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第4話 黒い炎

アレンの一番長い日中編Ⅰ の不死族アレンの能力を変更しました。


勇者が数十万のステータスなので、それ位の数字にしました。


「エルウゥゥウ!生きてたのか!!」


「ちょ、離れてくださいですの!お父様!」


号泣しながら、エルをしっかりと抱きしめる父親と思しきモノ。


(こんなに泣くなんて…やはりわたくし、危機管理ができていませんの…)


ひとしきり泣いた後、エルの父親…ガイゼルは周りを見る。

そして、アレン、クローディア、リリア、リリアの胸を見て


「エル。この人たちが助けてくれたのかい?」


視線はそのままに、エルに問いかける父親。


「そうですの。でも、その前にそのリリアさんに向けている失礼な目をえぐって差し上げますの♪」


笑顔で言うエル。

アレンとエルの父親がひっ!と息をのむ


「アレン。後でおしおきよ。」


なぜかクローディアに睨まれているアレン。

アレンはびくびくしている。


(なんでアレンさんまで怒られているんですの…?)


不思議に思いながらも、父親に言うエル。


「こちらの方々がわたくしを助けてくださったんですの」


「俺はアレンと言います。この3人で冒険者をやっています。」


「私は、クローディアよ。」


「私はリリアと申します。えっと…ガイゼル様…ですよね?」


自己紹介を終え、エルの父親に名前を聞くリリア。


「ああ、私がガイゼル・フロウライトだ。この度は娘が世話になりました…。長旅でお疲れでしょう。ぜひ、我が家へお越しください。」


さきほどの情けない印象がなかったことになるほど丁寧な対応に、アレンたちはびっくりしていた。


(いつもこうなら…かっこいいんですの…もったないですの)



———————————


ガイゼル氏がエルを見つけたのは偶然だった。

エルが姿を消したと報告を受けてから、ガイゼルは憤慨した。

メイドがついていながら、何たるざまだと。

誘拐か、家出か…最悪奴隷にされているかもしれないと、ガイゼルはエルが不在の間なにも手につかなかったという。


エルがいなくなって二日。


たまたま所用の帰りに過ぎ行く馬車の窓を見たら、笑顔で話をしているエルを見つけたとのこと。


「へぇ…じゃあすごい偶然だったんですね…」


アレンが関心したように言う。


「ああ…こうしてまた娘に会えるとは…神の導きに感謝だ。そして、アレン君たちにも最大限の感謝を…。本当にありがとう……。」


「本当にアレンさんたちにはお世話になりましたの…。わたくしからもお礼を…本当に、ありがとうございました…ですの。」


豪華な夕食が終わり、アレン達はフロウライトの親子からお礼をされていた。


「いえ…俺が助けたくて、助けただけです。そんなに気にしないでください。」


アレンがなぜか気まずそうにそう言った。


「いえ…大したおもてなしもできませんが…今夜はゆっくりとお休みください…。ほら、お前たち、お客様をお風呂にご案内するのだ。」


そういうと、クローディアとリリアが先にメイドたちと風呂に向かった。


「セルリア。お前がアレンさんの担当をしなさい。」


ガイゼルがメイドを呼びつける。セルリアという一番年若く、見目麗しい少女がアレンの前に立ち、優雅に一礼する。


「セルリアでございます。アレン様。今日一日、あなたのお世話をさせていただきますね。」


「あ…ありがとう…」


真っ赤になるアレン。

なぜかそのメイドは優雅さの中にとてつもなく妖艶さを感じさせる。

メイド服越しにでもわかるそのスタイルの良さ…主にアレンの好みだが。

ようするに、ロリ巨乳だったのだ。


(お父様…わざとセルリアを指名したのですの?……殿方はそういうのが好きですからねぇ…)


そう、セルリアと呼ばれたメイドは、主に主人の夜の世話をするメイドだ…。愛玩奴隷というべきか。

エルがさらわれる前に、ガイゼルが買ってきたのだ。ガイゼルの夜の相手用ではなく、お客様の相手をするメイドだ。


このガイゼル氏、わざわざパーティーの女性と男性を分けて、女性を先に案内し、男性にメイドをあてがったのである。…できる男である。


(はぁ…まぁ、この世は一夫多妻が世の常とはいえ…こうして浮気の現場を見るのは少々クるものがありますの。)


「アレン君。その女性は君の好きにしてもいいぞ?持っていくもよし、一夜限りの関係にするもよし…」


「へ!?お、おれは別にそんな!?」


「はっはっは!今のは失言だ!アレン君。それと、これを受け取ってくれ。君と、クローディアさんと、リリアさんの分だ。」


ガイゼルが4本の短剣を出す。どれも意匠に凝ったデザインだ。宝石が散りばめられ、黒い鞘に収まっている。


「こんな高価なものを!?俺には受け取れません!!」


「まぁそういうな。大人からのささやかなお礼だ。正直に受け取っておきなさい。それが、礼儀だぞ?アレン君?」


でも…と受け取るのを渋るアレン。


「それはドワーフに作らせた護身用の短剣だ。付呪にも最適だろう…売り飛ばしてもいい。君たちに、受け取って欲しいのだ。」


それを聞いたアレンは顔を上げ


「そこまで言われたら受け取らないわけにはいきません。私が受け取らせていただきます。」


うやうやしく受け取るアレン。


「では、ゆっくりと休んでくれ…セルリア。アレン君を満足させてあげるのだぞ?」


「はい、もちろんです。ガイゼル様」


そして、アレンとセルリアが一緒に風呂場へ向かう。


すれ違う時にエルは聞いた。小声だったが、エルには確かに聞こえたのだ。


「あの、さ…俺、一人で風呂に入るし、一人で寝られるから、着替えとか、タオルとかの用意だけしてもらっても、いいかな…?…黒猫さんは、鼻が利くからね…」


「ふふ…アレン様は、その、『黒猫』様がお好きなんですね…?いいですよ?わかりました。私は適度にお世話させていただきます……。」


エルは衝撃を覚えた。

セルリアのような美女を前にして、アレンはこういったのだ。

夜は一人でいいと。相手はしないでもいい、と。


(というか…アレンさんとクローディアさんはどういう関係ですの…?)


幸運なことに、最後の方はエルには聞こえていなかったようだが。


そして、アレンは貞操を守り切ったとだけ言っておこう。


相変わらずの、童貞野郎である。



———————―


ガイゼルの館はエルの館とは離れている。

商業都市の上級区のはずれ…後ろに森と湖が見えるところに、ガイゼルの館は立っていた


深夜、エルは近くにある湖と森を見ながら思う。

月が湖に映っていて美しい。



(いろいろありましたけれど、大変な一日でしたの。)



エルは思う。

何故自分がさらわれたのか。

そして2日も猶予があったのにもかかわらず、ガイゼルには攫ったものから何も連絡が行っていないという。

ガイゼルにはヴァリオン家の騎士にさらわれたと言った。

だが、ガイゼルは悔しそうな顔をしながら言うのだ。


「証拠がないのだ…正面切ってお前がゲイルにさらわれたといっても証拠がない。その騎士どもを捕まえられれば良かったのだが…後で捕まえても、シラを切られたらそれでおしまいだ…」


そう、証拠がないのだ。もしかするとヴァリオン家を邪魔に思うものが、騎士を襲い、その甲冑を奪って成りすましていたとしたら…?そう考えるとなんとも言えないエルだった。


(考えすぎて、頭がいたくなってきましたの…もう寝ますの…)


振り返り、窓を開けたまま寝床へ向かうエル。


だが、急に後ろに気配を感じ、振り返えろうとしたその瞬間


「なんですっ…ぐむっむぅぅ!!」


急に首を男の腕がロックしてきた。

すかさず振りほどこうともがくが、離れない。



ーズバン!!



何かが切断される音がすると、その手が離れた。鮮血と黒い炎とともに。

急に解放され、ベッド側に倒れるエル。

血がエルの顔に張り付いていた。

そして、爆発的な魔力の高まりを感じる。






(な、な、なんですのこの魔力っ…は!?勇者や聖女でもこんな魔力量は…ありませんの…!?)







がくがく震える体を無理やりひねらせ、襲撃者と、血の正体を目にするエル。




そこには、4人の黒装束の男が鮮血を滴らせ床に伏せっていた。





そしてその奥のテラスには、禍々しく露出の激しい鎧を着こみ、手には黒い炎を纏った番の二振りの剣、そして濡れたカラスの羽のような艶のある長い黒髪をした『女性』が、月に照らされ、立っていた。








「クックック!!ハッハッハッハッハ!!やはり、闘いとは楽しいものよ!!」







狂ったように笑う女性。その女性はとても美しく、とても鋭く、どこか世界の破滅を思い起こさせるような風貌だった…。






「だ、だれ…なんですの…?」







「む…?誰だ?この我が楽しんでいるというのに、水を差す無粋な輩は…?」






女性はようやくエルの存在に気が付いたようだ。

エルはその視線を一身に浴びる。

すると、得体のしれぬ恐怖が湧き上がり、体が勝手に震え、脳が警鐘をならす。






ー『逃げろ、早く逃げろ』ーと。








エルを見て、一拍おいて、その女性は嗤う。どこまでも、破滅的に、凶暴に、嗤う











そして、大声で、名乗りを上げた。










震えているようだな?脆い人族よ…?
























我は、すべてを破滅させ、すべてを終わらせる者…






















『黒炎竜』…










アジ・ダハーカだ!!!!!







と。

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