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憑依無双 ~何度殺されても身体を乗り換えて復活する~  作者: 十一屋 翠
マーマン集落編

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人魚人問答

 俺はウミクサトリと共に集落の奥に向かう。

 集落の丁度真ん中が長の居る場所だからだ。

 長を中心に子供、女、男と放射状に広がっていくのだ。

 そして長の居る場所に、やって来たというマーメイドの姿もあった。


「我等の同胞を帰せ! 隠すと為にならんぞ!!」


 マーメイドが怒鳴っている。

 集落に来ていたマーメイドは4人、全員がかなりの美形だ。

 泳ぐためだろうか? マーメイド達は割りとスレンダーな体型をしていた。

 人魚といえば意味もなく巨乳なイメージだったのでちょっと残念だ。

 しかしちゃんと人魚らしく貝殻ブラをしているのでこれはこれでアリだと思う。

 人魚達は下半身が魚で、首にエラがあり、耳の部分には大きなヒレが付いていた。

 それに腕の外側と背中もヒレがありアレで泳ぐ時の補助をしているみたいだ。

 手にはマーマンと同じく鉄サンゴの槍を装備している。

 やはり水棲種族は文明レベルが低いと見える。

 基本あるモノをそのまま使う感じで、加工も必要最小限といった具合だ。

 多分海を汚さない為なんだろうな。


 今叫んだマーメイドは戦場に出てくる腕利きのマーメイドで、俺達はアカヤリと読んでいる。

 赤い鉄サンゴの槍を持っているからだ。

 鉄サンゴは色が濃いほど硬い。アカヤリのサンゴは非常に鮮やかな赤をしており、戦場では若い戦士達の槍が何本も破壊された。


「知らんモノは知らん。大方魔物にでも喰われたのだろうよ」


 アカヤリ達の言葉を長老が否定する。


「ふざけるな! 我等が魔物ごときに追いつかれるものか!」


 なかなかの自信だが、実際マーメイドは速い。

 下半身が丸々魚という事もあって、マーメイドはヘタな魚型の魔物よりも速かった。

 更に魔法を使える者も少なくない。水陸両用のマーマンに対し、水中特化のマーメイドと住み分けができているのだ。


「ウソをつくな! 水の中で我々に危害を加える事の出来る物はお前達くらいのものだろう!!」


「だから知らんと言っている!」


 互いに譲らない。アカヤリの方は完全にこっちを疑っているな。

 まぁそれも仕方ない。マーマンとマーメイドは長い事争ってきた間柄だからな。

 比較的近い場所で暮らし食べるモノも似ているから、諍いが起きる可能性は非常に高い。

 だが今回は完全に言いがかりだ。俺の中のツラヌキの記憶でも、ここ最近マーメイドを襲った記憶は無い。

 ツラヌキは村の戦士の中でも中核を担っている腕利きだ。ツラヌキ抜きで戦いを行う必然性も無い。

 だからツラヌキが知らないのならマーマンはマーメイドを襲っていないという証明だ。

 けどそんな事はアカヤリ達には知ったこっちゃない。

 これは早いとこ止めんとコレが原因でマーマン対マーメイドの戦争が始まるぞ。

 大げさでもなんでもなくマジで始まるのだ。

 民族間紛争とはどうでも良い大人気ない理由であろうと簡単に発展していくものなのである。


「ちょっとまて」


 長老とアカヤリの間に割ってはいる。


「貴様はツラヌキ!」


 アカヤリ達が臨戦態勢に入る。

 ツラヌキの記憶にもマーメイド達との戦いの記憶がある。

 腕利きのツラヌキはマーメイドにとって憎い相手なのだ。


「お前達は俺達が仲間を攫ったと言うが本気で言っているのか?」


「当然だ!」


 即答である。


「つまり俺達はお前達よりも早く泳ぎ、お前達を容易に捕らえる事が出来るくらいに圧倒的な力を持っている格上の存在だと認めたという事だな?」


「な、何だと!?」


 イキナリ自分達がマーマン以下の存在だと言われて困惑するアカヤリ。


「そうだろう? お前達は魔物如きに不覚は取らないと言っているくせに、俺達が攫ったと言っている。つまり俺達よりも弱いと認めているという事だ」


「ち、違う! 貴様達が卑怯な事をして仲間を騙し討ちしたのだ!」


「なるほどなるほど、つまり騙し討ちすれば簡単に倒せる相手と言うわけか」


「っ!?」


 アカヤリの顔が真っ赤に染まる。

 否定すれば俺達が攫ったのは勘違いになるし、肯定すれば俺達よりも頭が悪く弱いと認める事になる。

 俺達のやり取りを見ていたマーマン達がニヤニヤと笑っている。気持ちは分かるがな。

 とはいえ、あまり煽るとキレるからそろそろ本題に入ろう。


「何処で居なくなったんだ?」


「な、何?」


 怒りのあまり頭が働かなくなってるアカヤリが疑問の声を上げる。


「お前達の仲間が居なくなった場所だ」


「む……ソ、ソレを聞いてどうするつもりだ!?」


 アカヤリは答える義理などないと不快そうに吐き捨てる。


「俺達はここより深い場所には滅多に行かん。お前達が俺達のテリトリーに入ってきたのなら誰かが見ているかもしれん」


「む、そういう事か。……いや、居なくなった同胞は食料を採りに沖に出ていた。浅い海に向かった者は居ない筈だ」


 仲間のマーメイドと話し合った後でアカヤリが答えてくる。


「だったら俺達じゃあない。お前達だって知っているだろう? 俺達は深い海には行かない事を」


 マーメイドも敵対しているだけあって俺達の事をよく理解している。

 互いに生活域を分けているのも無駄な争いを避ける為だ。


「では誰がやったと言うのだ!」


 ひとまず俺達が犯人と断言するのはやめたようだが、それでも不審の目を向けるのは変わらない。

 しかしそんな言いがかりを付け続けられては仲間達の機嫌もドンドン悪くなる。

 仲間が居なくなって冷静さを欠いているアカヤリは周囲のマーマン達が殺気だっている事に気付いていない。


「そこまで俺達を疑うのなら、集落に見張りを置いていけ。そうしてその間仲間が襲われないか調べればいい」


「ほう」


 俺からの提案にアカヤリが考え込む。

 そして暫く無言で黙っていたが、何かを決心したように頷いた。


「いいだろう。では我々がお前達を見張らせて貰う」


 アカヤリが槍を俺の前に突きつける。


「もしも見張っている間、ずっと仲間が居なくならなかったらお前の首を貰うぞ」


 今すぐ切り殺したいと視線で語るアカヤリ。


「だが俺達以外が犯人だったら侘びを入れてもらうぞ。ただ謝るだけではない。部族の誇りをかけた侘びを貰う」


「……いいだろう。その申し出受けよう」


 こちらが一方的に疑われたりするのは気に入らないからな。

 マーメイドと言うかアカヤリの性格を考えたら、真犯人が他に居た場合マーメイドの誇りにかけて侘びを入れてくるだろう。

 勝ちの見えた勝負って楽しいねぇ。


 ◆


 そうして3日が経過した。

 アカヤリ達は集落の外側を囲む様に俺達を見張っていた。

 俺達が食事を取りに出かける時はその中の何人かが付いてくる。

 単独行動をさせない様にだ。

 連中は特に喋ったりもせずじっと俺達の監視を続けていた。

 それだけ行方不明になった同胞が多いという事なのかもしれない。

 しかしその辺りの質問に関しては、答える義理などないと突っぱねられてしまったのだ。

 まぁ、よくよく考えれば、部族のどれだけが居なくなったのかと言う質問は、どれだけ戦力が減っているのかと聞くのと同じだ。答える筈が無いのは当然と言えた。


 ◆


 そして四日目。


「大変です!」


 集落の外からマーメイドがやって来る。


「何事だ!?」


 俺達を見張っていたアカヤリがマーメイドの下に向かう。


「それが……」


 俺はもそっと近づいて2人の話に聞き耳を立てた。


「食料を集めに行った者達が、突如現れた巨大な影に襲われ、姿を消しました」


 真犯人が現れたみたいである。

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