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第20話 宿屋での朝

鉱山都市の朝は早い。

稼ぎに来ている労働者たちは都市内にある無数の寮に寝泊まりし、そこから坑道に入り、夕方まで採掘作業をする。

そこで運のいいものは鉱脈を発見し、大量の鉱石が手に入る。鉱山都市を仕切っているギルドには儲けの3割が税金として納めなければならないが、それを差し引いても莫大な儲けになるのは目に見えている。

なので、遠くの地から出稼ぎに出てきているものも少なくないのだ。


など、説明したはいいものの、この男…アレンはまだまどろみの中にいた。

隣に寝ている黒猫はアレンの顔を優しげに見つめている。


「…ふふっ…こうしてると、かっこいいのに……」


そうつぶやくと、目の前の男はわずかに身じろぎし


「く、ろーでぃあ…かわ、いい……も、いっかい、しよ…ぜ」


「…まったく///どんな夢を見てるのよっ」


クローディアはアレンのありえない寝言に突っ込みをいれながら、ベッドから出ようとする。

シャワーでも浴びたい気分だった。アレンのアレとか、自分のソレとか、シーツの赤いしみとか…


「ん~…!シャワーでも浴びようかしら…?……」


クローディアはまだ疼痛がする腰をかばいながら、ベッドから出ようとする…が、


「ちょっ?アレン…」


そう、いきなりこの男、クローディアに抱き着いたのだ。

もちろん、寝ぼけているが。


「もう…ほら、アレン。朝よ。起きましょう?…にゃ!?」


優しく耳元で囁いたクローディアは、いきなりこちらを向いたアレンにびっくりしてしまった。

互いの視線が交錯する。

口を開いたのは、アレンだった。


「…クローディア…?…ん?…俺……///」


どうやら昨日のことを思い出したらしく、赤面するアレン。

だが、下の方は朝だからなのか、夢のせいなのか、思いっきり元気だった。

クローディアのそこにあたるくらいに。


「アレン…?あ、あたってる…わよ?」


「なあ、クローディア。起き掛けにもういっかい…いいか?」


言うなり、まだ素っ裸のままのクローディアを抱きしめ、頭の上についているネコ耳の中をちょっと舐める。

すると、いきなり甘い声をだしてしまうクローディア。


「ちょっ…んにゃぁっ…耳、弱いから…ダメぇ…」


それから、なし崩し的に朝からシてしまった二人…風呂も二人で楽しんだそうだ。




―――――



「おはよー…リリア…」


「よう!二人とも!いい朝だね!!」


朝食を食べるレストランに来たクローディアは、なんだか朝からぐったりとしていた。

アレンはとんでもなく元気だ…笑ったときに見える白い歯がキラリと光る。

そして、クローディアはリリアの目の前の席に座り、アレンはヴァイルの目の前に座った。


「おはようございます。…で、なんでクローディアは朝からぐったりしてて、アレンはそんなに元気そうなんですか?…まぁ、予想はつきますけど…。」


「どうせ朝からヤ「何て事をいうんだヴァイル!今は朝食時だぞ!?「主が変態なのが悪いのだろう。「えぇぇ!?」


「…うるさいわよ、二人とも……ねぇ、リリア…。」


「はい、わかってますよクローディア。【治癒】」


何を言わんとしているか分かっているかのように、リリアは机に突っ伏したクローディアに治癒をかけ始めた。


「…痛むのか?クローディア…。」


アレンが心配そうな表情でクローディアを見つめる。

が、だるそうにクローディアは返す。


「心配いらないわよアレン。私なら大丈夫よ?…まぁ、どこかの誰かさんが、朝から5回もし始めるなんて思わなかったけれどね。」


「あえて言おう!最高だった、と!!」


「黙れクソ主!!」


ヴァイルは一振りの剣を抜き、アレンの眉間を突き刺す。


「いてぇえええええええ!?てめぇ何すんだヴァイル!!」


「貴様が変なことを言い出すからだ!…まったく、これだから人間は…しかも、朝から5回…だと?貴様どういう体力をしていればそんなことが可能なのだ?」


「だって、クローディアが可愛いから…」


そう言って、クローディアを見つめるアレン。

リリアは微妙そうな表情だ。


「アレン…ほら、今日はリリアとお出かけなんでしょう?たっぷり楽しませてあげるのよ?……私は宿で寝てるわ…ちょっと寝不足気味なの。」


「そ、そうでした。アレン!今日はいっぱい付き合ってもらいますからね!」


「お、おう!分かった。…ヴァイルはどうするんだ?」


アレンはヴァイルに今日の予定はどうするのか聞く。


「ふむ…我は少し調べものをしたい…主よ。明日の朝に、また会おう。その時には必ず今回の騒動についてのことが少しは明らかになるだろうからな…」


「そうだな…源神ガイア…神の一部分が地上に落ちて、その際に具現化した神の影のようなもの…だったか?…それに、俺たちが不死族…っていうヤバイ存在だって?そして、そのためにアテネとラズエルは俺を襲ってきた…っていうことだろう?なんで本物の神に命を狙われなきゃならん。俺は意地でもリリアとクローディアといちゃいちゃするからな?誰にも邪魔なんてさせん!!…っていうことで、明日の朝の報告、楽しみにしてるからな。ヴァイル。」


「わかった。だが、あまり過度な期待はしてくれるな。我もすべてを知っているわけではない…」


「ん…よし、じゃあ方針は決まったな!…さて、朝食も食べ終わったことだし、行こうか?リリア。クローディア、体、大丈夫か?」


「大丈夫よ…さっさと行ってきなさいアレン。リリアがそわそわしちゃってるじゃない…私たちの旦那様なんだから、しっかり、リリアを楽しませてくるのよ。リリア。今日はあなただけのアレンよ。思いっきり甘えちゃいなさい……。」


「もちろんですよ…!」


「いやー、俺は本当に幸せ者だな!はっはっは!」


アレンはリリアの手を取り、クローディアに手を振りながら、宿を後にした。




その背を見送ったクローディアは、部屋に戻り、ベッドに横になると、一人呟く。


「…そういえば、冒険者になるって言ったのに、全然冒険者っぽい活動してないわね…」


冒険者になった途端にアジ・ダハーカに襲われ、商業都市でお嬢様を助けたと思ったら変な男に襲われ…そして、今回のこの騒動だ。クローディアは今日の午後は冒険者ギルドに行くことにした。


「いい依頼、あるといいけど…」


クローディアはだるくなった体をベッドに沈み込ませ、眠りについた。

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