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第12話 急展開

「…アレンさん!いくら力があっても、あなたはモラルを欠いています!立派な冒険者を目指しているなら、最低限の常識位わきまえなさい!!」


本気で怒鳴るハイランドの言葉を土下座しながら聞くアレン。


「ほんと、すんませんしたっ!!」


そんな様子を頬を赤くして見ていた少女…エルが二人におずおずと近づく。


「…え、えと、そんなにいやではなかったですの…「エルさんは黙りなさい!「はいですの…」


鬼のような形相の教師に、エルは黙って頷くしかなかった。


「大体、なんであなたのような異常な能力者が、警備の仕事なんてしているんですか!!そんな力があるなら、ほかにする事なんていくらでもあるでしょう!?人々を脅かしている魔王の退治とか、平原の魔物たちの駆除とか…」


「ははは…手厳しいな…」


頬をぽりぽりと掻きながらはぐらかすアレン。


「落ち着きますの!先生!今は授業中ですの…アレンさん。ご挨拶ありがとうございましたの…あと、アレですが、ありがたく受け取りましたの。」


ハイランドを止めて、アレンに一礼するエル。


「あ、ああ…俺の方こそ、手紙なんかで要件を済ませちゃってごめんな。…さて、生徒たちも自分で練習を始めたようだし、俺はそろっと帰るとするかな。」


「…もう、行ってしまわれるんですの?」


エルがうるうるとした目で熱く見つめてきた。

ハイランドはアレンとエルのただならぬ関係を察知したのか、何も言わない。


「……もう少し落ち着いたら、また来るからさ…そん時までに強くなるんだぞ?ほら、そんな顔するな、お姫様。」


アレンはエルの目から流れる涙をすくってやる。

見つめあう二人。


「必ず、迎えに来るから。そん時は、俺と、クローディアと、リリアと、ヴァイルで旅をしよう…絶対楽しいから、いい子で待ってるんだぞ?」


その言葉にますます涙を流してしまうエル。

だが、ハンカチで涙を拭いた後、すがすがしい笑顔で言う。


「わかりましたの…腕を磨いて、アレンさんの隣に並べるほど強くなって見せますの…絶対、驚かせやりますの…」


「ああ、楽しみにしてろ。それじゃ、また今度な」


アレンは決して別れを言わなかった。

その後は教師たちのテントを出て、エルとハイランドの見送りに手を振りながら駆け足でその場を立ち去った。


その後ろ姿を見ながら、エルは思う。




(アレンさん…絶対…約束、ですの…)




―――――――――――



「さて…ここまでくればいいか…【空中移動】」


学生たちが見えなくなったところで、空中に飛び出すアレン。

すると、アレンの目の前に久しぶりのログ画面が現れた。


ログ


ー夫婦関係成立から一定時間が経過したため、クローディア、リリア、両名の不死因子が覚醒ー


ー夫婦関係構築のため、アレン、クローディア、リリアで命数を共有しますー


ー残存命数 3-




「は…?」


アレンは目の前のログの意味が分からず、首をかしげた。

そして、その直後、商業都市イルガの北の平原から、爆音が響いた。


「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


その音…いや、正確には声だろう。アレンの耳まで届いてきたその声はまるで、世界の終焉を告げるように、どこまでも破滅的な音を帯びていた。

そして、反射的に声のした方を向いたアレンは、わが目を疑った。





――――――――――――






場所は変わり、冒険者ギルドにて。

クローディアとリリアは無事に冒険者ギルドまでたどり着いていた。


「やっと着いたわね…」


「もうへとへとです…」


先の戦闘で疲れ切った二人は冒険者ギルドの壁際にある椅子に腰を掛ける。

城壁都市フェレスにあった冒険者ギルドとはまた趣の違う木造の建物だ。

ギルドの中は、数十人の冒険者らしき男や女がパーティごとで集まり、依頼の受注や、達成報告をして、お金を受け取っていた。

そんな様子を見ていたクローディアは、ある一人の男を見つけ、椅子から立ち上がる。


「あ…ヨーグ!!」


「なっ…!嬢ちゃん…!それに、リリアさんまでいるじゃねぇか!?」


「久しぶりね、元気だった?」


あっけからんとして言うクローディアにヨーグがいきなりキレる。


「そんなことより、アレンのクソガキはどうした!?闘技場での爆発の後、アイツの姿を見てないんだが…」


言いかけ、周りの視線がこちらに集中していることに気付くヨーグ。

クローディアがしゃべりだそうとするのをみて、手を当てる。


「悪い悪い…今、闘技場関連の話をするとヤバいんだったな…酒場に行こう。騒がしい場所なら、大丈夫だろうしな」


「は、はい…クローディア、行きましょう。」


リリアはクローディアと手をつなぎ、冒険者ギルドに併設されている酒場へ向かった。

そこで、角の席へ着いた三人は顔を突き合わせ、話を始める。


「…で、なんでクソガキは審判なんて受けてたんだ?」


ヨーグが心配そうな顔で言う。


「…えーと…」


クローディアとリリアは自分たちの持ってる情報を全てヨーグに教える。

フロウライト家の娘が襲われたこと、それに伴って、一緒にいたアレンが手配され、闘技場におびき寄せられたこと…そして、闘技場の爆発はアレンがやったということを。


最後の部分を聞いたヨーグは目が点になった。


「は?…あのクソガキが、あの爆発を起こしたのか…?……。」


黙り込むヨーグ。

何も言わなくなったヨーグにリリアが心配そうに声を掛ける。


「えーと…ヨーグさん。そんなに考え込まないでください…」


「そうよ。アレンは強くなったのよ。それだけでいいじゃない、」


ヨーグを無理やり納得させようとする二人。


「……なぁ、もしかしてだぞ…もしかして、アレンは勇者、なのか?」


その言葉を聞いて、クローディアとリリアは黙り込む。

それもそうだ。クローディアはアレンから事情を聞いているが、リリアは事情をしらない。ましてや記憶喪失になっていると思っているのだ。

そんな中、クローディアが声を上げる。


「…そんなこと、どうでもいいわ。私たちには。」


「どうでもいいって…おいおい、嬢ちゃん。勇者パーティーの一員って箔は誰もが欲しがるもんだぞ?」


そう、この世界では勇者のパーティーの一員というだけで、各国のギルドから優遇してもらえるのだ。

だが、リリアはヨーグに告げる。穏やかな顔をしながら。


「それでも、私たちにとってはどうでもいいことなんです。ヨーグさん。なぜなら、私たち…アレンさんと結婚しましたから!」


瞬間、ヨーグの周りの時間が凍結した。


「………たち…?」


やっと口を動かしたヨーグはそれだけ言葉にする。


「そうよ。私も結婚したの。」


それが耳に届いた瞬間、ヨーグが叫ぶ。


「あンのクソガキぃいいいい!!あれほど手を出したら殺すと言っておいたじゃねぇか!!おい、嬢ちゃん…俺はあいつを殺すぞ!!二児の父親舐めんな!!あいつはどこにいるぅぅうう!」


「ヨーグさん落ち着いて!!クローディアも笑ってないでヨーグさんを止めてくださいぃ!!」


必死でリリアがヨーグを止める。

クローディアがそれを見て爆笑するという構図がしばらく続いた…。




「はぁはぁ…なんだ…結婚は嬢ちゃんたちの方が申し込んだのか…」


「…ふぅ…やっと理解してくれましたか…」


リリアがおとなしくなったヨーグの目の前でため息をつく。

息を切らしたヨーグは、頭をかきながら二人に尋ねる。


「後悔は、してねぇんだな?」


その言葉に、二人は同時に返事をする。


『当たり前よ(です)。』


綺麗に二人の声がそろったとき、二人の目の前にログ画面が現れる。


ログ


ー夫婦関係成立から一定時間が経過したため、クローディア、リリア、両名の不死因子が覚醒ー


ー夫婦関係構築のため、アレン、クローディア、リリアで命数を共有しますー


ー残存命数 3-


ーただし、アレンが不死化不可のため、伴侶であるあなたも不死化不可ですー




「「え?」」


そのログを見て、首をかしげる二人。

ヨーグからは何も見えてないため、不思議そうな顔をしていた。


だが、次の瞬間、すべてを割るような音がした。






「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」






「なんなの!?」


クローディアが耳をふさぎながら叫ぶ。


「わかりません!!」


リリアも同じ様に耳をふさいでいた。


「落ち着け!!すぐに冒険者ギルドが確認して、俺たちに緊急依頼を出すだろう…それまで待つんだ!!」



そして、冒険者ギルド内は静まり返る。

冒険者ギルド内に、緊急を知らせる鐘がなった。

続いて、老齢の男の声が響く。


『ただ今、北の平原に危険度SSSSランクの魔物が現れた!!緊急依頼を発令する!冒険者各位に拒否権はない!!今すぐ姿を確認、コールが使えるものは冒険者ギルドへ逐一動向を報告せよ!』


その声と共に冒険者ギルドの職員たちは入口にて赤い依頼書を配り始める。


「ついてねぇな…!行くぞ嬢ちゃんたち!」


「え!?どこに行くっていうんですか!?」


驚きの声を上げるリリア。


「聞いただろ…?俺たちに拒否権はねぇんだ!緊急依頼なんてここ数年発令されなかったが…町から近いことが災いしたな…いいか、二人とも、お前らも冒険者なんだ…この依頼を受けちまった以上、逃げることは許されない…。死ぬか、奴が逃亡するか、討伐するまで依頼は続く。」


「…あーもう!!行けばいいんでしょう!?…アレン…」


クローディアはぐずりながら立ち上がる。


「早く行きましょう!クローディア!終わらせてアレンといちゃいちゃするんでしょう?」


その言葉に噴き出したクローディアは覚悟を決める。


「…いいわ…どんな相手でも、私たちを敵に回したことを後悔させてやるんだから…!」


「よし、じゃあ行くぞ!!」


こうして、急遽パーティを組んだ3人は駆け足で北の平原へと向かう。

ほかの冒険者たちは手柄をわれさきにと争うように意気込んでいた。



「もう少しで平原に出るぞっ!」


途中で騎士団とも合流する。

その数は数千と言ったところか。

騎士団にも依頼が下ったらしい。



そして、北の平原に出たとき、彼らは驚愕する。



「うそ、だろ?」



その、あまりの体躯の大きさに。

遠目に見ても、周りの山々おも上回る大きさの、岩でも鉄でもない材質でできた巨人に、彼らはただ、恐怖するしかなかった。


そう、巨大なゴーレムのような黒いツヤのあるボディをした魔物が、そこにいた。



「こいつぁ…ロックタイタンか!?」


ヨーグが叫ぶと、周りの冒険者たちが叫ぶ。


「なんでこんなところにロックタイタンがいるんだ!?あいつは百年前に先代の勇者王が倒したはずだろ!?」


「あれはロックタイタンじゃない!!映像で見たロックタイタンはあんなデカくなかった!!」



ー亜種


という言葉が冒険者の口をつく。


ロックタイタンとは、百年前、突如として現れ、都市を幾つも壊滅させた恐ろしい魔物だ。その時は、先代の勇者王が周りの英雄たちに呼びかけ、やっとの思いで倒した魔物…。


だが、目の前の巨人は正確にはロックタイタンではない。


その事実を知るのはリリアと、クローディアの両名だけだった。

彼女らの目の前にログが現れる。





ログ





ー『源神ガイア』の降臨を確認ー







そう…紛う事無き、≪神≫が降臨したのだ。



瞬間、ガイアの体が神々しい光を帯び始め、何重にも連なった光の環が背中に現れた。


その禍々しいボディに似つかぬ光の環は人々の恐怖をあおるには十分だった…。


そして、金色の光が、炸裂した―――――

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