるのだろう。
矢は四方八方から放たれ俺の体をより強固に拘束していく。
「よし!コレでヤツは空に逃げる事が出来ない! 蹴りを喰らわないように遠距離からしとめろ!!」
人間達がこちらの間合いの外から魔法や弓で攻撃してくる。
コレはイカン! 飛んで逃げようにも翼にしっかりとぶっとい矢が食い込んでいるから抜ける気配が無い。一本二本なら何とかなったかもしれないが、何十本と突き刺さっていては身体を動かすのも困難だ。
しかも片足が地面に埋まっているから上手く立ち上がれない。
足を引き抜こうとすると突然植物が生えて絡みついてくる。
足止めの魔法か!?
更に氷魔法で反対の足を集中攻撃され足と地面が凍りついてゆく。
うぉぉぉぉ、まじヤバい!!
何とか逃げようともがくが身体に繋がったロープが引っ張って攻撃も脱出も出来ない。
とにかく暴れて杭を緩めなくては!
「杭が緩まないように常にハンマーで叩いて地面に喰い込ませろ!」
おぉう、対策は完璧ですね。
「動きが鈍ってきたぞ! トドメを刺せー!!!」
「「「「おおー!!!!」」」」
◆
バンカーホークの巨体が地面に沈む。
俺達の食料である牛を掻っ攫っていたバンカーホークの最後だ。
「よっしゃー! コレで牛を狩り放題だぜ!」
「はははは! 突然居なくなった時は準備が無駄になったかと思ったが、上手くいったぜ!!」
「ああ、俺達に狩られに戻ってきたって訳だ」
どうやらこの罠は事前に入念な計画をされていたモノだったらしい。
ふむふむ、前回の襲撃は帰ってきたバンカーホークの姿を見て功を焦った連中の勇み足だったのか。
俺は先ほどまでの自分の身体を見ながら喜びに吼える冒険者達の姿を眺めていた。
人間の食欲って怖い。




