2話
投稿~、今回は説明会。
「さて、まずはスカイハンターの仲間入りを改めておめでとうと言っておくぜ」
「ありがとうおっちゃん」
ヨーゼフの祝福の言葉に素直に感謝の言葉を述べる孝一郎。
「さて、これからお前はスカイハンターとして生きていくわけだが……スカイハンターが死ぬ原因を今から教えてやる」
いきなり物騒な話になった、と孝一郎は内心思う。
「何でこんな話をするのかだが、死ぬ原因が分かれば、その分生存率が上がるからだ。特にスカイハンターになってから一年の間が特にヤバイ。本当にその一年を生き延びられずに死ぬハンターは多いんだ、だから最初に話をする。しっかりと聞いておけよ、いい加減な気持ちで聞いているやつは大抵すぐに死ぬ。俺はもうそんなヤツを50人は見てきているからな、ハッタリじゃねえぞ?」
その言葉を聞いて、孝一郎は大人しく頷く。
「理解してくれたようで何よりだ。死ぬパターンは三つ、燃料切れで海面に墜落して衝撃で死亡。空賊に喧嘩を売ったり逃げ切れずに死亡。禽に殺されて死亡、この三つだ」
最初の二つ、燃料切れと空賊は分かる。空賊は単純に海賊の空バージョンと言うだけだろうし。だが、最後の"トリ"とはなんだ?
「鳥、って?」
「お前は今、今あそこでのんびり飛んでいる鳥をイメージしたのかも知れんが違うぞ。 禽とは、翼を持ったモンスターのあだ名だ。更に厄介なことに同じ外見、同じ種族の禽であっても人間のように性格が違う。この種族だからちょっかいを出さなきゃ攻撃されない、この種族だから気がつかれたら絶対に襲い掛かってくると言う考えが一切通用しない。可愛らしい外見を持つヤツもいるが、その見た目に騙されてふらふらと近寄った結果、首を食い破られて死んだハンターも居るぞ」
首を食い破られた、で孝一郎はゾッとした。本当にここは自分がほんの少し前まで住んでいた世界じゃない。油断をすれば、容赦なく呆気なく何の慈悲もなくしたいとなって転がる世界なのだ。どこか空を飛んだことで浮かれていた自分の心に直接冷や水をかけられた様な気がした。
「空賊はいうまでもなく賊だ。が、奴らにも不問律があるのかどうかは知らんが、変に接近しなければハンターを襲うことはめったにない。だがいつでも例外はある。駆け出しのうちは、自分以外の空を飛んでいる物体を見かけたら全力で逃げるのが基本だ、いいな、何かが飛んでいると確認したら全力で逃げるんだぞ」
ヨーゼフの話をしっかりと肝に銘じる孝一郎。早死になんぞ真っ平ゴメンである。せっかく自分の意思で空を飛べるようになったのだから。
「とにかく、この三つの要素をいついかなる時も忘れんな、それが長生きの秘訣だ……そしてここから話がもう一つ、それはお前のフライト・ギアについての話だ」
話が長くなっちまうんだが、今の内に話しておかないといけないんでな、とヨーゼフは前置きをする。
「お前さんのフライト・ギア、つまり愛機だが……いうまでもなくここのクランはE-の最底辺クランだ……つまり金がない!」
うわあ、ぶっちゃけたなおっちゃん。孝一郎も苦い顔をする。
「お前さんにはこのクランでの共用としているフェザー001を貸し出すから、これで日帰り程度の雑用仕事をやってもらう。そしてその雑用でコツコツ金をためてもらってフライト・ギアのパーツを買って貰う。パーツの組み立てはここでやれるから、組み立ての代金ぐらいは負けてやる。つまり自分で稼いで、その金で自分の愛機を作れって事になるな」
そういいつつ、ヨーゼフは一枚の紙を取り出して机に広げる。どうやらこれはカタログのようだ。
「これはフェザーシリ-ズと呼ばれるフライト・ギアのパーツ一覧だ。最新のはフェザー012だ。つまりここにあるのは、ほぼ化石レベルと言って良いぐらいのポンコツだ。整備はしてあるからまだまだ飛べるが」
孝一郎もカタログを見る。最新のフェザーシリーズはパーツが揃った時点での販売価格で1千万バードを超えている、手が当然出るわけがない。
「さて、大まかに言ってフライト・ギアに必要なパーツはたったの三つ、ボディ、ウィング、エンジンだけだ。まあ、ボディに色々と積み込んであるからそれぐらいシンプルになっているんだがな」
そういいつつ、ヨーゼフは孝一郎も見ている一枚のカタログの内、ボディ、ウィング、エンジンを指差していく。
「ボディはこの005、ウィングは007、エンジンは008だな、これが初心者がまず買い揃えるべき黄金セットと言われている。初心者が買い揃えるとは言っても、大事に使えば一生もんになるし、事実手入れを欠かさず大事に使って、現役引退までこの5、7、8セットを使い続けたハンターは結構多い。 特に005のボディは大きい分ちょいと値段も張るが、耐久力に優れているから安定感があるし、拡張性も高い。その安定さを一番良く出せるのが007ウィングと008エンジンの組み合わせだ。この組み合わせが見つけられた時は、ハンター達の間でめちゃくちゃ大流行したもんだぜ?」
なるほど、と孝一郎は思う。初心者がいきなりハイレベルの飛行技術を持っているわけがないし、自分だってそうだ。フライトシューティングをやった経験はあるが、あれは自分がパイロットをやっているわけではないし……。
「一応聞きたいんだが、フライト・ギアのシリーズはフェザーシリーズだけ?」
「いや、他にもバード、クロウ、ファルコンシリーズがある。フェザーを1とすると、バードとクロウは4、ファルコンは7って所だ。だが性能が良い分、維持費がものすごく掛かって大変だぜ? バードとクロウならクランランクを最低でもCランクぐらいは欲しいし、ファルコンならA以上じゃないと話にならねえ。それぐらい難易度が高い仕事をこなせる連中様ご用達の機体だよ、俺達が考える必要はねえ」
なるほど。ゲームのようにはい補給しましたって訳には行かないよな。維持費の問題もあるのは当然だし、確かにヨーゼフのおっちゃんの言うとおり、考える必要はないと孝一郎も考えて、この件は終わりにした。
「話を戻すぞ、ボディが5万バード、ウィングが2万5千バード、エンジンが3万バードだ。それに加えて最低限の武装でこれまた1万5千バードは考えた方がいい。この合計12万バードの資金を稼ぐ事がお前さんの最初の目標だ、コーイチロー」
そういって孝一郎に向かい、ニヤリと笑みを浮かべるヨーゼフ。『これぐらいスカイハンターを名乗るのならばやって見せろ』その顔はそう言っていた。
「オーケーだ。なら明日からはその目標を達成する為にも仕事に精を出しますかね」
「その意気を自分の愛機を買うまで維持して見せろ。それがスカイハンターの一人前の仲間入りが出来るかどうかの試験だ。俺が言い出したんじゃねえからな? スカイハンターの中でのお約束ってヤツだ」
と、孝一郎の第一目標が自分の愛機を手に入れることと定まり、その目標を達成する為に仕事を請ける事を決意することになった。
まずは自分の機体を作ることに。
最初はレンタルのポンコツからスタートです。




